トランプでもヒラリーでもお先真っ暗な日本

アメリカ大統領選は15日のオハイオ州とフロリダ州の結果で大勢が決まる。民主党・ヒラリーと共和党・トランプの一騎打ちになるのだろう。どちらに転んでもTPP反対だし、日米安保タダ乗り批判で日本の米軍駐留費の負担増や対中国へ軍備増強論に拍車がかかる憂鬱なことになる。

mig調査によるとアメリカ国民全体のトランプ反対者は64%、ヒラリーはもっと高くて70%以上と言われる。それなのに2人とも自党の選挙で高い人気を維持しているのはなぜか。先のこのブログで南部のテネシー州でのオバマ嫌いの声を紹介したが、この8年間のオバマ政権へのうんざり感がこのトランプブームに表れていると思う。同じ理由で民主党もヒラリーを支持するしかないというジレンマに陥っているのだと思う。

2月25日のワシントン・ウォール・ストリートジャーナル紙がオバマ外交の決定的失敗を列挙した。「オバマ大統領よ、戦争で、 早まった勝利宣言で兵を引くことの苦い結末から学べ」という主旨だ。アメリカのリーダーには深い軍事知識が要求されるが、オバマ大統領にはこれが欠けているというのだが、そのとおりである。
 
オバマ大統領は11年末までにイラクから米軍を撤退させたが、いま再び数千の軍人を送り込まざるを得なくなっている。アフガニスタンからの16年中の撤退予定も、強大化するISの勢力の前に、変更せざるを得なかった。そしていま、「リビア及びその先に展開した米特殊部隊を防護するため」として、リビア攻撃用の米軍の無人機基地をイタリアに確保しなければならなくなった。

軍事の要諦の第一に上げられる「愚」とし、初戦でちびちび軍を投入していくことと、相手を徹底的に壊滅させないうちの撤退があげられるが、オバマ大統領はこれを知らない。毛沢東は「水に落ちた犬は打て!」と政敵を徹底的に叩くことで生き延び、現在の中国共産党もこれを忠実に真似ているが、オバマはイラクのイスラム原理主義者を野放しのまま早々と軍を引いたのが、現在の彼の地の大混乱を招いている。

軍事知識がないのはトランプも同じで、メキシコに「トランプの壁」を築くとか、中国に対する安全保障費を日本に払わせるなど、できもしないことを並べるほうが大衆受けするし、アメリカ人に染み付いたオバマ嫌いをくすぐるのだ。

根っからの民主党支持である「ワシントン・ポス ト」紙が2月24日と25日の社説でトランプ氏に関して共和党にメッセージを送り、「共和党指導者よ、持てる全ての力でトランプを阻止せよ」「トランプは共和党の怪物、フランケンシュタインだ。彼は今や党 を破壊する力を手にした」とトランプ 氏に投票しないように呼びかける異例の社説を掲げた。
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共和党支持の「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙すら前述のようにオバマ批判をしたのち、ヒューストンにおけるテレビ討論会で、ほかの候補が一斉に本格的なトランプ攻撃に踏み切ったことを歓迎する記事を掲載した。アメリカの新聞は日本と違ってはっきり政党支持色を出す(日本でも最近では朝日、毎日が左へ旗幟鮮明だが)のだが、時すでに遅しである。
 
「日本及び世界から見て不思議でたまらないのは、民主、共和両党候補者 のだれ1人、中国やロシアの脅威をアメリカの取り組むべき重要課題とし ては取り上げないことだ」と評論家の櫻井よしこさんが指摘(週刊新潮のコラム日本ルネッサンス)しているが、ブログ子も同感だ。

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