ブログ子も新聞社にいたからよくわかるのだが、ほかの新聞がかかわることはあまり報道しない。互いに相談したわけでもなく、遠慮してのことでもなく、まして日ごろ「正義の味方」を振りかざしている手前、明日は我が身と恐縮してということでもない。まあ暗黙の了解事項といおうか。しかし、これはよくない。今回も朝日新聞がまたも誤報をやらかしたことが、最高裁判決で確定したのだからきちんと報道すべきだろうに、今回も当事者の読売新聞でしかわからないというのは褒められたことではない。
朝日新聞は2012年3月15日の朝刊1面と社会面で、巨人軍が1997~2004年度に6選手と、当時のプロ野球界の申し合わせ(最高標準額)を計27億円超過する計36億円の契約金で入団契約を結んでいたなどと報道。翌16日朝刊2面には、「臭いものにふた 続く不正」などの見出しで、巨人軍を非難する編集委員の署名記事も掲載した。
これに対し巨人軍は朝日新聞社に損害賠償などを求めた訴訟を起こした。 1審・東京地裁判決は、記事が真実だったとして巨人軍の請求を棄却したが、今年6月の高裁判決では、朝日記事では、巨人軍の一部選手との契約は、球界を統括する日本野球機構(NPB)から「厳重注意処分」を受けるような非難されるべき行為だったと報じているが、12球団の申し合わせを踏まえて導入された出来高払いを制度化したものであり、「NPBから処分を受ける可能性はなく、記事は真実ではない」と判断した。
双方が上告した最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は24日付の決定で、上告を退け、名誉毀損の成立を認め、朝日新聞社に330万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決が確定した。 さらに、朝日新聞記者がNPB関係者に裏付け取材をせずに、「大幅な申し合わせの超過は許されない」と誤解したまま記事を書いているとし、編集委員の記事と合わせて巨人軍の名誉を毀損したと結論づけた。
これを受けて読売巨人軍は「朝日新聞が必要な取材もせずに報道した記事により、当球団の名誉が毀損されたと認定した判決が、最高裁で確定したことは妥当だと考えます。当球団は、記事を真実と誤って認定した朝日新聞の『報道と人権委員会』に、見解の見直しを求めます」というコメントを出した。
これについての朝日新聞のコメントが驚くべきものだ。
朝日新聞社広報部の話「巨人軍が6選手と最高標準額を大幅に上回る契約金を支払う契約を結んでいた、とする記事の根幹部分は真実だと認められた、と受けとめています」
いやはや大した開き直りである。こうした強気のもととなっているのが、朝日の「報道と人権委員会」 (人権委)なるものである。この「誤報記事」ではこの人権委が朝日の誤報を追認する「見解」を出している。契約金報道では、巨人軍と選手4人が12年4月、記事の是正を人権委に申し立てた。しかし、3か月もたたずに「記事は、すべて真実である」との「見解」を出した。
人権委は、朝日新聞が2001年に設立した第三者機関で、現在は、憲法学者の長谷部恭男・早大教授や元最高裁判事の宮川光治弁護士ら3人がメンバー。10年12月の朝日新聞記事では、人権委について「第三者の公平な視点で報道内容を検証」などとアピールし、当時の委員の一人は「法廷で争われる場合よりも、もっと取材や報道の中身に切り込んでいる」と自負していた。(読売報道)
この人権委の「見解」が裁判では「全くの誤り」とされたのだから、さっそく人権委を再開させてお詫びでもするのかと思ったら、今なお再審査の手続きは設けられていないという。 人権委事務局は読売の取材に対し、「必要な調査、審理を尽くした上で、 (12年の)見解をまとめている」とコメントした。
腹に据えかねた読売新聞は社会面でこの人権委なるものについて、疑問を呈している。
「人権委は報道被害の救済を目的に設置されたはずなのに、被害者側の主張を無し、朝日の言い分だけに依拠して記事を追認した。第三者機関の機能を果たしておらず、救済どころか、報道被害を拡大させたと言わざるを得ない。朝日記事が名誉毀損に当たるという司法判断が確定した以上、再検証を行い誤りを正すことでしか、第三者機関としての信頼回復の道はないずだ」
全くその通りである。これまでの朝日の誤報は目に余る。詐話師、吉田清治による「慰安婦の強制連行報道」や福島原発で作業員が命令に違反して撤退と報じた「吉田調書」誤報問題・・・取り消しても取り消しても続発する朝日の誤報。ほかのメディアは今回の読売巨人軍の裁判勝利と朝日の体質をもっと報道すべきではないのか。