未曽有の熊本地震で避難所や駐車場のクルマの中で生活する人が11万人を超えた。土砂崩れ現場で横一列になって手際よく掘り出しているのも、炊き出ししているのも、テント張りの風呂を用意しているのも、みんな自衛隊員である。いろんなところから災害救助隊や医療班、各府県からの行政支援要員も懸命に頑張っているが、自衛隊の活動がとりわけ目立つのは、訓練が行き届いていて手際が一段と優れているからだろう。
一方避難所にいる人や屋外避難のクルマの人たちは、長い列をつくって水や食料配給や炊き出しのおにぎりを待っている。昼は倒壊した自宅の整理などに出ていて夜やっと戻ってくるだけの人もいて食事の支度などできない状況もあるだろうが、もっと被災者が手伝う場面を作れないかと思う。
そんな中、「カレーライスは住民の手で」と横断幕を掲げている人たちの写真を見つけた。我が意を得たり、とよく見ると、つづけて「迷彩服は学校に来ないで」「自衛隊ではなく専門の災害派遣隊を」とある。馬鹿なサヨクかぶれもいたものである。そんな横断幕をつくる余裕があるなら、手伝え!とぶん殴りたい衝動に駆られた。
日本は災害に対して素早く行動でき、住民もどこかの国と違って整然と列を作り、やみくもに他人や国を非難しない点で、世界でも類を見ないほど規律正しい行動をとれる国である。どこの世界に、避難所がその日のうちに用意でき、翌日におにぎりや水が配られ、ミルクやおしめやホッカイロが用意できるところがあろうか。
だが、行き届きすぎるあまり、その分住民の「自活能力」が失われているように思える。少ないながら米や水が届けられたらそれで自分で最小限の炊事ができる能力を身に着ける必要がある。自衛隊だから自己完結の訓練ができている。親切に炊事まで引き受けてくれる。それに甘えるだけでなく、曽野綾子さんがいう「サバイバル力」を日ごろから鍛えておかねばならない。
それには小中学生にキャンプを義務付けるのがよい。飯盒の米2合に中指の関節1つ分の水、あるいは片手を入れて手首までの水を入れる。かまども自分で作る。海岸など砂ばかりのところでは石がないから作るのに苦労するが、被災地には崩れたコンクリ片がたくさんある。きれいなかまどができるだろう。火をつけるのも容易ではない。新聞紙を下に敷きその上に木っ端をそれからやや大きい木を・・・。こうした能力はキャンプで身に着けるものだ。近頃はボーイスカウトやガールスカウトに子供が集まらないという。塾が忙しいからだ。
ブログ子の小中学校時代はキャンプ生活が毎年あった。自分で飯が炊け、おかずがこしらえられる力を付けさせられた。すばやくテントを張ることもできる。加えて溺れないように「皆泳」が義務付けられた。家内はガールスカウトで石ころだらけの上にその辺の草を刈って寝床にしつらえる訓練を受けた。いま、山小舎のストーブをつけるとき両親はさっさと火を起こせるが、娘たちは茫然と見ているだけである。
エコノミークラス症候群などというしゃれた名前は昔はなかったが、足を動かさないことで引き起こされるという。被災者に働いてもらうことをためらう風潮があるが、どんどん手伝ってもらうようにしたらどうか。訓練されていないと動けないだろうから、子供のうちからサバイバル力を身に着けさせるのである。