「音楽教室からも著作権料」とはあこぎが過ぎる

日本音楽著作権協会(JASRAC)が、来年1月からピアノやギターなどの音楽教室から楽曲の演奏に伴う著作権使用料の徴収を始めるという。

著作権料の正当な徴収というと、聞こえはよいが、膨れ上がった職員の給与と、文部省(文化庁)からの天下り役員の報酬に消えるだけで、著作権所有者への支払いは雀の涙という図式が見える。

ブログの亭主は40年ほど前に、当時虎の門にあった日本音楽著作権協会に日参して交渉にあたったが不愉快な思いしかない。

当時、加藤登紀子の「知床旅情」が大ヒットした。これに絡み、長調と短調の曲、それそれのヒット時期と景気の好不況との関連を調べた。「知床旅情」のような短調の曲が流行るときは世の中不況だということを縷々記事にした。編集局長賞をもらった。それはともかく、記事の中でこの歌の歌詞を紹介しようと思った。流行りたてで皆、歌詞を知らないからだ。

ニュースで歌詞を使用するときは使用料はいらないとされていたが、当時著作権という考えが広まってきていて、念のため日本音楽著作権協会に伺いを立てようと虎の門にあった協会を訪ねた。応対した係員のいうには「規定はないが新聞は1部につき1円もらう」という。タブロイド夕刊紙は爆発的にサラリーマンにヒットしていて数十万部出ていた。この理屈では数十万円払わねばならない。

なら、「ニュースの中で使うのだし、歌詞使用はアタマの2行程度にするから払わない」と言ったら、歌詞の引用がたとえ2行でも全体でも同じだという。そんなあほな、と思ったが間もなく輪転機が回るという時刻である。やむをえず30万円ほどにまけてもらったが、経理から大目玉を食らった。

JASRACによると、徴収の対象は、営利で生徒を募集している教室。支払い方法は、JASRACの管理楽曲を自由に利用できる包括利用許諾契約か、1曲ごとに支払う形態を選べる。包括利用許諾契約の使用料率は、業者の年間受講料収入の2・5%を検討している。今年7月までに「使用料規程」を文化庁に届ける方針という。包括利用許諾契約というのは現在NHKなど膨大に使用するところが採用している。零細な音楽教室に当てはまるわけがない。一曲ずつ課金するというのだがどうして調べるのか。また職員を雇わねばなるまい。いかにも役人が考えだしそうな、現実離れした方策だ。

「音楽教室の講師をしております。レッスンで生徒たちが弾く曲からもお金をとられるのであれば、もう現代の作曲家さんたちの曲は使いたいと思わなくなってしまいます。当然楽譜も買わないと思います」など批判や困惑の声が上がっているという。その通りだろう。

まともな意見の宇多田ヒカル

まともな意見の宇多田ヒカル

歌手の宇多田ヒカルさん(34)は、自身のツイッターを更新し、「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」と投稿した。まことに道理にかなった発言で、多くの作曲家、作詞家も共感しているのだが、これに対しても、JASRAC広報部は「多くのミュージシャンは信託契約を結んでJASRACに著作権を預けている。無料で使って、と声を上げただけでは、徴収を止めることはできない。信託契約を破棄する必要がある。」と杓子定規な返答だ。

2015年度のJASRAC徴収額は1116億円である。この原稿を書くので調べたら、虎の門にあったビルよりはるかに立派なビルを渋谷に建てている。人件費と天下り役員の退職金のために、零細な音楽教室をいじめるのはやめろ。

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