20日午前11時40分ごろ、広東省深圳市北部郊外にある工業団地の近くの山で土砂崩れが発生し、工場や宿舎30棟あまりが倒壊、多数が生き埋めとなった事故。同市と周辺都市から駆けつけた複数の消防団が生命探知機などを使って1500人態勢で捜索しているが70人以上が行方不明となっている。
不法投棄され高さ100メートルほどに積みあがった残土が雨水を吸って崩壊、土砂崩れが起きたもので、政府は人災と断定、崩れた残土置き場を管理していた市の緑化事業関連会社の男性幹部1人を拘束した。残土置き場の事業は2013年夏に地元当局が入札を実施、市の別の不動産関連会社が落札し、この緑化関連会社に75万元(約1400万円)で転売したという。実際の管理は、この会社が行っていた。
おそらくは汚職の上に汚職を重ねて残土が山積みにされたのだろうが、下っ端の会社幹部一人を拘束してその上で甘い汁を吸っていた共産党幹部が追及されることはないのだろう。国営新華社通信によると政府は23日、国土資源相をトップとする調査チームを発足させたそうだが、まあ行きつく先はいつものあやふやな結論だろう。
最近、『権力闘争がわかれば中国がわかる』(さくら舎)という本を読んだ。著者の福島香織さんは以前、産経の香港支局長や中国総局記者をしていた女性で、現在は退社してフリーのジャーナリストをしているが、現役のころから突撃取材ぶりが面白くて愛読していた。彼女のいうには表題のごとく中国のことは権力闘争の面から解析するとよくわかるという、習近平主席がすすめる「反腐敗キャンペーン」の「蠅も虎も退治する」という大衆受けする政治もみな権力闘争だ。
「中虎」の薄煕来、周永康、徐才厚、郭伯雄ら「4人組」を失脚させ、連座して200名以上の『幹部』を拘束したが、庶民の期待する『大虎』すなわち江沢民、曽慶紅、李鵬らは今後追求の手が及ぶと見られるが、関連する共産党幹部は大変な数に上る。それらがみな保身のために動く。
深圳の現場も彼女の解説を読んでからみるとよくわかる。いい例が世界を仰天させた重機の大量動員である。何百台というパワーショベルが崩落現場の上に所狭しと並んでいる。下で埋まっている人間が押しつぶされると抗議の声が上がったが当局は構わず作業を進めた。
ブログ子は当初 残土を崩すため上と下の重機は連携して土を下へ下へと下ろしているのだろうと思った。しかし動画を見て分かったが、それぞれの重機は互いに連携することなく勝手に穴を掘っているのである。最上段の重機など土の堆積量からみて数十メートル掘らなければ、つまり穴の底まで達しなければ埋まった建物まで行きつかないと思われる。
つまり、これは当局が現場の住民や国民の不満が爆発するのを恐れて、やってますよというのを見せるためのショーなのである。23日早朝、1人が救出された。重慶市から出稼ぎに来ていた田沢明さん(21)。骨折や皮膚の壊死はあったが、意識はしっかりしていた。崩れた建物の隙間にいて空気が確保でき、周りに食べ物もあったことが生存につながったとみられる。田さんも中から石ころで音を発して外部に救出を求めていた。新華社は、武装警察官が土中から出た男性の手を握る様子を「命の握手」と大々的に伝えた。住民の不満は高まっているようだが、そうした動きは市民が勝手に発信する微博(ウェイボー)などのソーシャルメディアでしかうかがい知れない。報道管制が徹底していてこういう当局の意向に添った写真しか許されないのである。