ソクラテスの「ギリシャ」今いずこ

恫喝するチプラス首相

恫喝するチプラス首相

窮鼠ネズミを噛む―図である。欧州連合(EU)などから金融支援の条件として要求されている財政再建策への賛否を問うギリシャの国民投票で、同国のチプラス首相は5日夜(日本時間6日朝)、テレビ演説し、「ギリシャは歴史的なページを開いた」と述べ、反対派の勝利を宣言した。反対が61.3%、賛成が38.7%で、事前の世論調査や出口調査では賛否1%程度の差で拮抗していたから、この国の世論調査なるもののいい加減さにあきれる。

いい加減な国だがブログ子にとっては妙に惹かれる国である。ギリシャ神話が好きだということもあるが、この国の町並みを写した写真があると商店の名前や人の名前が読めるという親近感があるせいだ。ギリシャ語はできないが、学生時代かじったロシア語でなんとなく読めるのである。キリル文字というが実はかなりの部分ロシア文字と同じである。ロシア文学を読むと、ギリシャ正教のシーンが度々出てくる。ロシアの宗教も人間も実はギリシャからやってきたものなのである。

今回のギリシャ問題の発端は2009年秋、ギリシャの名目GDP(国内総生産)比の財政赤字が、それまで公表していた3.7%ではなく、12.5%(その後13.6%に修正)であると発覚した事からである。ユーロに加盟するには、財政赤字を3%以内、公的債務残高を同じくGDP比で60%以内に抑える必要があるが、それをごまかしていたのである。

大盤振る舞いの年金は現役時代の85%、労働人口の25%は公務員で定時出勤すれば手当、パソコンできればまた手当、国民は税金を払うのが嫌いで商店やタクシーは領収書なしなら割引、というでたらめ(他所の国から見たら)で借金膨らめばIMFから借り入れしてしのいできた。怒ったEUから年金支給年齢を65歳から67歳に順次引き下げろと緊縮財政を迫られると、緊縮反対の国民投票で借金は払わない、というのでは誰が見てもまともな国ではない。

ソクラテスは「悪法もまた法なり」と毒をあおった。その末裔が借金踏み倒し常套犯である。オリンピックでは毎回選手入場の先頭を切る栄誉を与えられる国がこれでは先祖が泣くだろう。そう思っている人が多いと思う。しかしこれは大変な誤解なのである。

現代のギリシャ人はユークリッド、ピタゴラスやアルキメデス等が活躍した古代ギリシャ人とは、実は「国民の大部分、80%以上は別人種であって、ほとんど血のつながりがない」のである。

ギリシャ史を概略するとマケドニアの成長でギリシャの宴は終わる。そのマケドニアもローマ帝国に飲み込まれる。この時古代ギリシャ市民は奴隷のようにこき使われる立場に転落して、かつての文明も忘れられてしまった。15世紀に東ローマ帝国が滅亡し、以来400年間オスマントルコの支配下にあった。知識階級はオスマン帝国の支配を嫌って、モスクワ公国に移住してしまい、そこで今のロシア帝国の繁栄の基礎を築く。

つまり本来のギリシャ人はロシアに行き、ギリシャに残ったのはオスマントルコに連れて来られた農奴たちばかり。その彼らが、近代になって民族意識に目覚めて独立を目指すもままならず、イギリスやフランスやドイツなどヨーロッパ諸国が介入してくれてやっと独立した国なのである。

踊っている場合じゃありませんが・・・能天気なギリシャ国民

踊っている場合じゃありませんが・・・能天気なギリシャ国民

チプラス首相は5日夜のテレビ演説で、「交渉のテーブルに戻る」と述べ、債務の減免をEU側に求める考えを強調した。また、ギリシャ政府は6日、EU側と関係が悪化していたバルファキス財務相の辞任を発表した。破綻した国にしては態度がでかすぎるが、それはロシアと中国が助けてくれるという思惑があるからだと云われる。

中国が出てくるのは「一帯一路」政策で、海と陸のシルクロードをヨーロッパに広げようというのだが、その陸海ともにギリシャが要の位置にある。盛んに援助を言っているが金を出すとはまだ言わない。それはそうだろう。AIIB(アジアインフラ投資銀行)をつくって57カ国を集めたが内実は後進国など「借金踏み倒し」予備軍ばかりで、さらにギリシャを抱える愚は犯さないだろう。

ブログ子は上述のように過去の言語、宗教、人の交流ぶりから、あるとすればロシア接近はあると思っている。。EU側も加入の法律はつくったが追放の法は用意していないという事情やユーロ圏の経済混乱を考えれば莫大な借金ながら棒引きするしかないという弱みもある。かくて「ない金は返せない」と開き直ったギリシャと延々交渉が続くと見る。

コメントは受け付けていません。