都庁詰めの新聞記者は何をしていたのか

「日本で一番セコい男」がついに辞職した。各紙辞任に至る最後の場面の報道に忙しい。「世論の力が辞職に追い込んだ」と書いているが、何をいまさら。

「不徳の致すところ」と辞職の挨拶を終え、頭を下げる舛添都知事

「不徳の致すところ」と辞職の挨拶を終え、頭を下げる舛添都知事

日経新聞によると、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックを花道に、9月議会で辞職する案がささやかれていた。自民党幹部との「密約」もあったらしい。辞職願に日付を入れず、都議会議長預かりとする落としどころを探ったが、調整は不調に終わった。

最後のとどめを刺したのは安倍首相の電話だった。「むしろ混乱は深まっている。最後は政治家として自ら退く判断をしてほしい」。自民党都連が会合を開いた15日朝、首相は舛添氏に電話で自ら辞職するよう伝えた。なおしぶる舛添氏に「いま退けばまだ再起の芽はあるかもしれないから」と語気を強めた。これで万事休した。

それにしても都庁詰めの記者は何をしていたのか。多くは社会部のデスククラスがキャップを務めているが、伏魔殿と言われた時代から知事と差しで飲むくらいの古手が大きな顔をしていた。これは輪転機を置く印刷工場や配送場所を確保するのに都有地をもらう必要があったためである。本社用地は田中角栄が仕切って国有地を払い下げてもらったが、こまごまとした物件は都有地が多かった。

都庁幹部の人事権までいじる記者もいた。時代は変わったと言え、週末公用車でどこへ行くか、知事以下20人を超える豪華海外視察団が何をしているか、知事が引き込んだ「怪しの人物」さえ知っていたであろう。でも何も書かなかった。書いたのは、都庁詰めの記者を取材源にした週刊文春である。

舛添要一都知事が公費の使い方で批判されているとき、大阪府知事でもあった橋下徹前大阪市長が公式メールマガジンで「いま権力監視ができるのは文春、新潮ぐらいじゃないか」と言っていたが、そのとおりである。

加えて、ワイドショーを中心にした番組作りのいい加減さ。朝刊をみて目星をつけたテーマの取材に取り掛かるが、新しい取材などなくて単に「絵にする」作業だけである。レポーターが現場から中継している内容も、キャスターとコメンテーターがいうこともみな新聞の二番煎じである。朝にしろ昼にしろワイドショーなど一見の価値もないから、どんどん視聴率は落ちる。

新聞社はテレビ局に取材の二次利用料金を請求してもよさそうだが、やらないのは、テレビ局が新聞社のダミーだからである。親方の新聞社の記事引用を装っているから無料である。ところがそんな風潮に風穴を開ける出来事が起きた。

「週刊文春」(文藝春秋)、「週刊新潮」(新潮社)がテレビ界に対して、誌面の流用に二次使用料を請求し始めたのである。情報番組のテレビプロデューサーによると「先ごろ文春は番組で誌面を使う場合、3万円の使用料請求を決めました。その後、後に続くようにして新潮も5万円の使用料を通達してきた」という。

金額は小さいがじわりボデーブローのように効いてくるはずである。これで新聞社側も請求するようになればワイドショーなど一瞬にして壊滅するだろう。

スクープを連発する週刊誌を傍観しているだけの新聞記者などいらない。今回の舛添報道をみていると、これまで下に見ていた雑誌協会に後れを取った記者クラブの「カエルの面にナントカ」が気にくわない。

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