イスラム過激派組織「イスラム国」が、20日インターネット上で公開したビデオ映像で、人質にとった日本人男性2人について、日本政府に計2億ドル(約236億円)の身代金を要求し、72時間以内に支払わなければ2人を殺害すると警告した。2人は、昨年8月にシリアでイスラム国に拘束された湯川遥菜(42)(千葉市花見川区)と、ジャーナリストの後藤健二さん(47)(仙台市出身)とみられる。
日本の安全保障上衝撃的な事件だが、ブログ子は瞬間、安倍政権下でまだよかった。これがルーピー・鳩山由紀夫やイラ管・管直人の民主党政権下だったらと思うとぞっとした。この種の事件の対応は日本はもともと下手である。戦後の平和と安寧にあぐらをかいていたためで、修羅場は回避するのが常だった。
代表的なのは1977年のダッカ日航機ハイジャック事件で、時の首相、福田赳夫は「人命は地球より重い」として犯人側の人質解放の条件を飲み、身代金600万ドル(当時のレートで16億円)の支払いおよび、超法規的措置として6人の刑事被告人や囚人の引き渡しを行った。その時釈放された城崎勉容疑者がアメリカでの服役を終えて今月日本側に引き渡される。実に38年後に及んでもなお悪影響を残したのだ。
今回安倍首相は滞在先のイスラエルで「テロには断じて屈しない」と語り、弱腰の交渉はしないことを断言している。とはいっても、裏交渉はつきもので、英米はビタ一文払わないがヨーロッパ諸国は公表しないもののいくらか払って釈放されたケースもある。どちらを取ったとしても日本政府を責めることはできないが、ここは正念場であることは変わらない。
後藤健二さん(映像左側の男性)の妻の携帯電話に昨年12月、身代金を要求するメールがあったことが分かった。このとき殺害警告はなく要求額は10億円とみられる。つまり10億円の要求だったものが、安倍首相の中東訪問で2億ドルの後方支援表明にタイミングを合わせて2億ドルに一気に引き上げたとみられる。だとすると金で解決の方策もありうることになる。
それにしても今回の「被害者」には少々、首をかしげる点が多い。湯川遥菜(はるな)さんは「民間軍事会社」と称する「ピーエムシー(PMC)」の最高経営責任者。会社のホームページによると、業務内容は「国際民間軍事業、国外警護、紛争地域等での護衛」などとされている。家族によると、千葉県内の高校卒業後、実家を出た。その後結婚したが妻を亡くし、一人暮らしをしていたという。
ビデオを見ると「今回派私の戦闘場面もたくさん撮影したい」と述べている。手には自動小銃カラシニコフを持っていて手慣れた感じで扱っている。日本にはこんな訓練場所などないから海外で習熟したのだろう。立ち上げた会社の業務内容と言い、どうも「軍事オタク」のようである。「今回の旅行が一番危険かもしれない」とも語っているから、わかっていてシリアに入った。まだ早いが、自己責任を問われる行為である。
ブログ子は「ある軍事オタク」を知っている。高卒後アメリカに渡り海兵隊に入隊いくつかの戦場を渉り歩いて中尉にまで昇進して日本の「プレイボーイ」誌などにもてはやされていた人物である。日本のマニアに頼まれたようだが小銃を部品で輸入しようとしたのを罪に問われて消息を絶った。湯川さんの履歴をテレビの音声で聞いていて、この人とそっくりなのでもしや、と思ったのだが、知っている家内によると、「今はシンガポールにいる」という。
ジャーナリストの後藤健二さんは拘束された湯川さんと知り合いで、助けに行くと行ってやはりシリア入りしている。ブログにルポを書いていてその内容をみたが「私の後ろに見えるのがイスラム国の戦車です」というものだった。そんなもの撮影するに大いなる危険を犯していったい何になるのだろうか疑問に思った。イスラム国の戦車など米国の無人機が撮ったものをAPで見たって同じだろうに。レポートの内容をみると、とても命を張るような内容ではないのが気にかかる。
以前書いたことだが、こうしたフリージャーナリストが増えたのには日本の新聞、テレビのメディア側の腰が引けていることから始まっている。ジャーナリスト(新聞記者)は本能として紛争の最前線に飛び込む。ところが自社からは犠牲者を出したくない。そこで自社の記者には早々と退避勧告を出し、あとはフリーと称する人から金を払って映像なり記事を買う。ベトナム戦争では安全な米国側の後方でアメリカ式懇切丁寧なブリーフィングを受けて記事を書いていたものだが、カンボジアはじめ各地で犠牲者を出すようになった。シリア、イラクなど行くこと自体が死を覚悟せねばならなくなった。2,012年8月21日には独立系通信社のジャーナリスト山本美香さん(45)がシリアのアレッポで銃撃されて死亡するなど危険度は高まるばかりである。