人間は無知、無能な存在と知りつつも

東日本大震災の3月11日前後のテレビ、新聞は見ないことにしていた。やたら情緒的なルポや「あの日生まれた赤ちゃんが3歳に」という報道を見ると、それがどうしたと言いたくなるだけだからだ。だからといって自分が新聞の編集者やテレビのディレクターだったらどうするかと問われるとそういい知恵も浮かばないのだが。

少し落ち着いたころなので、新聞テレビがはっきりいわないことを3つほど「断言」しよう。

大川小学校の悲劇は無能な教頭の優柔不断が招いた
1Z20140310GZ0JPG0007330010010日、宮城県石巻市立大川小の児童・教職員計84人が津波で死亡、行方不明になったのは学校側が高台に避難させるといった安全配慮義務を果たさなかったためだとして児童23人の遺族が、石巻市と宮城県を相手取り1人当たり1億円、計23億円の損害賠償を求め仙台地裁に提訴した。

大川小のケースはかなり検証が進んでいるが、「人災」と断言していい。この学校では地震直後、大津波警報や保護者らからの情報で津波が到来する危険を予見できたのに、しかもすぐそばに裏山があったのに、津波が来るまでの50分間、児童らを校庭に待機させた。この間、教師や児童の何人かは「裏山に逃げよう」と叫んだのに教頭はなぜが無視、挙句、裏山とは逆の橋のたもとに誘導して津波にのまれた。

多くのメデイアは断言を避け、「謎の行動」などとお茶を濁しているが、リーダーが優柔不断で無能だったらこうなるという見本のようなケースである。今後裁判で明らかになるだろうが、海を知らない人たちだったのではないか。

現福島県知事にはリーダーシップがない
satou自民党福島県連は、今年秋の福島県知事選に「佐藤雄平現知事は原発事故対応へのリーダーシップが足りない」として独自候補を擁立する方針を決め、16日に開く県連定期大会に「知事選挙必勝のための特別決議案」を提出し、擁立作業を本格化させる、という。

ブログ子はかねてから問題視して再三批判記事を書いてきた。水戸黄門を気取って民主党の御意見番を標榜していた渡部恒三元顧問の秘書から民主党ブームで県知事になったのだが、親分ともども福島原発の誘致の旗振りを努め、東電からさまざまな資金を得ていたのに、原発事故が起きるや手のひら返したように批判の先頭に立った。

節操がないのは政治家の常だからそれはいいが、社長が直接県知事に謝りに来いとか、東電の原発対応がなってないとかばかり言い続け、挙句に政府には「自由に使える金3500億円が欲しい」と掛け合った人物である。地元福島の復興計画は一番遅れている。親戚が相馬市にいるが、壊滅した漁港一帯をふくめてどう青写真を引くのか未だに決まっていないし、県知事が乗り出したという話もないという。今福島に必要なのは「大風呂敷」と言われながら100年後の設計図を描いた後藤新平のような人物なのだ。

海が見えない大堤防を作ってなんとする
TKY201103190442東日本大震災の被災地で計画されている大防潮堤の建設について、安倍晋三首相夫人の昭恵さんが「きちんと精査して見直していただきたい」と、撤回を求めているという。すばらしい「内助の功」である。

被災地の沿岸に建設を予定している防潮堤は、総延長370キロメートルで、約8000億円の予算を手当てしている。過去に発生した津波の高さを痕跡高の調査や記録・文献などから整理し、想定される津波の水位を設定、さらにシミュレーションをかけて、地域ごとに一定のプラスアルファを加算して堤防の高さを決めた。

その結果、建設が決まっている漁港の中で、一番高い防潮堤は14.7メートルの高さがあり、当然内陸部から海は見えない。

震災後この手の話はもっともらしく地元要望としてまとめられる。それは大工事で地元の建設業が潤うからだ。しかも防潮堤を造る予算は復興予算が充てられるため、地元住民の負担はない。25兆円の復興予算は原則2015年度末までしか使えない。要求されると国側も「復興計画に水をさすのか」といわれることを恐れて黙認する。気仙沼市はこうして約65%が建設で合意している。

こんどの津波で既設の防潮堤はどうなったか。波の方向を少しは変えられて減災に役立ったところもあるが、「日本一」と自慢していた岩手県田老地区では巨大なエネルギーを前にして大半はバラバラに崩れた。自然に立ち向かうのはよしとしても、自然にはもっと従順でなければならない。100年に1度の津波としよう。99年は海も見えない漁師町でいいのか。

安倍晋三首相は10日午前の参院予算委員会で、巨大な防潮堤の建設計画について「景観も重要で、被災直後から住民の意識も変わってきた。今後、見直しを自治体と相談しながらやっていく必要がある」と表明した。馬鹿な計画はやめさせるべきなのだ。

コメントは受け付けていません。