豊洲市場問題で「群盲象を撫でる」者たち

築82年と老朽化の激しい築地市場の移転問題は、30年近い調整を経て豊洲新市場に移転を果たすはずが、都政の手続き論や土壌汚染問題など今や「氷漬け」状態だ。テレビや新聞の報道ぶりを見ていると、どうも的違いの方向に論点が行っているとしか思えない。

豊洲市場の建物としての安全性などを検証する「市場問題プロジェクトチーム(PT)」の第2回会合(10月25日)で、設計を行った「日建設計」が安全性について説明した。その結果、PTとして、建物の床の厚さや積載荷重に問題はないとの判断を示した。地下空間を設けたことによる耐震性についても法的に問題ないとした。本来「150ミリ」を前提に耐震性などを計算するところが誤って「10ミリ」で計算されていたものの、実際にはきちんと150ミリで建設されていたという。建築士ならイロハのイの構造計算で問題がないのならどうということないではないか。

おかしなことに、反対派らしい建築関係者がまくし立てていたが、模型を持ち込み、地下のコンクリート枠を外してみせてグラグラするところを、「豆腐の上に建てるようなもの」と言っていたが、構造を勉強した者ならこんな正反対の結論が出るはずがない。なにか恣意的につぶそうとしている者がいるようだ。

toyosu-chika次に、地下空間にたまった水の問題だ。、共産党都議団が行った豊洲新市場地下の水質検査(10月14日)では、「ヒ素が検出された」と大騒ぎして見せていたが、その量たるや「基準値の10分の1」にも満たない、どこでもそれくらいの数値であることには口をつぐんでいた。また「強アルカリ性反応」が出たと驚いて見せていたが、コンクリートがそもそもアルカリ性であり、水に接すると石灰分が溶解し、水もアルカリ性になるのは当たり前の話である。

ヒ素や鉛も極めて厳格すぎるぐらいの環境規制をさらに下回るもので、シアン化合物も検査方法が不十分なもので、要するに豊洲市場は、健康に影響のない汚染レベルにまで改善しているのである。左翼が国会で騒いでいた「戦争法案」と同じレベルのプロパガンダに全国紙やテレビ局が乗っかって騒いだら、豊洲の魚は、放射性物質の影響がないのに風評被害に遭った福島の魚と同じ道を歩むのではないか。

一方、豊洲市場の施設の下に盛り土がなかったことでの都の行政としての責任問題は別である。「いつ」「誰が」が特定され、 「(責任者も経緯も特定できない)空気のような問題から、かなり絞り込めた」と1日の記者会見で、小池百合子知事は市場長ら8人の責任を問うという。

都が1日に公表した第2次自己検証報告書によると、2009年2月、都は敷地全面に盛り土をする整備方針を機関決定。しかし、豊洲市場の整備を担当する新市場整備部は、10年11月から始めた建物の設計づくりの段階から、建物下に盛り土をしないことを前提に作業を進めていた。

背景について報告書は、国が進めていた土壌汚染対策法の改正に「市場当局が神経をとがらせていた」と指摘。将来的に汚染土壌が見つかり、同法での対応が求められた場合に備え、重機などを搬入するモニタリング空間を地下につくる基本認識が生まれたとした。報告書は、同部が都の整備方針を覆す独自の決定をした「場」を11年8月の部課長会だったと特定。関係者証言から、会議を主催した新市場整備部長がモニタリング用の地下空間の設置を部の方針として確認したと認定した。
部長は「(モニタリング空間を)つくらないのはダメだと言っただけ」と反論しているが、報告書は「方針の遵守や上司への報告・説明、(有識者による)技術会議などに確認するべき立場にあったが職責を全うしていない」と断じた。

それならそれで、もっともな理屈である。盛り土や耐震能力への知識もなく、大規模建築物を設計した経験もない自称有識者によって「盛り土」が提起された。それを技術的に、また将来の法令順守からみて都庁の技術屋が是正した。これなら至極当然のことだ。ただ「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を怠ったのは落ち度だから、これだけを処分すればよいことだ。

plt16081620300002-p1

移転反対派が煽っている、汚染や耐震性能の不足などの問題は、科学的知識があれば上述のように簡単に崩れ去る程度の問題だ。メディアが一緒になって煽るようなことではない。移転が遅れれば一日何百万円も補償などで消えていく。御覧のように建物はほとんど出来上がっている。さっさと移転を進めることだ。

コメントは受け付けていません。