馬術のイメージを貶めた韓国の占い師の娘

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)容疑者(60)の国政介入疑惑。歴代大統領の先例にならって悲惨な末路は避けられそうにない。とりわけ100万人が参加したともされるデモに若者らを駆り立てたのは崔容疑者の娘、鄭(チョン・ユラ氏(20)への特別待遇疑惑だという。

「金も実力のうち」との給うて話題のチョン・ユラ嬢(ネットから)。新旧違いすぎるのは韓国では普通の整形か。

「金も実力のうち」との給うて話題のチョン・ユラ嬢(ネットから)。新旧違いすぎるのは韓国では普通の整形か。

それにしても品のない母娘である。出欠などで不正があったとして高校卒業資格の取り消しを16日に発表したソウル市教育庁幹部は 「崔容疑者は教育にも介入し、教壇をむちゃくちゃにした」と怒りをあらわにした。高校3年当時、17日しか出席していないのに、乗馬大会への出場などと偽って141日間が公欠扱いになっていた。崔容疑者が教師に現金を手渡したり、欠席の多さを指摘した教師に「お前なんて教育相に言って代えてもらえる」と罵声を浴びせたこともあったという。

母がそうなら娘の方もひどいもので、フェイスブックに「能力がないならお前の両親を恨め。私の親のことでつべこべいうな。金も実力だよ」と書き込んだ。馬術の特待生として梨花女子大に裏口入学したが、名門の女子大自体、娘の受験ではじめて特待生枠に馬術を加えるというインチキぶりだ。入学後も、ドイツで乗馬訓練を受けているといって一度も出席せず、本来なら留年なのに、担当教授が代わりにレポートを書いてやって黙って単位を与え進級させていた。

馬術は金がかかるものーというイメージを広めてくれた娘の乗馬姿

馬術は金がかかるものーというイメージを広めてくれた娘の乗馬姿

金をめぐる話もひどいものだ。崔順実容疑者は自分の娘を2020年東京五輪に出場させようとたくらみ、財閥サムソンを巻き込み「第二のキム・ヨナとして育てる」特別強化プロジェクトを立ち上げた。仁川アジア大会で娘が団体戦で金メダルを取った直後、サムスンは14年10月に大韓乗馬協会を通じて「800億ウォン(約72億円)プロジェクト」と称してトレーニングや五輪出場支援体制を特別に組んでいた。その大韓乗馬協会会長にはサムスン電子の社長が就任していたというからとんでもない出来レースである。

サムスンから資金を受け取ったビデク・スポーツは、崔順実容疑者と娘が株式の100%を持つ会社だ。実際には社員1人だけの会社で、その1人というのは娘の乗馬コーチだという。あちこちから出させた金で馬術一筋というのならまだしも、2014年以降一度も馬には乗ってない。それもそのはずで、2015年6月ドイツで男児を出産していて、相手の名前は出していないが入籍しているという。とても馬術を続けられる体ではない。

ソウルで行われた大規模デモでは「朴大統領は辞めろ」のシュプレヒコールがとどろいたが、韓国紙、中央日報のコラムによると、若い人が怒りの声を挙げたのは「鄭ユラ氏の『特恵人生』に向かった怒りが朴大統領に対するもの以上だった」と書いている。デモには、多くの高校生らも参加し「努力すれば報われると教わってきたが、ユラ氏を見れば、虚脱感を覚える」などと口々に怒りを表したという。

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ブログ子は学生時代馬術部にいた。昨日も幹事をしているOB会の集まりに出たばかりだが、この母と娘には韓国の若者以上に腹が立つ。馬術が金まみれのスポーツとみられることにやりきれない思いだ。札幌で4年間馬に乗ったが、なにしろ金のない国立大学だから部費は月額300円だった。その代り青草刈りや部の運営費稼ぎのアルバイトにかなりの時間を費やした。

確かに現在オリンピックの馬術は金がかかりすぎる。我が大学馬術部からは東京五輪の馬術代表選手を出したが、国やJRAなどからの金銭的援助がなければとても馬など買えないのが実情だ。

五輪での馬術競技は馬場馬術、障碍飛越、総合馬術がある。馬場馬術は馬の調教ぶりが審査されるもので、フィギアスケートの「規定」と似ている。日本では五輪のたびに”高齢選手の星”とメディアに登場する法華津寛選手の出場枠と同じだ。年齢、男女の別がない馬術なので、チョン・ユラ氏はもし五輪に出たら(もう不可能だが)法華津選手と同じ試合場になるのだが、飛越競技の馬より調教の程度が高いものを要求されるので馬の値段がグンと高い。彼女は17億~18億ウォン(約1億5000万~1億6000万円)の馬を何頭も購入していた。韓国の馬術レベルは国際的には低いが、乗用馬の価格はアジア大会レベルで7億ウォン台、五輪レベルで20億ウォン台とされる。

法華津選手はリオ五輪を欠場したが馬はニュージーランドで2、3000万円で買い、ドイツで繋養させて、本人もほとんどドイツに住んで試合に出ている。チョン・ユラ氏もドイツ暮らしをしている。なぜそうなるのか。

馬術は軍用の騎兵から始まった。このためドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国などが今なお競技の主流を占めていて、彼らの都合の良いようにルールを改正して、五輪出場もポイント制をとっていて、高得点を持ってないと出場できない。そのポイントをとる競技会がほとんど上述の国々で開催されているので、ヨーロッパに拠点を置かざるを得ないのだ。だから金がかかる。

オリンピックの掉尾を飾る競技として大賞典障碍飛越競技がメインスタジアムで行われるのが恒例だったが、今では姿を消した。競技場が蹄(ひづめ)で荒れるのとすぐあとに閉会式の準備が差し迫っていることが要因だが、航空機で馬を運ぶ手間や金、世界的に馬術をする国が少ないこと、などからどんどんオリンピックのお荷物になってきているのである。馬術に親しんだ者として残念でならない。

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