谷崎潤一郎と同じく「股間のふくらみが気になって」

 

優勝した二山治雄さん(中央)、2位の前田紗江さん(左)、加藤三希央さん(右)

優勝した二山治雄さん(中央)、2位の前田紗江さん(左)、加藤三希央さん(右)

ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝が1日夜、スイス西部ローザンヌであり、長野県松本市在住で松本第一高校2年の二山治雄(にやまはるお)さん(17)=白鳥バレエ学園所属=が採点1位となり優勝した。また、横浜市青葉区在住で横浜翠陵高校1年の前田紗江(さえ)さん(15)=マユミキノウチバレエスタジオ所属=が2位、福島市出身でモンテカルロにバレエ留学している加藤三希央(みきお)さん(18)=モナコ王立グレースバレエアカデミー所属=が6位入賞。このコンクールでの日本人優勝は、2012年の菅井円加さん以来2年ぶり。

ロシア文学を専攻したのでサンクトペテルブルグでチャイコフスキー「の白鳥の湖」に代表されるようにロマノフ王朝の庇護のもと絢爛と花開いたバレエのことを少しは知っている。だが理解となると谷崎潤一郎が「あの股間のふくらみが気になって没頭できない」という感想を残しているが、そのレベルである。

日本にバレエをもたらしたのは世界のプリマ、アンナ・パヴロワである。大正11年(1922)年に来日、「パヴロワ婦人露国舞踊劇一座」公演と銘打って東京の帝国劇場他、全国8都市を回った。パヴロワの名声は我が国にも伝えられており、当時の平均的サラリーマンの月給にも相当したといわれるチケットは総て完売、大入り満員の盛況であった。谷崎潤一郎、川端康成、武者小路実篤等・・・文豪、墨客の多くがこのときのパヴロワ公演の衝撃を書き残している。冒頭の「股間のふくらみ」云々はそのときの発言である。

ロシアの舞台で群舞するほっそりした美少女たちが、たちまちのうちにビア樽のように変貌する不思議はかねてより医学的検証を要するテーマだと思っているのだが、日本人の体系はとてもバレエに適さないと思っていた。それが今回のワンツー・フィニッシュどころか3人も入賞したことに対する専門家のコメントを見ていて驚いた。

「日本人は欧米人に比べて小柄で手足も短いぶん、重心をコントロールしやすく、難しい技を身につけやすい」(大阪の法村牧緒バレエ団長)というのである。

昨年1月17日深夜、バレエの世界最高峰の一つ、ボリショイ・バレエ団のセルゲイ・フィーリン芸術監督が、モスクワの自宅近くで何者かに強酸性とみられる液体を顔に掛けられ、一時は失明の危機も伝えられる重傷を負った。その後、同バレエ団上級ソリスト(準トップダンサー)のパベル・ドミトリチェンコが逮捕された。捜査当局は実行犯を雇ったとみている。ボリショイ内部に詳しい筋は、フィーリン氏はダンサーの配役や昇進を強引に進めたため一部で不満が高まり、ボリショイを離れるダンサーが相次ぐ異例の事態になっていたという。

ボリショイ・バレエではライバルを蹴落とすために、「ジゼルが半狂乱で死ぬシーンに目覚まし時計を観客席から鳴らす」「花束の代わりに死んだ猫を舞台に投げ込む」「衣装に針を仕込む」「トウシューズにガラスの破片を入れる」などが行われてきたそうだ。舞台裏はすさまじいものがあるようだ。

上位6人は、世界の有名バレエ学校やバレエ・カンパニーへ1年間無料で通える。生活支援金として1万6千スイスフラン(約180万円)も支給される。二山さんは、米サンフランシスコのバレエ学校を希望している。2位の前田さんは「夢のようでまだ実感がわかない」と留学希望先は伝えられていない。6位の加藤さんの父親は兄弟デュオ「狩人」の兄の加藤久仁彦さん(57)で本人はすでにモナコに留学中。

本場ロシアのバレエ学校を目指す者が一人もいないのは事件の影響だろうか。

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