朝日が「安倍首相の歴史に残る大失言」と喜ぶ「已む」

朝日新聞を購読しなくなって久しいので、この記事が朝日本紙に載ったのかどうかわからないが、系列のAERAの記事によるとこうだ。
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「退位礼正殿の儀」で「国民代表の辞」を読み上げる安倍晋三首相

それが起きたのは  4月30日の皇居での「退位礼正殿の儀」で、安倍晋三首相が読み上げた「国民代表の辞」のほぼ末尾だった。

原稿では 「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願って已(や)みません」とあるところを「願っていません」と読んだ。

動画で確認すると、安倍氏は懐から出した文書を読み上げたのだが、「あられますことを願って」まで進んだところで一瞬口ごもり、その後で「あらせられますことを願っていません」と発言していることがわかる。

これでは、国民の大多数の願いとは全く逆だ。安倍氏が手にした原稿では教養のある官僚が漢字で書いていたため、なんと読むかためらって、「願っていません」と言ってしまったのではないかとも思われる。

安倍氏は2017年1月24日、参議院本会議で蓮舫議員に対し「訂正でんでんという指摘は全く当たりません」と答弁した。これは「云々」(うんぬん)を、「伝々」と誤って覚えていたようだ。安倍氏は「願ってやまない」という言葉を知らないほど語彙が乏しいのか。今回の舞台は憲政史上初の儀式だ。その重要な場で国民を代表し、天皇、皇后両陛下に直接あいさつをするのに、下読みも十分にしなかったなら、怠慢の極み。皇室に対する敬意を欠いていると言われても仕方が無いだろう。

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何しろ、昭和天皇崩御では「死去」と見出しに取ろうとした新聞である。ふだんの皇室原稿にも敬語なしで記事を書いている朝日が「皇室に対する敬意を欠いていると言われても仕方が無いだろう」というのだから、こちらの方が驚いた。

確かに「巳、己、已」の三字は紛らわしい。「已己巳己」という言葉がある。「いこみき」と読み、互いに似ているものを例える場合に使われる。「あいつらは、どいつもこいつも已己巳己で区別がつかない」などという。

「巳」は、十二支のヘビにあたる文字で、元々は頭と体ができかけた胎児をあらわす文字である。

「已」は古文の文法の中に、すでにそうなっている状態を表わす活用として、已然形がある。この已と言う文字は元々曲がった木の農具の形から生まれた。

「己」は方向や暦を表わすときに使われる。「おのれ」とか「つちのと」と読む。己と言う文字は、十干十二支の十干の一つで、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、は訓読みにすると、きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと、となり、陰陽でいうと語尾の「え」が陽、「と」が陰である。語源は「え」は兄、「と」は弟である。「えと」の呼び名はここに由来する。元々は土器の模様からできた漢字で、己(つちのと)は 田畑の栄養素を含む柔らかい土の謂で「柔和」なことをいう。また西暦年の下一桁が9の年が「己の年」で今年2019年がそうである。

ブログ子は高校時代「巳(み)は上に、己(おのれ)己(つちのと)下につき、半ば開ければ已(すで)に已(や)む已(のみ)」と覚えた。以来数十年たつが己(おのれ)以外の二字は使ったことがない。知らなかったとしても大したことではないのである。

新聞社での同僚に「雅巳」という人物がいる。賀状書くたびに思い出すのだが、世界的な冒険家、植村直己(1941~1984年)は、「直己」と書いて「なおみ」と読む。「己」は音読だと「こ」「き」としか読めない。なぜ、「み」なのか。実は、両親が役場に届け出た名前は「直巳」。へび年生まれにちなんだ名付けだった。しかし大学生になった植村は「へび(巳)よりおのれ(己)が格好いい」と「直己」と“改名”した。読みは本来通り「み」とした。

AERAの記事はさらに続き、右翼団体「一水会」が6日ごろからインターネットで批判を始めるなど、言い間違いへの非難は徐々に広がっている、と煽り、さらに、1899年5月24日の読売新聞社説で「全知全能と称される露国皇帝」とあったのが、「無知無能と称される露国皇帝」と誤植された。活字を拾う工員が間違えたのだ。国際問題にもなりかねず、同紙は訂正号外を出し、ロシア公使館に釈明、陳謝して事なきを得たとか、一七世紀の「姦淫聖書」事件では、十戒の一つ「汝姦淫すべからず」の「not」が脱落し、「姦淫すべし」となっていたため出版元は300ポンド(現在の価値で1500万円に相当か)の罰金を科されたが支払えず、投獄され獄死したとか書き連ねている。

最後にこう叫ぶ。
戦前の日本では皇室に対する不敬罪があり、「天皇陛下」を「階下」と誤植して出版禁止の行政罰をうけた出版社もあった。新聞社は「天皇陛下」の4字を一つにした活字を作るなどして過失の防止に努めた。幸い、今の日本には不敬罪はないが、国民を代表しながら「未曽有」の失言をしたのはなぜなのか。安倍氏はそのいきさつを国民に釈明するべきだろう。(ジャーナリスト・田岡俊次)

アホか。いまどきの日本で「巳(み)は上に、己(おのれ)己(つちのと)下につき・・・」とおぼえている国民はどれほどいるか。「そのいきさつを国民に釈明するべきだろう」と大見得を切る前に、己の新聞がフェイクニュースばかり流していることへの釈明が先だろうが。

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