偉いぞ!山崎製パン

あの大雪の日、立ち往生したクルマの中にいた山崎製パンのドライバーは誰に言われたわけでもないのに、積んでいた自社製のパンを無料で配ったというのでネットで賞賛されていた。

マスコミにいた経験からするとその社の固有名詞が出て宣伝になることを嫌う傾向がある。やれ困った、死傷者が出たということばかり書いているメディアの片隅にでもいいからこういう話を紹介してもらいたいものだと、ネットに出回っていた山崎製パンの「義挙」の写真を保存しておいたのだが、10日あまりたって日経新聞がやっと「大雪の日、リアルアンパンマンになった山崎製パン」という記事を書いた。「リアルアンパンマン」という言葉も当時ネットで飛び交っていたもので、そのまま見出しにしたものだ。

 「大雪の日、リアルアンパンマンになった山崎製パン」
「えらい」「リアルアンパンマン」。
14日から関東・甲信、東北地方を襲った大雪。各地で交通網が寸断された。そんな中、中央自動車道談合坂サービスエリア(SA)で山崎製パンのトラック運転手が、足止めを余儀なくされた多くのドライバーらに無料でパンを配布したことが、インターネット上で大きな話題となった。

 「ヤマザキパン、カッケー」「これから山パンを買う」といった書き込みも相次いだ。
 その一方で、食料品を積んでいるコンビニエンスストアの配送トラックはなぜ山パンのような行動がとれないのか、といった声もネットで上がっていた。

 その理由は簡単で、山パンの独自の物流システムにある。街で見かける山パンのトラックのナンバープレートを見ると、「白ナンバー」が多いことに気がつく。白ナンバーは山パンの自家用車で、運送業者のトラックではない。そのトラックをよくよく見ると「製パン業」という文字が書かれている。山パンは製造したパンをお店までちゃんと自らの手で届けるところまで自分たちの仕事と考えているのだ。

 運送業の緑ナンバーだと、運ぶ商品は荷主から預かったものになり、それを相手先にまでちゃんと届けることが仕事だ。仮に
緑ナンバーのトラックの運転手がパンやおにぎりを運んでいたとしよう。今回のように足止めをくらった場所で商品を配ることは本来の業務を放棄したことになる。

 では、談合坂SAで「すきなだけ持ってってよ!」とパンを配ったドライバーが運転していた山パンのトラックが白ナンバーだったのかというと、そうではない。実は緑ナンバーだったのだ。ただし、このトラックは山パンの物流子会社が運用しているもので、山パン製品のみをトラックに詰め込んで配送している。事実上の山パン専用車で、白ナンバーと同様な行動がとれたのだろう。

 最近は「餅は餅屋」ということで、専業の物流業者に配送を委託するほうが効率的だといわれている。なぜ山パンは、それほ
どまでに自社物流にこだわるのか。

 それを知るには社長の飯島延浩氏の一橋大学時代に遡る必要がある。若き飯島氏は英国の産業革命時代の石炭産業の衰退について研究し、その鍵を握っていたのが水路、海路、陸路と時代とともに変遷した物流であると指摘した。物流を手放さないことが自らの事業をより発展させると考えたからだ。多くの消費財メーカーが小売業が構築する物流機能に組み込まれる中にあって、山パンはそうした流れとは一線を画していることになる。

 余談だが、山パンのトラックに描かれている食パンをほお張る女の子の名前は「スージー・ポーマンちゃん」。今から50年ほど前に東京に住んでいた実在する少女(3歳くらい)だ。また、山パンの創業家は飯島姓なのに、なぜ山崎製パンなのか。戦後の統制経済の下、創業者である飯島藤十郎氏は配給パン事業に関わっていたため、パンの加工を請け負う新規事業の営業許可がもらえず、妹の嫁ぎ先である山崎の姓を使ったためだ。

 山パンによると、自然災害などの際には今回のようなパンの無料配布を現場の判断でおこなってもいいという。3年前の東日
本大震災でも同じようなことがあった。社長の飯島延浩氏は敬虔(けいけん)なキリスト教信者としても有名だ。こんなところからもリアルアンパンマンが普通にできたのかもしれない。

BgkljNyCYAAku。r記事は以上で、写真は雪の中を走る山崎製パンのトラックが掲載されていた。どうにも迫力がないのでブログ子が保存しておいた、当日流れていたネットからの写真を紹介した次第(クリックで拡大)だが、いかに多くの人が助かったか一目瞭然である。もっとも、お隣の中国人、韓国人がみたら自国でお馴染みの交通事故現場での略奪光景と映るかもしれない。なにしろ荷台からこぼれ落ちた生きたニワトリや豚まで持ち去られる国柄である。こちらの写真もブログ子はわんさと保存してある。

ここからは補足で、家内に聞いた話だが、長女の小学生時代の同級生にダウン症のお兄ちゃんがいた。長じて就職先を諦めていたが、山崎製パンが喜んで受け入れてくれたという。同じ作業の繰り返しの現場では障害があっても差支えがないと、立派な全寮制も用意して何十人と働いているという。宗教的哲学に基づいたクリスチャンならではの経営である。

ここまで書いて同じ経営をしていたメンソレータムの近江兄弟社を思い出した。不幸にも一旦倒産したが今なおメンタムを作り続けていて、我が家では似たような塗り薬を必要とする時は自然に薬屋で「メンタム」の名が出る。こうまで書いたら読まれた諸氏は今後パンは「ヤマザキ」を買われるのではないか。

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