ゼレンスキーの服装をあざ笑った記者は「ハイヒールを履いたトランプ」議員のボーイフレンドだった

国とウクライナ大統領間の首脳会談で、ウクライナのゼレンスキー大統領に「なぜスーツを着ないのか」と指摘した記者が、「ハイヒールを履いたトランプ」と呼ばれるマージョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員のボーイフレンドだったことが分かった。

前項で両首脳が「噴火」するきっかけを作ったのがバンス副大統領であることは書いた。しかしテレビ中継でも流れたが、もう一人火付け役がいた。「なぜスーツを着ていないのか。あなたはこの国の最高位級のオフィスにいて、スーツを着ることを拒んだ。スーツを持ってはいるのか」とからかうような口調で質問した男の声が聞こえた。

英国のテレグラフ紙はその該当記者がコチコチのトランプ一辺倒のラジオ局「リアル・アメリカズ・ボイス」のブライアン・グレン(56)だったと報じた。

「なぜスーツを着てこない」のグレン記者と「ハイヒールを履いたトランプ」議員

2020年に設立された「リアル・アメリカズ・ボイス」は、トランプ1期当時から強硬な親トランプの保守メディアだが、トランプ政権2期目で、ニューメディアやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のインフルエンサーなどのホワイトハウスへの出入りを許可したことから記者会見に出席できるようになった。

グレンは同チャンネルの代表的人物で、最近はトランプ大統領が最も好きな記者の一人に挙げられる。当日も最前列で青いスーツに金色のネクタイをして待ち構えていて上述の失礼な質問を投げかけた。

ゼレンスキー大統領は、「この戦争が終わればスーツを着る。おそらくあなたと同等のものかより上等なもの、あるいはより安いものかもしれない」と答えた。

ゼレンスキーはウクライナ戦争勃発以来、一貫して暗いカーキ色の軍服スタイルの服装を着用していてどこの国に行ってもこのスタイルを通している。当たり前で、前線で自国の兵が多数死んでいるときに、あたかも社交のごとくスーツで行く方がおかしい。世界中が理解していることだ。それでも、この日はウクライナの象徴のトルィズーブ(三つ又の剣でウクライナの国章)が左胸にプリントされた黒い長袖シャツに黒いズボン、普段よりは多少格式ばった服装だった。

グレンはなおも、ゼレンスキー大統領の服装が「我が国と大統領だけでなく米国市民に対する内面の無礼さを示している」と詰問した。

トランプはホワイトハウスに到着したゼレンスキーに「今日は随分おしゃれをして来た(you're all dressed up)」と言ったが、これはトランプがすでに苛立っていた証拠だ。

グレンのガールフレンドでこれまた極端なトランプ信者で「ハイヒールを履いたトランプ」と呼ばれるマージョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員が、ボーイフレンドの質問に拍手を送った。 「ゼレンスキーが我が国の大統領に金を物乞いしに来る時さえスーツを着ないほど無礼だったと指摘したことが非常に誇らしい」と述べた。

トランプの最側近のイーロン・マスクもスーツではなくTシャツとMAGAの帽子姿でホワイトハウスの執務室に現われるが、二人とも、このような事実は目に入らぬようだ。

さらに言えば、チャーチル元首相は第2次世界大戦中、ワンピースの形をした「防空服」を主に着用し、1942年にルーズベルト元大統領に会うためにホワイトハウスを訪れた時も同じ服装をしていた。

ゼレンスキーはこうした「悪意ある」親トランプ派が待ち構える中、狼の檻の中に投げ込まれたのである。気の毒でならない。


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