新聞記者の良し悪し判別法

1房100万円のアホらしさ

1房100万円のアホらしさ

石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」が9日、金沢市中央卸売市場で今季の初競りにかけられ、出荷された31房のうち1房がこれまでで最も高額の100万円で競り落とされた。過去最高額だった昨年の1房55万円を大きく上回った。.

卸売業者が競り落とし、ホテル日航金沢が購入した。平井優之総料理長は「北陸新幹線が開通したこともあり、何が何でも競り落とすよう言われていた」と興奮気味に話した。コース料理のデザートに出す予定という。(新聞各紙).

夜のNHKニュースでも取り上げられ、宮崎県の1個30万円のマンゴーとか北海道の1個20万円のスイカと並んで紹介されていた。「1房100万円、1粒3万8000いくら」とキャスターが叫んでいた。

ブログ子はだいぶ前に書いた「物には物の値段がある」という記事を思い出した。三越の岡田茂社長が「三越・岡田社長と女帝の暗部」という記事(週刊朝日)で取締役を解任されたのが1982年9月22日だからその少し前である。

いつも記者仲間とお茶をする日本橋の千疋屋本店で青森の「世界一」とかいうリンゴが1個2000円で店頭に並んでいた。すぐ側の三越本店ではオホーツクというラーメン屋が岡田社長と組んで1杯1500円のラーメンを売りだした。街では400円前後の時代である。

社に戻って2,3年前に入社した女性記者にこの二つの例を教えて「物には物の値段がある」という見出しで、社会評論的記事を書け、と命じた。出てきた原稿はまるで使い物にならなかったので自分でこのタイトルで書いた。

このようなタイトルで原稿を書ける記者は少ない。中央紙だと1000人以上の記者(見出しと割付を担当する整理部を含めて)が在籍する。大雑把に仕分けすると1割は辞表を書いたほうがいい粗悪品である。あとの8割は可もなく不可もない。例えば社会部などは事件事故の目の前の事象を警察などの調書をもとに書く。誰でも教えればそれくらいはできる。政治部記者だと政党別、派閥別に担当者がいるが、政局なら自派を中心に他派担当記者の取材と付きあわせて、見通しを書けばデスクがその他の記者の取材メモと照らしあわせて1本仕上げる。取り立てて難しいことではない。

社会時評、社会評論、トレンドについての原稿はそうはいかない。上述のようなテーマでは馬鹿高い値段を許せないとするにはまず自分の「哲学」がいる。値段についての数字の比較も必要なら、昔の文人・碩学が書き残した文章の引用にも迫られる。つまり記者本人の人生で培った「教養」が求められるのである。こうした原稿が書ける記者となると残り1割の新聞記者の内片手で挙げるくらいである。

その女性記者については、その程度の記者と判断した。その後社を辞めて米国人と結婚してNYから日本の英字紙に寄稿しているのを散見したが見るものはなかった。新聞記者の良し悪しはこうした原稿を書かせれば一発で判明するものだ。

付け加えるとこうした馬鹿高い食べもののニュースは関係者が話題作りに恣意的に操作している。電通・博報堂などの大手広告代理店が仕掛けることもある。誰が1粒(1つぶ!)4万円弱のブドウを買うものか。こんなものはメディアが取り上げなければ自然消滅するたぐいのものである。

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