北海道の新千歳空港にプロ野球・北海道日本ハムファイターズが掲げた巨大広告に「北海道は、開拓者の大地だ」とあったことに北海道アイヌ協会(札幌市)の阿部一司副理事長が「歴史や国際的な動きをもっと勉強してほしい。人権への配慮がなく、まだわかってもらえないのかと情けなくなった」とクレームをつけた。球団は即座に9日、「配慮に欠けた。おわびする」と撤去した。
行き過ぎである。人権とか差別を前面に出して攻められると行政も企業もひとたまりもなく降参する。確かにアイヌ民族は北海道を中心に先住していた。.明治以降に北海道開拓が本格化したことで、先住の土地を追われるなどした歴史があり、ひどい差別があったであろう。しかし、入植者も先住民もともにフロンティア・スピリットの開拓者精神で原野を切り拓いていったのも事実である。
ブログ子はひところ猛威を振るった「言葉狩り」を思い出した。歴史書に「士農工商」とあるのが指弾され、新聞に「部落」とあれば「集落」に書き換えられた。多くの作家も作品や評論の中の「差別用語」を摘発され、時に土下座させられた。辟易した遠藤周作に対応を任されたことがある。「私が自分で対応する」と立ち向かったのは曽野綾子ただ一人である。
メディア側も弱腰に終始、記者全員に研修を義務付けた新聞社もある。「糾弾」の嵐が吹き荒れ、知っている例では時事通信社長が土下座した。これを主導したのは部落解放同盟だが、今ではすっかり影を潜めた。しかし現在ではアイヌ協会がとみに活動を解同と同化させているように見える。
ブログ子は北大のOBだが大学構内にある北方文化研究室の前を通るたびに、アイヌ民族の視点からアイヌ語を理論的に研究し、『分類アイヌ語辞典』を著したアイヌ出身の知里真志保博士の業績に敬意を払った。ところが現在では、研究のため集めたアイヌの頭骨が雑に扱われていると、人権派から攻撃されていると聞く。
表現の自由とか学問の自由とかまで持ち出すのはどうかと思うが、人権と差別を錦の御旗に押し立てての言葉狩りには大いなる危惧を持つ。