国土交通省は15日、14日夜の「平成28年熊本地震」で九州新幹線の回送中の列車が全車両で脱線していたことを明らかにした。列車は6両編成で1車両に8つの車輪が付いており、全48車輪が線路から外れた。新幹線の全車輪が脱線したのは初めてという。運輸安全委員会は15日、鉄道事故調査官3人を現地に派遣した。
熊本駅から回送列車として発車直後約1分後に地震に遭遇。運転士が非常ブレーキをかけた。現場は熊本市内で、熊本駅から南に1・5キロの地点だった。新幹線の脱線としては4件目で、これまでに東日本大震災、中越地震など3件がある。九州新幹線では初めての脱線。
新幹線の脱線事故では2004年(平成16年)10月23日、新潟県中越地震のとき、時速200キロ超で走行していた上越新幹線「とき325号」(200系10両編成、乗員乗客154人)の脱線事故がある。営業運転中の新幹線の脱線は初めての出来事だったが、新幹線は揺れを感知して非常ブレーキが作動し、約1・6キロ先まで走って停止した。10両のうち8両が脱線して傾いたが、車体下の機器類が偶然レールに挟まり、奇跡的に横転は免れた。日本の新幹線の安全性を全世界に発信した事故でもあった。
この時の地震はマグニチュード6.8、震度7、震源の深さは13.1km、最大すべり量が1.6mの直下型だった。今回の「熊本地震」の規模はマグニチュード6.5、震度7、震源の深さは約11キロである。すべり量はまだ発表されていないが、なにからなにまでほとんど新潟県中越地震と同じである。
中越地震の後、事故対策が進み、脱線しても、線路から大きくそれないようにする装置が開発され、新幹線の全車両に装着されている。それが作動したとも思えるが、「全車両脱線」とはただ事ではない。直下型地震のすさまじさと片付けるだけではすまない重大な意味を持つ。現場はカーブで、回送中でスピードが出てなかったなどラッキーな面もあろうが、しばらく新幹線を止めてもメカニックを解明する必要がある。