女子W杯カナダ大会準決勝 日本━イングランド戦(エドモントン・コモンウェルス・スタジアム)を見た。テレビも新聞もなでしこジャパンが勝った、勝ったの大合唱だが天邪鬼のブログ子は、オウンゴールが決まった瞬間から、悲劇の主、イングランドのローラ・バセット選手をネットと動画に追いかけた。勝敗よりはるかにスポーツの魅力を見たからだ。
1-1で迎えた後半アディショナルタイム2分、MF川澄奈穂美の上げたクロスボールをDFローラ・バセットがカットする。しかしこのクリアボールは無情にもクロスバーを叩いてゴールラインを越えたところで着地した。
イングランドにとってはこれ以上ない悲劇的な敗戦は、これから“エドモントンの悲劇”として語り継がれるだろうが、翌日のイングランドメディアも電子版で大きく伝えた。『メトロ』紙は「考えられる限り最も悲痛な結末」と見出し、『ガーディアン』紙は「オウンゴールでイングランドの夢が終了した」、『テレグラフ』紙は「最後のキックのオウンゴールでイングランドが傷心」といった見出しが踊っていた。
試合終了のホイッスルが吹かれた瞬間、バセットは泣き崩れ、ほかの選手も、残酷な結末に立ち尽くしたり、涙を流したりするしかなかった。さすがだな、と思ったのはマーク・サンプソン監督の行動だ。泣きじゃくるバセット選手を抱きかかえ「泣いてもいいんだ。選手たちはピッチにすべてを置いてきた」とコメントした。さらに続けて 「ローラ・バセットは、今大会のイングランドを象徴する選手だった。勇敢で、力強く…チームを一つにまとめていた。最後は残酷な結果になってしまったが、英雄としてみんなの記憶に残るはずだ」
驚いたのはこのオウンゴールは計算されたものだったということだ。この場面、ボールをカットした熊谷からパスを受けた川澄が右サイドを駆け上がる。連動するように、大儀見と岩渕がゴール前へ。「守備ラインとGKの間に速いクロスを通せば、相手が触ってコーナーキックか、味方が触るか。あわよくばああいう形(オウンゴール)になると思った」と川澄。すかさず中央へクロスを入れた。
川澄の予想通り、イングランドのバセットがクリアしようとしたボールはクロスバーに当たってゴールインした。熊谷は「最後はラッキー」と振り返ったが、大儀見は「必然の結果」と言い切った。
宮間選手といえば、前回W杯決勝で、米国にPK戦で競り勝った直後の、美しい行動を思い出す。躍り上がって喜ぶチームメートに背を向け、敗れた米国選手一人一人を抱擁していた。ライバルに敬意を表する態度は、米国でも、評判を呼んだ。
スポーツで咲く美しい花は、実はこうした勝敗の陰に咲くものである。