2015年に内戦下のシリアに入り、武装勢力に拘束されていたフリージャーナリスト、安田純平さん(44)=埼玉県出身=が解放され、24日夜帰国、両親や妻と3年ぶりに抱き合い,、両親が渡したおにぎりときんぴらごぼうをうれしそうに食べたという。
妻で歌手の深結(みゅう)さんは会見し、「多くの方にご迷惑をかけて本当に申し訳ない。本当にありがとうございました」と涙を浮かべて感謝を述べ、「無事帰国することができました。可能な限りの説明をする責任があると思っています。折を見て対応します」との安田さんからのメッセージを読み上げた。
ここまでは本人も家族もまっとうな対応で、無事に帰れて本当によかったと思わせられたのだが、メディア特に朝日新聞の書き方が気に入らない。
朝日はこう書く。
《 解放の可能性が伝えられた23日夜から、ツイッターの安田さんのアカウントには、「どれだけ国に迷惑をかけたのか」「何があっても自己責任の覚悟で行ってくれ」と突き放す書き込みが寄せられた。紛争地での取材にこだわってきた安田さんを「エセ戦場ジャーナリスト」と揶揄(やゆ)するものも。日本政府は身代金の支払いを否定しているが、「身代金、俺たちの税金」と決めつけるものもあった。》
さらに都内在住のシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュさん(44)という人物の口を借りて、
《 「難民問題などの現場では、そこにいる人たちの様子や思いを伝えることにこそ意義がある」と安田さんの活動を評価し、「たとえ正当な取材活動でも、政府や組織の方針から外れて独立して動く人をすぐバッシングしてしまう。そうした現状を見つめ直してほしい」と訴える。》
《 自己責任を持ち出す批判は、2015年の過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人殺害事件の際にも出た。04年にイラクで拘束された日本人3人に対しても投げかけられた。》
テレビ朝日も 朝日新聞の週刊誌「AERA」の元編集長、浜田敬子氏を登場させ「後藤健二さんも犠牲になり、山本美香さんも亡くなられた。我々企業に勤めるジャーナリストが行けないところに、こうしたフリーランスの方が行っている」
この番組では放送大学名誉教授の高橋和夫氏もこの女性に同調して「「日本の大手メディアは人をださない。フリーランスが行かなければ情報がとれない」と語らせている。
大マスコミは危険な現場に足を運ばず、金を払ってフリーランスが寄せる情報を、己の電波と媒体に流すだけの存在、と言いたいらしい。
大マスコミの一端にいた人間として言わせてもらうが、新聞記者はそんな臆病者ではない。ちょっとでも現場に近く、多少危険でもより前線に行こうとするのはジャーナリストならほとんど本能として持っている。政府が渡航禁止地域としているからシリアに入らないだけである。
それに安田純平さん個人の行状にも問題があることを朝日は目をそらしている。
安田純平さんは一橋大学社会学部を卒業後に信濃毎日新聞を経てフリーのジャーナリストになった人物である。サイトの亭主の上司が「信毎」で主筆を務めた山路愛山の孫ということもあって、八ケ岳にいるときはよく読むのだが、とみに左翼色を強め、例えば先の沖縄知事選では一面が「辺野古移設反対」で埋まっていたくらい。
その後フリーになった彼は講演で、「どういう事情であれ、邦人保護は政府の責務だ。フリーのジャーナリストというものは、紛争地域であっても事態の真相を見極めるためにリスクを負って取材に行くものだ。常に『死』という自己責任を負う覚悟はできている」と話した。
さらに「俺が自己責任で戦場に行っているのだから日本政府は規制を図るな。口を出すな。何が起きても自己責任という考え方をもっている。」
危険地帯から退避するよう言ってくる日本政府は世界でも稀なチキン(弱虫)。
「安倍政権は俺の取材の邪魔をするな」
「現地が危ないわけねーじゃん!取材を妨害して集団的自衛権の行使か?」
そしてシリアに入ってすぐ拘束され、2016年5月29日のビデオでは「助けてください」と直筆でメッセージを送り、ネット上で公開された映像のなかで、「私はウマルです。韓国人です」などとわけのわからぬメッセージを出したりしてきた。(帰国の機中で過激派にそういえと脅されたと説明している)
彼が言う通り、邦人保護は政府の責務である。日本政府の要請により密接な連携の上救出にあたったとカタール政府が認めている。シリアのどの組織の犯行かわかっていないが、人質と引き換えに身代金を取るのは彼らのビジネスである。間接的に日本政府が支払った可能性もある。
どうも彼が啖呵をきるときは格好いいが、その悪態をつき通した日本政府のおかげで救出されたのは間違いない。
朝日新聞とその一党は「繰り返される自己責任論」 と非難するが、彼には自己責任について説明責任があるのである。そして日本政府への感謝と謝罪の言葉も。