”3天皇”と”1巨悪”に食い物にされた日産の人災

 

日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)ら2人が金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された事件。かねてから巨額報酬が問題になっていた人物だが、今回は10年度から5年間のゴーン会長の報酬総額が約99億9800万円だったのに計約49億8700万円と偽って有価証券報告書に記載したのが直接の容疑だ。

つまり金持によくある、収入を50億円隠したという脱税だが、他にも日産の取締役の報酬総額から毎年約10億円ピンハネして自分の懐に入れていた。ゴーン会長は株価に連動した報酬数十億円を受け取る権利を与えられていたのに、これまた有価証券報告書に記載していなかった。

さらに母国のブラジル、オランダ、フランス、レバノンで日産側に豪邸を50億円ほどで買わせて家族に使わせていたなどまさにやりたい放題。

日産が傾いたとき、ルノーからカルロス・ゴーンが救世主としてやって来てV字回復したとして 「ゴーン神話」と騒がれたとき、ブログ子はそれは違うのではないかと思っていた。吸収した名車プリンスはデザイナーごと熱心な信者がいて売れていたし、もともと技術力もあり、立派な「体力」があり、まともな経営者がいればすぐ復活するとみていた。

今回誰か評論家が言っていたが、「彼が来てから国内販売網はズタズタにされ、売れそうな車種以外は切り捨てられた。日本のメーカーとして国内シェアを固めた上で海外に打って出るべきなのに、目先の数字だけを追い、コストカットと、ルノーや三菱自動車との3社連合によるシナジー効果で数字の見栄えを良くしてきただけだ。その結果として、飛び抜けた額の報酬をもらっても、理解は得られない」。

その通りだと思うが、そもそも最初の日産自動車経営危機の“元凶”は3人の「天皇」だった。いずれも故人だが、日本興業銀行(現・みずほコーポレート銀行)出身の川又克二社長、彼が重用して「労働貴族」の名をほしいままにした自動車労連(日産労連)の塩路一郎会長、この2人との戦いに全力を傾けた、日産生え抜きの石原俊社長だ。

塩路は東京・神田の小さな牛乳屋の息子だったが、日産に反組合の闘士として入り込んだ。これを「ストライキ破りにぴったりな若者」と川又がひいきにした。第1組合潰しの論功行賞としてハーバード大学ビジネス・スクールへ留学させたりして、ついには日産社内では、労組(=塩路)の同意がなければ人事や経営方針が決められないほどの影響力を行使し、「塩路天皇」と呼ばれた。

77年6月、社長に就任した石原俊は「労組(=塩路)の経営介入がある限り、日産に21世紀の繁栄はない」と考え、労使関係の是正に乗り出した。84年1月20日発売の写真週刊誌「フォーカス」に記事を売り込んだ。「日産労組『塩路天皇』の道楽-英国進出を脅かす『ヨットの女』」。若い美女と自家用のヨットに乗った塩路の大きな写真。

4000万円はするといわれた、美しいヨットを所有していただけではない。品川には7LDKの高級マンションを持ち、日産プレジデントとフェアレディ240Zを乗り回していることも紹介されていた。

塩路は「(労組の指導者が)銀座で飲み、ヨットで遊んで何が悪い」と開き直ったがこの写真が命取りになって失脚した。石原もマスコミ対策に巨額の資金を注ぎ込んだのが祟り社運が傾いた。日産のマスコミへの出稿費用(=広告宣伝費)は分不相応に年700億円を超え、トヨタを大きく上回っていた。

つまり日産自動車というのは前回は3人の「人災」で、今回は1人の「人災」に祟られたということである。フランス政府の思惑も絡み、混乱はまだまだ膨らみそうだ。

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