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いよいよ40周年…夕刊フジ創刊の69年って?

東大安田講堂の攻防戦。講堂前に炎が上がる=69年1月(クリックで拡大)
東大安田講堂の攻防戦。講堂前に炎が上がる=69年1月(クリックで拡大)
 夕刊フジは1969(昭和44)年2月25日に創刊し、2009年に40周年を迎える。今月から本紙では、40周年記念の大型企画をスタートさせるが、本日は夕刊フジと同じ69年生まれの記者が大先輩に聞いた、創刊当時の世相や創刊秘話をご紹介する。

 日本のGNP(国民総生産)が前年に世界2位となり、東名高速道路が全面開通、日本人はエコノミックアニマルと呼ばれ、全共闘の学生がゲバ棒を振り回す。海の向こうではアポロ11号が月面着陸し、ベトナム戦争は泥沼化…。こんな騒然とした雰囲気の中、夕刊フジは誕生した。

 同じ年に生まれた記者は、当然ながら夕刊フジのことはまったく知らなかったが、物心ついたころに流れていた「オレンジ色のニクイ奴」のテレビCMだけは鮮明に覚えている。

 当時の雰囲気を紙面から得ようと、社内の資料室でオレンジ色に変色した創刊当時のバックナンバーをめくってみた。創刊号の1面を飾った記事は石原慎太郎参院議員(当時)の「新党構想」。この1面は夕刊フジに入ってから何度となく見る機会があり、よく知っている。

 だが、2号目以降の記事はこれまで見たことがなく、いずれも新鮮だ。スポーツ面では星野仙一氏が中日の新人投手として生意気ぶりを発揮、インタビュー面では、丸山明宏(美輪明宏)さんが「男同士が愛し合ってどこがいけないの?」と挑発し、秦野章氏が現職の警視総監として登場、三億円事件の犯人逮捕を誓っている。

通算400勝を達成し、表彰される巨人の金田正一投手=69年10月
通算400勝を達成し、表彰される巨人の金田正一投手=69年10月
 ソニーの能力主義がテーマの企業コラム、美空ひばりや山本富士子らの武勇伝を集めた「女優ケンカ列伝」など、いま載せても通用しそうな記事も。38年前の熱気が、1部10円、16ページの紙面の端々から伝わってくる。

★元編集局長・馬見塚達雄氏に聞く

 夕刊フジはどのようにしてできたのか? 創刊当時を知る元編集局長、馬見塚達雄氏(73)に聞いた。馬見塚氏は創刊前年の準備段階から87年まで約20年にわたり夕刊フジに携わった。当時を知る現編集局長にそれとなく聞くと「切れ味鋭い文章を書く人」。そして「怖い人だった」とも。恐る恐るインタビューに臨んだ。

 −−夕刊フジのスタイルはどうやって作ったものですか?

 「手本にするものがなかったので試行錯誤しましたが、僕が参考にしたのはオーストラリアのタブロイド紙。産経新聞の社会部にいたころ、海上自衛隊の実習生の遠洋航海に同行してシドニーに寄港したのですが、現地のタブロイド紙が1面を艦隊の写真で埋め、大見出しで『また日本が攻めてきた』と載せたんです。なるほど、こんな記事の切り方もあるのか、と感心しましたね」

 −−題字がオレンジ色になったのは?

 「実は最初、タイトルを『東京ニュース』にするという案があったのですが、紆余曲折の末、『夕刊フジ』に決まりました。フジなので藤色にするのかなと考えたけど、なんだか弱々しい。それでオレンジにしたのです。人々の心を沸き立たせるオレンジ色で正解でしたね」

 −−どんな新聞を創ろうと思っていましたか?

 「一般紙は“上半身”のことだけ書いていて、どうも物足りない。“下半身”もそろって初めて面白いものができるんじゃないか、と考えていました。これは(色恋やギャンブルなど)やわらかい話のことだけではなく、一般紙が報じないような視点で見るということです。たとえば、アポロ11号が月面着陸したとき、みんなアームストロング船長の話ばかり書いていた。そのとき僕は、船に残って月面に降りられなかった操縦士は一体どんな人なんだろうと思って調べたんですよ」

 当時、馬見塚氏は34歳で、取材記者とデスク、競馬記者の三足のワラジを履いていた。一線のメンバーも20代後半から30代。編集局にはエネルギーがあふれていた。

 「創刊前年の暮れに三億円事件が起きるなど物情騒然の時代で、学園紛争も盛り上がっていた。われわれも若かったし、世の中全体のテンションが上がっていた。時代にも恵まれていましたね」

 −−創刊当時の思い出に残るニュースは?

 「プロ野球の黒い霧事件や、『ハイジャック』という言葉を日本で最初に使った、よど号の乗っ取り事件などですね」

 −−「ぴいぷる」などのインタビュー記事も、取材相手に切り込む斬新なスタイルでした

 「大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さん、新珠三千代さんらから文句が来たことがありました。それまで厳しい質問を受けていなかった人に、ズバズバ聞いて書いていましたから。ただ、政治家は人気商売のせいか、おちょくっても文句がくることはなかったですね」

 −−夕刊フジが果たしてきた役割は?

 「われわれが夕刊フジを創刊しなかったとしても、たぶん夕刊フジ的なものはどこかで生まれたでしょう。政治の話でも、やわらかい話でも、そのとき一番関心の高いニュースのインサイドに切り込むという手法はその後、テレビのワイドショーにも引き継がれました」

 −−世相、とくにサラリーマンを取り巻く環境も変わりました

 「創刊当時は終身雇用が定着し、会社で頑張れば出世はしなくても給料は上がる時代でした。いまは不安定な時代ですが、それだけにみんな情報や生きる道筋を求めているとも言えます。そんな時代に、人の生き方をホンネで報じる夕刊フジの役割はますます大事になるでしょうね」

 まみづか・たつお 1934年、大分県生まれ。早大文学部卒。56年、産経新聞入社。68年、夕刊フジ創刊の特別準備本部に出向。69年の創刊から87年まで夕刊フジで報道部長や編集局長を歴任。その後、産経新聞論説委員。現在はフリー。著書に『「夕刊フジ」の挑戦−本音ジャーナリズムの誕生』(阪急コミュニケーションズ刊)、著・編書に『証言・長良川河口堰』(産経新聞社刊)。

★1969年はこんな年だった

 【社会・事件】

 ・東大安田講堂で機動隊と学生が攻防戦、入試が中止に

 ・東京・八重洲地下街がオープン

 ・連続射殺事件で永山則夫容疑者を逮捕

 ・東名高速道路が全面開通

 【政治・経済】

 ・日本の国民総生産(GNP)が西ドイツを抜き世界2位になったと発表

 ・八幡製鉄と富士製鉄が合併に調印、新日本製鉄誕生へ

 ・住友銀行が日本初の現金自動支払機を設置する

 ・佐藤栄作首相とニクソン米大統領の共同声明で沖縄返還を表明

 【海外】

 ・ソ連が宇宙有人ドッキング

 ・米アポロ11号が月面着陸、アームストロング船長が月面に立つ

 ・ロックの祭典「ウッドストック・フェスティバル」開催

 【スポーツ】

 ・大相撲で横綱・大鵬の連勝が45で止まる

 ・高校野球決勝戦で三沢高と松山商が延長18回引き分け再試合

 ・プロ野球「黒い霧」事件

 ・金田正一投手が400勝を達成し引退

 【ヒット曲】

 ・「夜明けのスキャット」(由紀さおり)

 ・「ブルーライトヨコハマ」(いしだあゆみ)

 ・「長崎は今日も雨だった」(内山田洋とクール・ファイブ)

 ・「いいじゃないの幸せならば」(佐良直美)

 【テレビ・映画】

 ・「水戸黄門」(TBS系)放送開始

 ・「8時だョ!全員集合」(TBS系)放送開始

 ・「クイズタイムショック」(NET系)放送開始

 ・「巨泉・前武のゲバゲバ90分!!」(NTV系)放送開始

 ・「サインはV」(TBS系)放送開始

 ・「プレイガール」(東京12チャンネル)放送開始

 ・「男はつらいよ」(松竹映画)第1作公開

 【ベストセラー】

 ・「天と地と」(海音寺潮五郎)

 ・「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫)

 ・「ドラえもん」(藤子不二雄)連載開始

 【流行語】

 エコノミックアニマル、Oh!モーレツ!、あっと驚くタメゴロー、やったぜベイビー

ZAKZAK 2007/11/05

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