小泉農水相で米価は一時下がるだけ

小泉進次郎農林水産相は就任早速、備蓄米について、「スピード感を持って早く届けられるところには届ける。6月初旬にも5キロあたり2000円台で店頭に並ぶように取り組む」考えを示した。

これを受けて、共同通信社が24、25両日に実施した全国緊急電話世論調査で、小泉農水相の就任でコメ価格は「下がると思う」が59・8%、「下がらないと思う」は35・1%。いかに世間の期待感が高いか如実に示している。おかげで気息奄々だった石破内閣の支持率は前週の調査から4・3ポイント増え31・7%になった。(不支持率は52・6%とあいかわらず高いものの)。

おかげで参院選の争点だった消費税減税など吹き飛んで米価が参院選のトップに躍り出た。米価で成果が出れば薄氷の石破内閣の延命と次期首相候補筆頭に小泉進次郎が踊り出るという予想外の展開が見込めることになる。

そこでその成否の程を占うと――

小泉「米担当大臣」(自称)は就任早々なかなか勘所を抑えた方針を打ち出してきた。就任翌日には、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長を訪ね、随意契約に参加してネット販売できないかを打診、その翌日には北海道に飛んで
道内食品スーパー大手「アークス」(札幌市)の横山清会長に会って随意契約参加を呼び掛けている。両社とも快諾している。

このブログでも再三書いているが「米価の三悪人」は農水省とJA農協、自民党農水族である。中でも群を抜いて悪いのは農協だ。これまで3回の備蓄米放出の94%を落札、それも1年後同価格での買い戻し条件で手中にたのに市場に流したのはわずか10%ほど。備蓄米の倉庫が国から農協に移っただけで市場には出回らない。これでは米価など下がるわけがないのだが、農水省は「卸業者のところで滞留している」ととぼけ、オツムが弱い農水族出の江藤農水相は役人に言われるまま「下がるまで備蓄米放出を続ける」と言い続けてきた。
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ここまで書いたところで、26日、小泉進次郎農林水産相は政府備蓄米放出の新方式を発表した。
省内で集中して米価の対策を担当する専門チームを発足させたうえ、競争入札を取りやめ、随意契約で国が大手スーパーなどの小売業者を任意に選んで直接売り渡す。放出量は30万トンで、政府が提示した玄米ベースで60キロあたり約1万円で買い受け、8月末までに販売することを条件とする。6月初旬にも店頭に5キロ当たり2000円で並ぶことを見込んでいる。

放出する備蓄米は令和4年産が20万トンで売り渡し価格は玄米ベースで60キロ1万1010円と3年産は10万トンで60キロ1万0080円としている。随意契約に参加する小売業者は年間1万トンの取り扱い実績のある大手で、販売データの提供を求める。想定する5キロ2000円の店頭価格は、これまでの取引実績から試算したもので、小売業者には義務付けも、要請もしない。備蓄米だけで商品化した場合を想定した価格で、小売業者は在庫にある銘柄米とブレンドして販売することもできるが、その場合は、値下げ効果は薄まることになる。

これまでは全国農業協同組合連合会(JA全農)などに売り渡していたが、流通の拡大が遅れており、対象を消費者に近い事業者に切り替える。地方に輸送する際の費用を国が負担し、インターネット販売も検討する。売り渡しを受けたコメと同量を買い戻す条件も課さない。
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この「売り渡しを受けたコメと同量を買い戻す条件を課さない」と言うくだりが、実は米価が下がらない大きな要因でもあった。

この馬鹿らしい条件は米価を下げたくない点で一致する農水省とJA農協による「悪の合作」で、1年後に同量を同価格で買い戻すというものである。

米価の上昇によって、農家は25年産の主食用米の作付けを増加させることが予想される。しかし、7月まで売り渡す予定の備蓄米61万トンと同量を市場から買い上げ隔離すれば、1年後も米価は下がらない。そもそも、放出して買い戻すのであれば、市場への供給量は増えない。備蓄米の放出には、米価を下げないという農水省の意図が隠されているのだ。

卸売業者がスーパーや小売店に販売するコメは主としてJA農協から仕入れている。その時の価格が「相対価格」と言われるもので、現在60キログラム当たり2万6000円まで高騰している。ここに手を入れない限りコメの価格は下がらない仕組みがあるのだ。

小泉「米担当大臣」の5キロ2000円は実現するであろう。しかしそれは一時のことにすぎない可能性が大なのである。バッタ屋の「大安売り」と同じで、期間中は下がってもあとは元の高値に戻る公算が大きい。それを防ぐにはJA農協の権限を叩き潰すしかない。

キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「政府備蓄米の売り先はJA農協だ。JA農協が卸売業者に販売する相対価格を決めている。この相対価格が下がらない限り、小売価格は下がらない」という。

相対価格が下がらなければ、小売価格も下がらない。相対価格を操作できるのはJA農協である。その市場シェアは減少したとはいえ5割を占める。この独占事業体は、在庫量を調整(増や)して市場への流通量をコントロールする(減少させる)ことで、相対価格を高く維持できる。JA農協を潰さなければ米価は安くならないと書いたが、実は農協はすでに破綻している。JA秋田の不祥事に見るように全国の農協の6割は赤字だ。

農協は肥料を農家に安く売り、一手に集荷することで儲けてきた。農家の預金をほぼすべてを農林中金に集めることで潤ってきた。しかし放漫経営で例えば肥料などはホームセンターの方が安いのが通常である。ブログ子が夏場を過ごしている八ケ岳では農家が小型トラックで乗り付けてトラック一杯の肥料を積んで帰るのをしばしば目にする。なぜこんなことになるかと言えば、農協が取るマージンが25%とめちゃ高いからだ。農林中金も預かった預金を怪しげなところに投資して大やけどし倒産寸前のところもある(秋田)くらいだ。

卑近な例をもう一つ。ブログ子がいる八ケ岳にJA野辺山がある。高原野菜の本場だ。ここに農機具売り場と野菜売り場があってよく買いに行った。立ち寄ったらしい八千草薫のサインが掲げられていた。ところがここにロープを買いにいたらめちゃ太いのと中くらいのと小のたった3種のみ。ネジくぎは数種類、買おうとした熊手は指が一本掛けていた。高原野菜の本場と言うのにレタスとキャベツは古びてしなびていた。はたしてみな20キロほど先のカインズに行くようになって、2,3年前に農協の野菜売り場も農機具売り場も姿を消した。

農協はもはや物の役に立つものではなくなっている。害悪だけ流す存在に落ちぶれている。農水省はこんなものに助けの手を出す必要はない。自民党の農水族は票と金を失うから数十人が農協に追随しているが、こんな議員は国のためにならない。さっさと消すことだ。それが世の為、人の為、農家の為である。

現に農協の集票力は弱まっていて政治力をしぼんでいる。農水省は自民農林族の後押しを受けづらくなり、財務当局に予算を要求する力が弱まっている。同省の力が弱まれば、官僚の天下り先も選択肢が少なくなるという負の連鎖が起きている。

減反と言う国力を削ぐ馬鹿なことをやめさせ、農協と言う「悪」を潰し、農水族と言う愚かな集団を抹殺する機会でもある。そこまで踏み込まない限り「小泉米大臣」の改革は大したものにはならないのだ。


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