東日本大震災の津波で児童、教職員計84人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族19家族が市と県を相手取り約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁(高宮健二裁判長)は10月26日、学校側の過失を一部認め、14億2658万円の支払いを命じた。
この判決で敗訴した石巻市と宮城県は相次いで控訴することを決めたが、これに対して原告側弁護士と遺族たちは「控訴するな」猛反発して、遺児の顔写真やプラカードを掲げて県や市に押しかけている。遺族側が感情的なのは理解するが、日本が参審制の国であることを一番知っている弁護士が法制度を無視するこうした行動は許されるものではない。
判決は、現場にいた教師たちは津波襲来によって「児童に危険が生じることを予見したと認められる」とした。その一方で、事前に危機管理マニュアルで避難場所や方法・手順を明記していなかった安全対策の不備や、当時不在だった校長、唯一の生存教諭らが被災後に救命救助を要請しなかったことなど、市教委と学校の事後対応に関しては注意義務違反を認めなかった。
宮城県の村井嘉浩知事は判決に対して、「知りうる情報をもって最大(限)の選択をした。(判決は)教員の責任を重くしてしまっている」と批判。広報車の情報だけを理由に予見できたと認定したのは過去の津波訴訟判決と整合性がとれない点などを挙げ、「亡くなった児童の命も地域住民や教職員の命もその重さに変わりはない。児童らを救おうとした教職員を一方的に断罪することは受け入れられない」と述べた。 また判決が「教員は避難してきた地域住民に対する責任を負わない」と指摘したことについても、「児童と住民全員を安全に避難させようとしたはずの努力を否定したものだ控訴した理由を語っているが、その通りである。
大川小の全校児童108人のうち児童74人が死亡・行方不明となった。これほど悲惨な学校災害はない。しかし、地震発生後、約50分間校庭で待機した後、校庭より約6メートル高い北上川に架かる橋のたもとへ避難を始め、津波にのまれた。なぜすぐそばの裏山に逃げなかったのか、謎は多い。解明を待つ意味で控訴する意味はある。
74人の遺族のうち訴訟に加わったのは23人だという点でも、多くの遺族には葛藤があったのだと思う。遺族の一人が「まるで亡くなった先生たちだけに罪を押し付け、ほかの人には責任がないみたいな判決です」 とつぶやいたという。なおさら、控訴する意味がある。