親友4人で呑んだ一夜

5月12日、ブログの亭主は親友と盃を傾けた。面白い話なのでこのブログで紹介する次第。

きっかけはワシントンにいる阿部義章君が日本に一時帰国するので皆に会いたいとメールを寄こした。廻状が廻ってこの日いつもの恵比寿ガーデンプレイスタワー39F 展望レストラン街「火の音水の音」と決まった。

阿部君は世界銀行南米・カリフ海地域担当局長を最後に退職、帰国して早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授をしていたが定年退職、日米に居を構えて行き来している。ワシントンでは日本の世銀からの融資状況を逐一資料にあたって論文にまとめている。

山本竜三君も小中高通じての親友で進駐軍に接収されて郊外に住まった家が近く、互いの家を行き来して育った。亡くなられたのでもう書いてもいいかと思うが、彼の義兄は日本の潜水艦隊育ての親とも言える人で、昔で言えば連合艦隊司令長官にあたる横須賀艦隊指令を務めた。六本木に防衛庁があった時代、防衛課長という要職にあり、ブログ子はある時期安全保障関係の取材で月に何度となく部屋を訪れて軍事知識を教えて貰った。だから韓国が「日本が持つものは何でも欲しがる」くせでイージス艦を増やしているのは明らかに間違いだと断言できるのだ。

いつもはこの二人に宮崎健を加えた3人で会っていたが、今回は久しぶりに川本皓嗣君を誘うことになった。昨年大手前大学学長を退いたと聞いたから東京にいるなら来ないかとメールしたら「当日は上野の学士院で定例会に出たあと(彼は2009年学士院会員に選ばれた)そちらにまわる」という返事があった。文末に「先日(4月24日)のオバマ大統領を迎えての宮中晩餐会に招かれ、大統領とアメリカの詩人談義をした」とあったので、これは面白い話が聞けそうだ、と思った。

果たして期待にそむかないもので、オバマ大統領と美智子皇后の深い文学への造詣をうかがわせる内容だった。どこから聞きつけたかフジテレビが取材にきて、18日(日)の午前7時半から9時までの「新報道2001」で放映されることになっったという。

我が畏友との一夕。 (左から)宮崎健、川本皓嗣、阿部義章、」山本竜三の各氏

我が畏友との一夕。
(左から)宮崎健、川本皓嗣、阿部義章、」山本竜三の各氏


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宮中晩餐会では、控室の大広間に入ってすぐ侍従に呼び止められて、名を確かめられ、食事のあとの歓談のさい、オバマ大統領とちょっと話してほしい、そのために広間の前方あたりにいてほしいと依頼された。

入室の前に天皇陛下、大統領、皇后陛下の順に会釈と握手をしたさい、皇后陛下から「比較文学の先生ですね、きょうは・・・」と話しかけられたがよく聞き取れなかった。食事のあと、大広間で待っていると両陛下と大統領が入室され、侍従に促されて大統領のそばへ行った。
侍従が私を紹介してくれて、大統領が「アメリカの詩を日本で教え広めていてくださって、まことに有難う。ところで、アメリカの詩人で誰が優れていると思うか」と訊ねられた。ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ、ウォーレス・スティーヴンズ、エミリー・ディキンソン、そして(ロバート・フロスト」とお答えした。

オバマ大統領はすぐ「その中ではディキンソンが最高だ」と断言された。さらにフロスト「たいへん人気があるし、詩もやさしそうに見えるので、軽視されがちだが、その言葉をじっくり読み味わうと、表現は絶妙だし、意味は深く、かなり難解だ」と、ずばりと的を射た批評を下したので、私はただただ驚嘆した。というような話だった。

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川本君がフジテレビの取材に応じたのは、アメリカの大統領と日本の皇后陛下がともに詩を語られるというのは、なんと素晴らしいことではないか、ということだったが、これには我々も全く同感で、美智子皇后陛下がアメリカは言うに及ばず、世界の文学に深い造詣をお持ちなことは他の例で承知している。

内々だが、宮中での新年の講書始の儀でご進講役にも選ばれるようである。いま、大手前大学に依頼されて担当している GACCO という企画に没頭しているとのことだ。これはアメリカその他の大学に追随して、東大や慶応などが始めた無料ネット授業で、その原稿づくりで、ほとんど散歩に出かける暇もないという。よろしければ、下記をのぞいてみてください。

「俳句――17字の世界」というタイトルで惹句には「十七音の言葉の切れ端が、なぜ深く多彩な意味を暗示するのか。芭蕉の句を中心に、俳句の詩的構造をさぐる」とある。ブログ子の大好きなテーマである。夏には聴講しようと思う。同好の方がおられれば下記のURLへ。

http://gacco.org/

4人で4時間半も 話し込んだ。誰一人それほど長時間だった認識はないのだが、札幌の下宿の高校生の娘に阿部君がピアノを教え、川本君が昼ごろ起きる生活から抜けだせず喧嘩したこと、小樽のぼた山の上でなけなしの金を分けあって上野までの4食分のそば代を都合したこと、3人ともサイトの亭主の母親の実家である米沢にスキーに出かけたことなどが話の接穂にでたと思うがよくは覚えていない。純米醸造酒にこだわってかなり盃を傾けた川本君が翌日二日酔いだったという。

この場で川本君に貸した千円が返ってきた。40年前日吉の社宅で貸した電車賃だが、ホームページの最後に確かに返却したと書いておいてくれと念を押された。家内に渡したら大笑いしながら千円受け取りました、とメールしたら「奥方が千円をご嘉納くださったとのこと、よろしくお礼を申し上げてください。うちの家内は、その後の貨幣価値を考えると、少なくとも1万円はお払いすべきだったと主張しています」とあった。

忘れていたので追記するが、話は嫌韓論にも及んだ。ブログ子は為に彼の地に足を踏みれたことがないのだが川本君は国際比較文学会の会長として何度も行って向こうの学者と会ったそうだ。「韓国にも日本大好きな学者は大勢いるよ」と言った。政治とメディアの偏向で表に出ないだけということのようだ。なぜかホッとした。
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この一文はホームページ「八ケ岳の東から」にある「雪散華」に川本皓嗣君が寄せた「宮崎ひさ子さんのこと」という中にある千円の電車賃の話に付け加える為に書いたものでいずれそちらに移します。経緯がわからないところがあるかもしれませんが理由はそのためです。

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