イタリアの老舗ファッションブランド「ヴェルサーチ」が、18日、自社の製品に毛皮を使用するのをやめると発表した。ヴェルサーチは長年、様々な動物の毛皮を使った商品を発表・製作してきたところで、2016年のコレクションでも、ミンクの毛皮のコートを新作商品として発表していた。
同ブランドのクリエイティブ・ディレクターであるドナテラ・ヴェルサーチが、インタビューで「毛皮はもうやめる。ファッションのために動物を殺したくない。それが正しいことだと思えない」と答えた。
「ヴェルサーチ」ばかりではない。昨年10月には「グッチ」が毛皮廃止を宣言した。「今の時代、毛皮を使うことがモダンだと思いますか? そんな時代はもう終わったとしか思えないので、グッチはこれからも環境や動物のために最善を追い求めます」というのがコメントだった。
すでに「ステラ マッカートニー」をはじめ、「ジョルジオ・ アルマーニ」や「ヒューゴ・ボス」が毛皮の廃止を表明していて、ファッション界はすべて「動物愛護」の軍門に下ったことになる。
ブログ子が初めて毛皮反対の激しい行動を見たのは、フランス女優、ブリジット・バルドー(B・B)が映画祭で毛皮のコートを着て現れた女優に「やめろ、汚らわしい」と罵声を浴びせたシーンである。当時は正しいけど毛皮の女性にペンキをかけたり唾を吐きかける奇矯な行動としか映らなかったものだ。事実、現在もそうだが、ほとんどのロシア人の頭上にはシベリアなどで仕留めたキツネ、ミンクなどの毛皮の帽子が乗っかっている。これを止めさせるのは個人の行動では不可能としか思えなかった。
ところがブリジット・バルドー(1934年 9月28日生まれ84歳 )の行動は真剣だ。1973年 の『ドンファン 』を最後に新たな演技・歌手などの芸能活動から引退。その後は動物愛護運動家(特に毛皮 反対運動・犬 の愛護・保護)に徹する活動に。2000年1月26日にはフランスで動物保護団体 FBB(Fondation Brigitte Bardot)を組織して「毛皮は犯罪行為である」 とあらゆる団体、国家に噛みつき始めた。
●1999年、中国の江沢民 に宛てた手紙を書いた。内容は、中国で媚薬 のために熊や虎、サイが殺されており、それに抗議するというもの。
●2009年 、「カナダのアザラシ猟に対する抗議活動」として、カナダ産メイプルシロップ のボイコット運動を開始。
●過激な抗議活動で知られる反捕鯨団体「シーシェパード 」を全面支援。2011年11月15日には当時の野田佳彦総理宛に「日本政府に捕鯨廃止と、福島の立ち入り禁止区域に指定されている地域で放置されている動物への対処を求める」抗議文を送付。「絶滅の危機に瀕しているクジラを殺りくすることは、生物多様性に対する犯罪です」と述べ、「捕鯨に当てる予算を、震災被害の救済に使うべき」と主張。
●「今の時代は毛皮を着なきゃ!」と発言するタレント・神田うのに抗議文を送付。「あなたは、毛皮のために飼育されたり罠で捕えられたりした動物たちが耐え忍んでい る苦痛を是非とも認識されるべきです。飼育場では、無数の動物たちが、極端に小さ な金網の檻に閉じ込められ、その過密によるストレスを受けながら、過酷な生を送っ ています。彼らがそこから出るのはむごたらしく殺される時でしかありません。あなたは、単なる商売を理由に、この恥ずべき虐殺の支持者や加担者になってはなり ません。動物たちは人間の病的な欲望を満足さ せるために存在するのではありません。毛皮を着ることは犯罪行為です」。
抗議を受けたこれらの国、個人は無視を決め込んだが、B・Bの活動は全世界に広まっている。今年に入っても
●1月17日、スイス政府は、ロブスターなどの甲殻類を生きたまま熱湯に入れてゆでる調理法は、苦痛を与えるとして禁止する改正動物保護法を3月1日から施行することを明らかにした。
理由は「甲殻類は複雑な神経系を持ち、痛みに敏感」とする学説に基づき、提案された。食品安全獣医局は、電気ショックで気絶させて痛みを感じない状態にしたり、包丁を入れて素早く絶命させたりした後にゆでるよう指導している、輸送時に保存のため氷で冷やすことも禁じ、自然環境に近い状態を維持するよう求めている。
●3月12日、オランダではイスラム教やユダヤ教の信者が教義で、家畜の意識があるうちに食肉処理する手法に、家畜の意識を失わせてから処理することが義務づけられた。両宗教の団体は反発したが、動物愛護の世論に押し切られた。他の欧州の国でも、動物の権利と信教の自由を巡る論争が起きている。
とうとう全世界がブリジッド・バルドーの軍門に下った。