トランプショックで株は1000円も安くなり、為替も1ドル=105円台の円安になったが、一夜明ければ、もとに戻った。「トランプでもなんとかなるさ」と落ち着きを取り戻したのだ。
大方の人はクリントンが競り勝つとみていたと思う。前日、ワシントンにいる友人からメールが来た。「永いアメリカ生活で何が起こっているのか大体の見当は付けられるようになった。DTのような人が共和党の候補者になり、上院議員さらには閣僚の一員として永い間ワシントンにいた新鮮味のないHCが民主党の候補者になった。どちらもアメリカに夢を持たせる人ではないのが残念だ。どもどちらかよいかとなると躊躇なくHCを選ぶ。選挙結果もそうなると思う」
50年余アメリカに暮らし世銀の幹部や日本の大学教授も務めた人でもこうである。ブログ子もネットでABCの速報を見ながらそうなるだろうと思った。アレ?と思い始めたのは、オハイオで、ついでフロリダでトランプが勝ったあたりからである。
実は我が家に届いていたのは圧倒的トランプ・フィーバーだった。義兄がテネシー州・ナッシュビルにあるタイヤメーカーの社長をしていた縁で、家内ともどもこの地を訪ねたことがあり、親しくしている牧場の女主人や有名なバンダービルト大学の関係者などから帰国後も声が届くのだが、「ヒラリー大っ嫌い!」「オバマ消えろ」というのばかりだった。保守的な南部7州で共和党の牙城ゆえ、アメリカの「一部の」政治潮流だだとばかり思っていた。アメリカの本流とはとても思えなかったのである。
メディアは分析に忙しいが、朝日新聞は「白人層の怒り・疎外感…『異端』トランプ氏を押し上げる」と題して「米国社会の底流にマグマのようにくすぶっていた既成政治への怒りが、ドナルド・トランプ氏を大統領の座にまで押し上げた。有権者の反乱とも言える動きの主役となったのは、政治に置き去りにされ、中流層から落ちこぼれる不安を抱えた白人たちだった」と書く。
はたしてそうだったか。ワシントン支局で机の上で書いているような気がしてならない。上のテネシーの例で分かるようにけっして「プア・ホワイト」(貧しい白人)ばかりがトランプを押し上げたのではない。豊かな人やインテリもトランプ支持に回ったのだ。
思うに、アメリカを牛耳っている東部エスタブリッシュメント、特に弁護士や医者やエリートが人権やグローバリズムでアメリカをひっかきまわしていることへの反感だったのだと思う。その代表格のヒラリーや、クリントン前大統領、オバマ現大統領への虫唾が走る思いがトランプをホワイトハウスへ押し上げたのだ。
それにしても安倍首相の反応は早かった。安倍首相は10日午前、米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ次期大統領と電話で約20分間会談し、17日にニューヨークで会談する方向で一致した。トランプ政権の中枢と人脈をつくるため「特使」を出発させた。いずれもこれまでの日本政府にない即決の対応だ。
翻って、国会はどうか。TPP法案についてどうせ反古になるなるものを通す必要があるのかと野党はごねている。挙句、山本有二農水相の不信任案を民進党など4党共同で出すのだそうだ。世界を見通す展望というものがまるでない。民主党政権でなくてよかったとつくづく思う。
電話会談で首相は「米国がより一層偉大な国になることを確信する」と祝意を伝えたのに対し、トランプ氏は謝意を示したうえで「安倍首相の今日までの経済政策の業績を高く評価している。今後数年間、ともに働くことを楽しみにしている。日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化していきたい」と語った。レームダックの韓国大統領にも「米韓同盟は強化する」と太鼓判を押した。
案ずるより産むがやすし、トランプでもなんとかなるのである。