「狡猾」というのは外交では褒め言葉である。その意味ではまんまと相手の手口に乗った日本外務省の「お人好し」ぶりが責められるべきだが、これで日本人は徹底的に朝鮮半島が嫌いになったことだろう。、
北朝鮮は日本人拉致被害者らの再調査期限となる4日を目前に、北京の大使館ルートを通じ、「もう少し時間がかかる」と再調査結果の報告延期を伝達してきた。独裁国家で将軍様が拉致を命令したのだから、1年と言わず今すぐ全員の居場所と生死ぐらいわかっている。日本の制裁カードや国連人権委員会を横目に見ての引き延ばしだが、強く出れば日本政府のために話が潰れたといわれるから「しばらく様子を見る」としか言えない。瀬戸際外交で延命をはかるいつものことだからまあこんなものだろう。
狡猾、かつダーティーなのは韓国である。韓国政府は、「明治日本の産業革命遺産」の23施設のうち7施設について、「戦時中に強制徴用された労働者がいた」と主張し、登録に反対してきたが、そのは6月の日韓外相会談で、徴用工を含む「歴史の全容」を施設の説明を加えれば反対しない姿勢を示し、事態は決着したかにみえた。
しかし、世界遺産委の開幕後、意見陳述で韓国側は外相会談の合意などどこ吹く風、徴用工の歴史に言及したのに加え、「強制労働」という表現を使おうとした。陳述内容を知らされた日本側が修正を要請し、韓国側が反発。折り合いがつかなくなって決定は先送りとなった。
ブログ子はかねがね世界遺産登録というものには懐疑的で、国連の場に持ち出さずとも、歴史的に価値あるものなら「日本遺産」に登録すれば事足れると思っているが、8エリアと23施設ではくす玉用意して今か今かと待っている。日本外務省は期待の声を無視できなかったのだろう、妥協を図る手に出た。
具体的には「a large number of Koreans and others who were brought against their will and forced to work under harsh conditions in the 1940s at some of the sites, and that during the World War 」(日本は、1940年代にいくつかのサイト=施設 において、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと)を施設に掲示することで合意を取り付けようとした。より具体的には、日本は、インフォメーションセンターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む(incorporate appropriate measures into the interpretive strategy to remember the victims)ということを提示した。
韓国ではこのところ裁判所が徴用工問題で相次いで請求権を認める判決が出ている。昭和40年の日韓請求権協定により「『完全かつ最終的に解決済み』とする日本側とは相容れない。しかし今回韓国側は徴用工の言葉は使わなかったものの、「強制労働」(forced to work)という言葉を多用して認めさせようとした。
今回の英文の合意文書にある「forced to work」という表現について岸田外相は「『強制労働』を意味するものでない」と説明した。さらに、財産請求権の問題は完全に解決済みとする従来の日本政府の立場に変わりがないことも強調した。
外務省筋によると、日本政府は、委員会での日本側の発言を裁判で使わないという確約を韓国政府に何度も確認したという。外務省関係者は「韓国内に(遺産の説明における強制労働の明記を主張する)いろいろな世論がある。ボンの現場での確認とともに、ハイレベル(閣僚級)でも確認した」と審議を1日先送りする間に韓国側にダメ押しをしたというのだが、韓国での新聞報道はまるで逆である。
我が国は慎重を期して”others”まで付けているが、ユン外相の国内向けコメントでは”forced to work”だけ、つまり「強制労働を認めさせた」とことになっているのだ。また韓国の趙兌烈外務第2次官は委員会で「今日の決定は(徴用の)被害者の苦痛を記憶に残し、歴史の傷を癒やすための重要な一歩だ」と発言、さらに、記者団に対して「日本政府が朝鮮半島出身者の労働に強制性があったと認めた。交渉で合意した結果なので満足して受け入れる」と強調している。
韓国の外交関係者にしてこれだから、当然メディアの論調は「勝利」一色。「日本が強制労役の事実を国際社会で初めて認定した」と大々的に報じている。
朝鮮日報は「登録阻止が望ましかったが、『強制労役』を認める発言を引き出したことに大きな意味がある」との政府当局者の話を伝えた。同紙などは、日本政府が韓国人元徴用工訴訟などへの影響を懸念し「強制」との表現に拒否感を示したと解説したが、日韓外交筋は「訴訟と世界遺産登録は別問題」としている。
また「日本が国際社会の圧迫に屈服」(朝鮮日報)、「韓国が土壇場で逆転勝利」(中央日報)など韓国外交が“勝利”したとのトーンで伝える一方、徴用に絡む施設以外の登録施設の概要や、歴史的価値に関する報道はほとんどない。(共同)
韓国の朴槿恵政権はことあるごとに「日本は正しい歴史認識を」という。それは日本側のセリフだろうがと言いたいが、この国は肝心なことには耳を貸さない。今回も先が思いやられるのである。