韓国が漢字文化圏を離脱した結果

「明治日本の産業革命遺産」の登録審査をめぐり、韓国側が外相会談での合意を無視し、審査で「強制労働」を声明に盛り込もうとしたことに対し、日本が合意破棄を迫って韓国発言を合意通りに修正させていたことが10日、分かった。「forced labor(強制労働)」「forced to work(働かされた)」の駆け引きについては11日付け産経の【世界遺産交渉の舞台裏】
http://www.sankei.com/politics/news/150711/plt1507110003-n1.html)を読まれたい。

plt1507110003-p1概ね7日のこのブログ「汚い南北朝鮮半島」どおりの内幕で、日本が何度も念を押して落ち着いたものを、しれっと覆して国内向けには「強制労働」と発表したものであることがわかる。韓国の尹炳世外相の確信犯的裏切りである。とはいえ、「forced labor」だろうが「forced to work」だろうが英語圏の人間には「強制労働」と受け取られるもので、英語使いの秀才が多い外務省にしては愚かな対応だ。安倍首相は「自らのミスは自分で収束してこい」と、交渉責任者である外務省外務審議官の杉山晋輔に指示したのもむべなるかな。外務省がなぜダメになったのかについてはたびたび取り上げているので、次の機会に譲る。

ブログ子が注目したのは尹炳世外相が「日本が何を言おうと、国際社会では英語が正式なものとみなされる」と言っている点だ。近くて遠い日韓は実は、今では英語を介してしか意思疎通ができなくなっている。韓国が漢字を捨ててハングルという表音文字を採用した結果である。

韓国の新聞は30年ほど前は漢字が多くて大体の意味は読めたものだ。韓国はその昔、日本をはるかに凌ぐ漢字大国だった。室町時代から江戸幕府時代を通じ将軍が変わるたびに朝鮮通信使が来日した。江戸時代だけで12回。途中の各藩は心をこめて接待にあたり、地方の文人墨客は通信使の宿舎に自作の漢詩などを見てもらおうと押しかけたとある。

今回のずっと前から高校時代からの親友、川本皓嗣東大名誉教授と韓国やベトナムなどの漢字文化圏についてメールを交わしていた。氏は比較文学の泰斗で、今年、皇居での講書始の儀で両陛下などを前にご進講したばかりである。韓国が漢字を捨てたことについてどう思うかとメールしたところ返信があった。

私信なので詳細には書けないが概ねこういうことだった。

 せっかく漢字文化圏にあった共通の文字が、まるでバベルの塔が崩れたのと同様に、ばらばらになったことは、まことに残念です。いちばん悲惨なのは朝鮮における漢字の廃止です。過去にはずっと極端な漢学崇拝だったため、文学をはじめ、19世紀までの重要文書はほとんど漢文ばかり、日本のように古事記、古今集、源氏物語といった自国語の作品は、ほとんど何もありません。

漢字撤廃によって、文化が伝統から切れてしまうばかりではありません。ハングルは日本の仮名よりも発音の種類が豊かですが、それでも漢字を使わないと同音異義語が多すぎ、姓名もハングルで書くので、もとの漢字を自分でも知らない人が多いようです。

だから今ではもう、お互いにまったく別の言語を使っていることを認めて、一から外国語として習得するほかはないし、それでいいのではないかという気もします。また仰せのとおり、日本語で漢字と仮名を使い分け、漢字については音読みと訓読みを即座に使い分けるという離れ業を、誰もが日常的に演じていることが、日本人の大きな強みをなしているようです。

わざわざ英語に直さなくても、「強制労働」にしろ「使役。働かされた」にせよ、「徴用」にしろ、漢字ならば違いは一目瞭然である。南北とも朝鮮半島は漢字大国だったことを思い出し、漢字でやりとりすれば誤解は生じない。行き過ぎた漢字排斥で日韓の理解度は格段に落ち、外国語を介してしか会話が出来ない。情けないことだ。

この問題では、川本教授に教えられたのだが豊田有恒著「韓国が漢字を復活できない理由」 (祥伝社新書)が面白い。SF作家で通っているがどうして、韓国語を独学で読み書きできるまで習得した大変な韓国ウォッチャーである。

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