除夜の鐘が騒音という心貧しい人たち

鎌倉・円覚寺の除夜の鐘

鎌倉・円覚寺の除夜の鐘

大晦日である。2,3年前から「紅白」を見なくなったので、その後番組「行く年くる年」で聞こえてくる各地の除夜の鐘の音がブログ子にとっては百八つの煩悩を払って新年を迎える唯一の行事になった。

ところがその「除夜の鐘」まで、騒音に聞こえる人たちがいるという。新聞記事によると、東京都小金井市の寺では、近隣住民から「除夜の鐘がうるさい」という苦情が寄せられ、26年には住民側が民事調停を申し立て、除夜の鐘を鳴らす際には住民側が指定する防音パネルを設置することや、除夜の鐘以外は鳴らさないことなどで合意したが、防音パネル作るにも費用がかかるので、一切鐘を鳴らさなくなった。

苦肉の策として、大みそかの昼間に鳴らす寺も出てきた。静岡県牧之原市にある大澤寺(だいたくじ)のサイトには「夜間衝く鐘の音に対する波津地区のどなたからのクレームの電話があったことから父の代で終了した除夜の鐘。それを昨年から時間を大幅に繰り上げて再開した」経緯がつづられている。

「うるさいバカヤロー! いつまで鳴らしているんだ」。十数年前から大みそかから元旦にかけて除夜の鐘を鳴らしていると、怒鳴り声をあげてすぐに切れる匿名電話が数件、毎年のようにかかってきていたという。「お叱りを受けるなら止める」。先代住職の決断で除夜の鐘は中止に。それからの大みそかは、いたずらでも鳴らされないようにと撞木はロープで鐘楼に縛りつけられてきた。

大澤寺の鐘は戦時中に供出したが、昭和30年に檀家と協力し苦労して再び鋳造したものだ。内側には寄進した檀家の名前がびっしりと刻まれている。現住職の今井一光さん(58)は、「先代の父が中止を決断したが、せっかくの鐘がもったいない。寄進していただいた方にも申し訳ない」、平成26年秋に檀家の世話人会に再開を提案した。

午後2時から「除夕の鐘」として復活、27年は檀家の婦人部らの協力で豚汁や焼きイモなどが振る舞われ、約130人の家族連れや高齢者らでにぎわった。「この年になって初めて鳴らした」と感激している高齢者もいたという。
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春には桜の花びらの絨毯を踏みしめて歩く。秋にはイチョウやプラタナスやケヤキの落ち葉を踏むと聞こえるかそけき音に季節の変わり目を知るのだが、これとてゴミに見える人たちがいる。ブログ子の近くでも、庭先に桜の大木を持つ人が、恐縮した素振りで花びらや落ち葉を掃き集めているのを見る。率先して「落ち葉もいいですね」と声をかけることにしている。

昔の日本人は格別に風情があったとまで言いたくないが、なにか心貧しい世相を感じる。長い人生をそんな乾いた性根で生きてどうなる。

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