「広報」が一番やってはならない見本の「日大広報」

後手につぐ後手。日本大アメフット部の悪質タックル事件は対応のまずさが混乱に輪をかけているのだが、とどめの一発と言えるだろう。内田正人前監督(62)らによる23日の記者会見をめぐり、司会者だった日大広報職員の対応が「史上最悪の広報対応」として語り継がれる事態に。

ブログ子も中継を見たが笑ってしまった。というのも、10年以上前になるが航空会社の「非常時対応の広報の在り方」というのに招かれ成田で大勢の職員の前で話したことがある。そのとき自社便が墜落したという想定で壇上に上げた社長にメディアの質問というのをつぎつぎぶつけた。社員の前で答えに窮し、しどろもどろになる社長の姿を社員に見せたうえで、いかに応答がテレビの裏側に直結しているかを説き、「絶対にウソは言わない」などいくつか挙げた中で「メディアへの対応は理不尽であっても最後まで付き合う」ということを挙げた。

米倉久邦・日大広報部顧問

それと真逆のことが日大本部で繰り広げられたので、思い出し笑いをしたのだが、この最悪の広報は日大広報部顧問の米倉久邦氏(76)という。早稲田大学大学院卒後、共同通信社に入社。ワシントン特派員、経済部長、ニュースセンター長、論説委員長などを経て、NHK情報公開・個人情報保護審議委員も歴任した。 自然に関する見識を有し、「森」や「山」に関して著書が5冊。これまで出版した本のプロフィールには、「60歳の定年を機に百名山を踏破した男」と紹介されており、57歳で森林インストラクターの資格を取得、日本山岳会会員、森林インストラクター、東京スキー山岳会会員。

メディア広報対応の豊富な知識などが買われ、日大広報に就任したとされる。世間では新聞記者は広報マンに適しているという誤解があるようで、定年後いろんな企業の広報に招かれることが多い。この人も2000年に退職後10数年この職場に安住していて、多分今回が初めてその手腕を期待されての司会だったのだろうが、記者時代の高飛車な態度で取材にあたる癖が出た。悲惨な対応は次の通りだ。

会見では1時間が経過した頃から、複数の質問をする記者に「他にも手が挙がっているので、質問を続けないで」と牽制。1時間45分が経過したところで打ち切ろうとしたが「納得いかない」「まだ質問させろ」と一部報道陣から不満の声が挙がるなど収拾がつかない事態に。「みんな見ているんだ。あなたのせいで日大のブランドが落ちますよ」の“口撃”に「落ちません!」と即答で応酬した。さらに時間が経過すると、まだ多くの記者が質問しようと挙手しているにもかかわらず、「大体同じ質問が繰り返されているので、これで質問は終わり」「迷惑ですから」などと、何度も会見を切り上げようとした。

質問に答えようとする内田前監督の発言を遮って記者を制する光景もみられ、記者が「この会見をみんな見ている」と指摘すると、米倉氏は「見ても見てなくてもいいんですけど」。さらに「あなたの発言で日大のブランドが落ちる」と水を向けられると「いえ、落ちません」と言い放ち、会場からは失笑が漏れた。

会見後も司会者と報道陣の応酬が続いたが、リポーターから「深刻さが分かってますか」の質問に「分かってますよ。1時間30分やれば、それ以上、同じ質問ばっかりですから」と内田氏。さらに「納得できてないから続くんじゃないですか」の問いに「いやいや納得するまでやったら2時間も3時間もかかる」と応じ、「納得は前提ではないということですね」と聞かれると「前提もクソも…」と反論していた。

自民党の石破茂元幹事長もあきれて、石破派会合のあいさつのなかで「(日本大学側の対応について)いくつかのテレビをちらちら見たが、ああいう対応をしてはいけないという標本のようなものではないか。生徒が、選手が必死の思いで、ああいうことを述べた。それに対する大学側の対応は本当にあれでいいんだろうか」と慨嘆した。

日大アメフトの悪質プレー問題は日大広報のお粗末問題へと飛び火した。

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