盗っ人猛々しいにもほどがある

観音寺の長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」

観音寺の長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」

長崎県対馬市の観音寺から2012年10月に盗まれ、その後、韓国で発見された県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」の所有権を主張する韓国の寺が、像の引き渡しを韓国政府に求めていた訴訟で、大田地裁は26日、像を韓国の寺に引き渡すよう命じる判決を言い渡した。

引き渡しを求めていたのは、韓国中部・瑞山(ソサン)にある浮石(プソク)寺。この寺は仏像が14世紀の高麗時代に同寺で作られ、倭寇に略奪されたと主張していた。寺で作られたという根拠など皆無にもかかわらず、地裁は「仏像が作られた後、浮石寺がある地域に倭寇が5回侵入したとの記録がある」ことを根拠に浮石寺への引き渡しを命じた。

仏像を盗み韓国に持ち込んだ男らは韓国で起訴されている。韓国の司法が犯罪行為と認めた泥棒行為を、今回の判決では正当化している。「歴史問題を絡めれば日本には何をやっても許される」といった世論に迎合したものだ。

菅義偉官房長官は26日午前の記者会見で、「極めて残念だ。速やかに仏像が日本に返還されるよう、韓国政府側に適切な対応を求めていきたい」と述べ、韓国政府も即日控訴した。

判決に勝ち誇る韓国の寺の住職と支持者たちょ

判決に勝ち誇る韓国の寺の住職と支持者たち

あきれた裁判である。韓国の司法の後進性は、先に産経の加藤達也支局長が朴槿恵大統領の空白の7時間を報じた記事を起訴したことにも表れているが、上級審で完全に敗訴し、少しは懲りたかと思ったが、全然体質が変わっていない。

少しまともに考えれば、この事件では、韓国政府の海外文化財返還公式窓口である「国外所在文化財財団」の理事長が「文化財と関連した不法行為は容認してはならない。浮石寺の仏像の場合、日本に戻すのが正しい」と語っている(2014年4月)。このあたりまではまだ「まとも」だった。

にも関わらず、大田地裁の文(ムン)宝頃(ボギョン)裁判長は「略奪や盗難で対馬に渡ったとみるのが妥当」と数百年前の出来事を見てきたかのように断じ、「浮石寺の所有と十分に推定できる」とした。同じ大田地裁が、仏像窃盗団に有罪判決を出しながら、返還は認めないという非常識な司法判断だ。巷間「泥棒にも三分の理」という。だが、裁判所が率先して屁理屈を並べて「三分の理」を認めてどうする。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の文化財不法輸出入等禁止条約では、盗難文化財の原則返還を定める。日韓はともに、同条約の批准国だ。二重三重に「国際常識・一般常識」と相いれない、ルーピーな判決なのだ。

日ごろ、従軍慰安婦の嘘をまき散らした朝日新聞と同一論調をとる毎日新聞ですら「日本側の我慢は限界に来ている」と対馬の悩みとともに以下のように報じている。

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今年1月21、22日に行った世論調査では、日本が韓国駐在大使を一時帰国させたことに、74%が「支持する」と回答した。ただ、対馬にとって韓国は、切っても切れない隣国だ。

長崎県によれば、平成27年に対馬に宿泊した韓国人は延べ22万人だった。島への全宿泊者延べ77万9千人の3割近くを占める。対馬の観光産業を、韓国人が支えているのは間違いない。

「仏像の件だけでなく、旅行客のマナーなどで不満は持っている。ただ、地理的にも歴史的にも切っても切れない関係だ。島でお金を落とすのであれば、それが誰でも歓迎する」。旅館を経営する男性は、こう語った。

島最大の夏祭り「対馬厳原港まつり」では、「朝鮮通信使行列」が行われる。仏像窃盗後の25年は取りやめたが、26年から再開した。祭りを主催する対馬厳原港まつり振興会の山本博己会長は「誤解されることも多いが、韓国をたたえるためのものではない。かつて対馬を治め、日本と朝鮮の仲立ちをした宗家の功績を振り返るものだ。判決を受けた対応は、仲間と話し合って決めたい」と語った。

国境の島の苦悩が、ここにある。対馬の仏像 原状回復が国際常識だ。(毎日新聞2017年1月27日 東京朝刊)

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