日本年金機構からデータ入力を委託されたシステム会社が中国の子会社に発注して間違ったのがけしからんと大騒ぎしている。500万人の個人情報が中国に渡ったと責任追及に躍起だ。
ブログ子は10年以上前になるが新聞社を退いた後システム開発会社の社長を3年ほどつとめた。すでに人件費が安い国への外注が常態化していたので、今回のことがそんなに大騒ぎすることか、不思議でならない。
日本年金機構は20日、年金データの入力を委託した東京都内の情報処理会社が、契約に反して中国の業者に作業をさせていたと発表した。他にも、入力ルールを守らなかったなどの契約違反も判明した。これを受け、政府は今月26日に予定していた年金情報とマイナンバーの連携の延期を決めた。
日本年金機構からデータ入力業務を委託され、契約に反して中国の業者に個人情報の入力業務を再委した情報処理会社「SAY企画」(東京都豊島区)の切田精一社長は再委託先について「入力量が多いので自分が役員を務める中国・大連にある会社と分担した。入力は読み仮名などの個人情報でマイナンバーなどは含まず契約違反とは 思わなかった」と釈明した。
システム業界ではこんなこと当たり前である。システムをいじる技術者の報酬はプログラマーなら月30万円、SE(システムエンジニア)なら50万円であろう。こういうレベルの技術者に入力業務をさせるのはペイしないから外注する。システム開発なら人件費が安いベトナム、インドであるが、単純な入力業務だけなら同じ漢字圏で文字がわかる中国へ外注するのはごく自然である。しかも社長が言うように読み仮名だけなら個人情報の漏洩などには当たらない。
自社だけで入力すれば600人が必要だが「SAY企画」にはその3分の1しかおらず再委託の場合は年金機構に通知する取り決めだったのにその報告を怠ったとか会社を責めるのに忙しいが、日本でやろうとすると人件費が高いからペイしないのは自明のことだ。年金機構にシステム業界の監督能力があるとは思えないから、後付けで偉そうに指弾しているのが滑稽だ。
はっきり言って中国人の入力業務がいい加減だっただけの話である。大連には人件費の安さ目当に日本企業が多数進出している。従業員は付近の農家の婦女子が主である。教育程度でいえば中学卒にも及ばないくらいだ。前後の脈絡など考えずエクセルの「縦の行だけ」打ち込む業務だろうから間違いも起こるのは当然である。いやなら日本人に入力させることだが、単価が上がる。
厚生労働省や年金機構は請負った業者の監督責任が及ばなかったと偉そうに謝罪会見を開いているが、そも発注の段階で「安かろう悪かろう」の結果が見えている。マイナンバー制度などその前から崩壊している。それだけの話である。