我が子を手に掛けた父親を責める気になれない

送検のため警視庁練馬署を出る熊沢英昭容疑者=3日午前8時29分

1日午後、引きこもりで家庭内暴力が絶え間ない息子(44)を手に掛けた、東京都練馬区早宮、元農林水産省事務次官で無職、熊沢英昭容疑者(76)の事件、我が身に引き換えて、自分も同じ行動を取ったかもしれないという思いが日に日に募るばかりである。

3日前の5月28日には午前7時45分頃、川崎市多摩区登戸でスクールバスを待っていた私立カリタス小学校の児童16人や保護者2人18人が男に刺され、小学6年生の女児(12)と男性(39)が死亡した。犯人の岩崎隆一容疑者(51)は、首を切り約3時間後に死亡したが、高齢の伯父夫婦と3人暮らしでこちらも引きこもりで近所とトラブルを起こすこともあり伯父夫婦は役所に何度も相談していた。

今年3月に内閣府が公表した調査結果によると、40~64歳で家族以外とほとんど交流せずに半年以上、自宅に引きこもる人は推計61万3千人にのぼる。いまや大きな社会問題であるからテレビがウィドショーを総動員して報道するのは当然だが、中には川崎の事件を念頭に「死にたいなら一人で死んでくれ」と馬鹿なことを口走る落語家もいる。

ブログ子は、そこつ長屋の連中や大家が繰り広げる落語の世界を面白おかしく飯のタネにしている落語家が、現実の世界をもっともらしく解説するのはお門違いだと思っていて、おチャラカ印象が先に立つからコメンテーターなどに起用すべきではないと思う。

それはさておき、テレビでは「引きこもりでお悩みの方は下記に相談を」などと、さも行政に相談に行く行くようにと勧めているがこれまたあほらしい限りのアドバイスである。くだんの相談窓口はいずれも民間のボランティア団体でそれなりのことはやっているのだろうが、「61万3千人」に対応できるはずがない。

ブログ子は根本原因は日本の精神病学会が30年ほど前にそれまでの閉鎖療法から開放療法に転換したことにあると思っている。61万人の全てとは言わないが、かなりの人数が精神分裂病(今は統合失調症という)の範疇に入ると思われる。30年前まで閉鎖病棟に入れていたものがすべて社会に解き放たれた時期があるのである。イタリアなどそのとき精神病院そのものを廃止している。海外の学会から日本の精神病政策を強く批判され、厚生省も日本医師会のまえにひれ伏していた時代だから、後先考えず、開放療法に踏み切った。このことは近いうちに書く機会があると思うので、いまは措いておく。

熊沢英昭容疑者が送検される写真を見たが、なにかしらホッとしているように見えた。キャリア官僚のトップに座った人だけに、引きこもりの問題で厚労省がなんの役にも立たないことはわかっていただろう。区役所などの行政の末端もまた同じである。だから、息子が川崎事件のように他人に危害を加える恐れを、自分で解決したのだろう。気の毒でならない。

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