ソチ五輪の選手たちが25日帰国した。橋本聖子団長に率いられてそろって記者会見する中に一番話が聞きたかった浅田真央の姿がなかった。真央ちゃんはおなじ時刻に有楽町の外国特派員協会(通称、外人記者クラブ)に招かれて一人で記者会見していたのだ。メディアの中に長くいた者としては、あいかわらずこの記者クラブには知恵者がいるなあと感心した。どこで話をつけたか知らないが大方の新聞・テレビをさておいて見事に「人さらい」した裏事情をどこか書いてくれないかと思ったのだが、天邪鬼のブログ子はソチの野良犬のことを取り上げたい。
ソチの情景はあちこちのテレビで紹介されていたが、どうしてこんなに野良犬が多いのだろうと不思議に思っていた。ゲートの横の人通りの多い場所、道路の横の空き地にひんぱんにくつろいでいる犬たちの姿が写っていた。見物の観光客に撫でられても平然としている姿もあった。
大会中一枚の写真が話題を呼んだ。アメリカの女子スノーボーダークロス界の第一人者、リンゼイ・ジャコベリス選手がツイッター上に1頭のチの野良犬ワン公との記念写真を載せた。メダル候補だったが、準決勝で転倒するという苦い経験をしたのだが、「私と私の子犬」と題された写真には、満面の笑みで毛色が黒と茶の子犬のあごを撫でている彼女がいた。「アメリカに連れて帰る決心をした」とも書いた。
ジャコベリスさんの代理人、ジョッシュ・シュワルツ氏によると、彼女はロシアの動物病院に行き、ペットパスポートを購入するなど、犬の引き取り手続きに奔走、「ソチ」と名付けたその子犬と一緒に20日にデンバー空港に到着、犬は与えられた骨をかじるのに熱中していたという(写真左)。
犬を連れ帰ったのは彼女ばかりではない。同じ米国選手で13日に表彰台を独占したフリースタイルスキー男子スロープスタイルの銀メダリスト、ガス・ケンワージー選手は米国に連れて帰ることにした4匹の子犬とその母親のために、2日間を犬小屋とリードの購入に費やした。犬たちを選手村に連れ帰ることはできないため、犬たちの棲家となっていたメディアセンターのそばにある警備テントに、ケンワージー選手は毎日通った。
ケンワージー選手は「試合の準備をしようとするとき、犬たちは良い気晴らしになる。余計なことを考えずに済むんだ」。毛色が黒と茶で耳の垂れた子犬たちが自分の膝の上でからだを寄せ合う4匹の子犬の写真をツイッターに投稿し「僕のお気に入りなんだよ」と紹介したところ、ポップスターのマイリー・サイラスさんも「@guskenworthyをフォローすべき4つの理由」というコメントと共にリツイートした。
米国の男子アイスホッケーチームには、北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)で億単位の年棒を稼ぐ屈強な男たちがたくさんいるが、彼らもソチの子犬たちには弱い。ゴールキーパーのライアン・ミラー選手がNHL選手協会の小屋の外で横たわる茶色の耳と黒のぶちが特徴的な白い犬が写っていた。ミラー選手は「家族のホテルマスコット!」というコメントを添え、「2匹の野良犬は風呂に入り、他の選手たちに引き取られたという。
アエロフロート航空はソチの野良犬を無料で米国に運ぶことを申し出たという噂が広まったが、同社によると、米国への空輸の問い合わせがあったのは大会終了までに10匹ほどだそうだ。
それにしてもソチにはどうしてこんなに野良犬が多いのか。大会前にソチ市は2000匹を処分したと言われている。また、市の担当者が「野良犬はただのゴミ」と発言するなど、野良犬は非常に危うい立場に置かれていたのだ。ロシアでは何事も完璧には物事ははかどらないため、なお2000匹のワン公がの残されたということらしい。