稀勢の里、四字熟語使わなかっただけ上出来

過去の横綱の口上

過去の横綱の口上

稀勢の里が25日、大相撲の横綱に昇進した。ブログ子はもう一場所様子を見てからのほうがよかったと思うが、どうしても19年ぶりの日本人横綱を誕生させたかった日本相撲協会の思いが勝った。琴奨菊が昨年初場所で14勝1敗で初優勝、10年ぶりの日本人力士の優勝と大喜びして大関にしたものの、本人が浮かれすぎて奥さんとのアツアツぶりや連日のパーティーぶりが報道されたとおもったら、今場所関脇に陥落である
なったものは仕方がないが、稀勢の里をほめるとしたら、口上が 「横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」と至ってシンプル、過去の横綱が身につかぬ「四文字熟語」を口にする「悪弊」から抜け出したことだろうか。

息子2人の横綱昇進時に「四文字熟語」を連発させ、マスコミが毎回取り上げるようになったのは先代若乃花が花籠部屋から分家独立して二子山部屋を創設した時からである。マスコミ受けを意識して「絵になるような」「テレビ受けするような」企画をつぎつぎ打ち出した。その一つが「四文字熟語」である。

最初の伝達式は、41代横綱千代の山が昇進した1951(昭和26)年だが、当時はいたってシンプルで「横綱の名を汚さぬよう、これからも一生懸命稽古し、努力します」(61代横綱北勝海)と述べるにとどまっていた。それが二子山部屋全盛時代の94年
以降、貴乃花が大関昇進時の「不撓不屈(ふとうふくつ)」に加えて「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」。以後は「堅忍不抜(けんにんふばつ)」(若乃花)、それ以降も右に倣えで「精神一到」(白鵬)、「全身全霊」(日馬富士)といった具合だ。

身についたものならいいが親方や漢文に通じた後援会関係者から教わった一夜漬けだから本人にとっては上の空。曙のときなど「横綱のナニを汚さぬよう」とか言ってみんな笑いこらえてたし、三代目若乃花のように堅忍不抜を「けんしんふばつ」と言い間違えた。

大相撲報道に半世紀以上携わってきた元NHKアナウンサーの杉山邦博さん(86)は「難解な四字熟語をあたかも座右の銘のように引用するのは、個人的には好きじゃない」という。稀勢の里が四字熟語を使わないことは確信していたといい、「不器用な人物像がよく表れていた。力士の原点に返るような口上を述べた彼に、拍手を送りたい」。

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