性的少数者(LGBT)への理解の増進に関する法案が今日16日成立した。普通、法案というものは利益を受ける当事者側が大喜びして、利益に無縁の側が不満もつものだが、今回は両者とも「反対」というのだからわかりづらい。野党の反対に加え、自民の山東昭子前参院議長、青山繁晴参院議員、和田政宗参院議員の3氏が採決時に退席した。
超党派議員連盟の会長代理として議論を主導してきた稲田朋美衆院議員
この法案は、自民、公明両党と、日本維新の会、国民民主党の4党の修正協議でまとまったものだ。拙速も拙速。むりやり(片方に言わせれば骨抜き)通したこの4党の責任は大きい。岸田首相は立憲民主が今日提出する不信任案を受けて解散するとみられていたが、急遽「今国会中の解散はない」と任期切れの10月まで引き延ばした。世論調査で出ている自民党が大幅に議席を減らすという予測におじけづいたのだろう。
LGBT当事者からも反対の声があがるややこしい次第になったのはなぜか。かいつまんで言うと、これまで国会には、3つのLGBT法案が出てきた。1つ目は、もともとの自民党案である「元祖LGBT理解増進法」。2つ目は、野党案である「LGBT平等法」(以前「LGBT差別解消法」と呼ばれていたもの)。3つ目は、与野党協議によって手直しされた今回成立した「修正LGBT理解増進法」。この3つ。
ゲイを公表している側からは、自民党案の元祖LGBT理解増進法については「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と規定していてよくできていたという評価だった。ところが、LGBT活動家が「理解増進は生ぬるい」と。「差別禁止でなければダメなのだ」と言いいだし、結果、「性同一性」の表現を、維新・国民案の「ジェンダーアイデンティティ」に改めた。
ブログ子が「気持ち悪い」と表現する一つ目の理由は、この外来語である。日本の法律に「ジェンダーアイデンティティ」なる外来語が組み込まれるのは初めてではなかろうか。排斥論者だはないが「性同一性」でなぜだめなのか与党に聞きたい。
ともかく、与野党協議によって「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という文言が入ることに よってどうなるか。上述のゲイを公表している人からはアメリカの水泳界の問題が提起されている。
「アメリカの水泳界には、トランス女性であるリア・トーマス選手がいますが、彼女はアメリカの大学の水泳選手権で金メダルを獲りまくっているのです。身長は190センチあり、身体はまったくの男性です。手術はしておらず、その上から女性用の水着を着ているのですね。そして女子更衣室でも男性器を隠さずに歩いているそうです。他の女子選手が『何とかして欲しい』とコーチに頼んだのですが、『我慢するしかない』と言われてしまった。裁判で訴えられたらコーチ側が負けてしまうからです」
水泳界ばかりでなく、インターハイ、国体、などあらゆる大会で問題が出てくることは容易に予想できる。現に、悪意を持った男性が「女性だ」と自称し、女子トイレなどを利用する事案は現実に起きている。こうした行為は現行法で禁じられているが、新法を盾に、現行の禁止規定を「不当な差別だ」と主張する口実に使われかねない。
公衆浴場や温泉地で、女性を自称して女風呂にカメラ片手に見た目「男」が堂々と入ってきてもどうしようもないのが目に見えている。
法案に、LGBTに関する教育を「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う」と記したことも問題だ。過激な主張を掲げる団体が学校に圧力をかけ、発育を無視した性教育を迫る事態が外国では起きているという。
「例えば学校の教育の現場で、まだ思春期にもなっていない子どもたちが、LGBTを理解させるという意味で、“おとぎ話の王子様は男性と結婚しました”というような教材を使っているという海外の報告もある」(自民党 西田昌司参院議員)
日本社会はもともとLGBTに鷹揚だった。本能寺の変で織田信長とともに死んだ森蘭丸など大名の寵愛を受けた小姓など数え上げればきりがない。古代ギリシャでは少年愛が当たり前だった。昔はともかくとして近くを見れば、現在、歌舞伎界を揺るがしている、両親が死んで本人は生き残った市川猿助(47)の服毒事件なども同性愛事件としてみればわかりやすい。
20年前ほどだが歌舞伎担当の同僚記者から聞いた話だが、凄まじい嫉妬の世界で女形(おやま)が恋敵に刃物を振るうなどしょっちゅうだという。この時の話題は女形という芸域がそうさせるのか、天性の性癖かということだったのだが、彼が亡くなったとき横浜の斎場には歌舞伎界のそうそうたる顔ぶれの花輪が10数個、新聞社や松竹の花輪を圧して並んでいた。そのとき誰が「たち」で誰が「ねこ」なのか名札を見ながら考えたものだ。
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(令和元年死去)による性加害問題も日々芸能面を賑わしている。黙殺してきたジャニーズ事務所とテレビ各局が指弾されているが、何をいまさらという思いだ。これまた20年以上前の話になるがブログ子など門外漢だったが彼の性癖は耳にしていた。
当時ブログ子はフジサンケイグループの新聞社側にいたのだが、大規模なイベントなどではテレビ、新聞、ラジオなどグループの代表が集まって広報などについて会議が開かれる。いつもブログ子のすぐ左にはジャニーズを代表してメリー・喜多川氏が、右前には吉永小百合の夫、であるグループの共同テレビ社長の岡本太郎氏がいたのを覚えているが、グループ員でもないのにジャニーズ事務所が一人取り仕切っていて、誰も発言できない雰囲気だった。まして、ジャニー喜多川の性癖など知っていても口することなどタブーであった。ほかの民放テレビ局も同じで全局ジャニーズに依存していたのだ。
自民党の法案提出者は「法案は理念法で、新しい権利を加えるものではない」と説明している。そのとおりで、もともと「LGBT理解増進法案」は「理念法」という部類に属する。「理念法」というのは、社会問題や政策課題などに対する国としての理念が記され、国や地方自治体、企業などに取り組みを促す法律のことをいう。国民に新たな権利を与えたり、罰則について定めた規定もない。
なんの利点もなく、逆に新法を契機に 恣意的な解釈が横行し、性や結婚に関する民法などの規定を巡って違憲訴訟が相次ぐ恐れがある法律などつくる意味がない。
日本の社会は諸外国に比べLGBTの人たちにはるかに寛容であった。それをことさらあげつらって混乱を招くより、今まで通りにしていれば何事もなく済む性質のものなのである。成立したのは仕方ない。こんなもの無視して取り合わないことである。