佐賀県の教育情報システムから県立高校などの生徒ら1万人超の成績表な どが流出した事件で、警視庁は27日、佐賀市の無職少年(17)を不正アク セス禁止法違反容疑で再逮捕した。 文部科学省の担当者は「ICT(情報通信技術)化が最も進んでいる佐賀県のシステムが破られたとショックを受けている。
少年のパソコンからは流出したファイル約21万件が見つかり、公教育では 過去最大規模の情報流出となる。少年は今年1月16~18日頃、自宅から2回にわたり、他の 生徒2人分のIDとパスワードを使って同県教育庁のシステム 「SEI―Net(セイネット)」に不正ログインした上、自ら開発した サイバー攻撃用のプログラムでシステムの弱点を突き、生徒の個人情報が 記録されたデータベースに不正接続した疑い。
入手した情報の一部は、無料アップロードサイトに投稿し、小学校時代の友人ら数人でつくる「情報収集会議」と称するグループで共有していた。合同捜査本部は、少年に手口を聞いて同じシステムに侵入したメンバーの高校2年の男子生徒(16)も、不正アクセス禁止法違反容疑で書類送検した。
少年は先に、有料デジタル放送の視聴に必要な「BーCASカード」を使わずにパソコンで無料視聴できるプログラムを開発してネット上で公開したとして、同課が今月6日に不正競争防止法違反容疑で逮捕されていた。
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ブログ子がいる八ケ岳の自然郷1300戸はIT技術に疎い村役場と、事の重大性に気づかなかった管理会社の「IT無策」のおかげで地デジから取り残され難視聴地区になっている。「BーCASカード」で衛星放送から電波を受信できれば一挙に解決するのだが、それには暗号を解除せねばならない。これは違法なので控えているが、この少年に突破口を教えてもらいたいくらいである。
知らない人はこの少年は優れた偏差値の持ち主で天才のように思うかもしれないが、そうではない。新聞記者生活の後半10年ほど新聞社のコンピューター部門の責任者であり、システム開発会社の社長も4年ほど務めたので多少プログラミングのことがわかる。社内にはプログラマーやSE(システムエンジニア)がたくさんいて、複雑なシステムの構築を時には半年がかりで取り組んでいた。
その作業を身近にみていたが、プログラムはアルファベットと数字と記号で成り立っている。ときどき英語でコマンドという命令言語がでてくる。インターネットは2進法で成り立っているから「・・・せよ」という命令を書き込むにしても恐ろしく長い「アルファベットと数字と記号」が並ぶ。文科系の人間、とくに文章を作ることを仕事にしている人間には耐えられない、異種の言語である。
ところが、世の中にはこういうプログラム言語を得意にする人間が存在する、今回逮捕された少年のように。なにも大学教育を必要としない。少年も高校には行かず独学でプログラムとハッカー技術を身に着けたようだ。逮捕の罪名はおどろおどろしいが、仲間内でハッカー技術を自慢しあっていた程度のようである。特段に犯罪に手を染めていたわけではない。
社会はこうした少年を「有用に」使うことを考えるべきではないか。警視庁や政府の情報調査室、防衛省の情報部署など殺到するサイバー攻撃から国と社会を守る人材にうってつけである。
中国の航空機、ロケット技術、艦艇製造、北朝鮮のミサイル技術、独自で開発するよりサイバー攻撃で相手国に潜り込んでは盗み出した技術で成り立っている国はこうした「英才」の発掘に力を入れてきた。一から作り出すよりサイバー攻撃で手っ取り早く手に入れたほうがはるかに安上がりであるから、今後も増えることはあっても減ることはない分野なのである。