暗殺もAIで自動化の時代

イランの核科学者、モフセン・ファクリザデ氏が首都テヘラン東方で暗殺された事件。数ある世界の情報機関の中でもずば抜けた「能力」をもつイスラエルのモサドの犯行とみて間違いはない。

それにしても四方を敵に囲まれていて自国存立のためには「周辺国には断じて核保有を許さない」というイスラエルの確固たる意志を見せつけて戦慄を覚えるほどである。中国に尖閣を狙われているというのに未だに「桜」でうつつを抜かしているどこかの国とは大違いである。

事件を報じている産経の佐藤貴生記者はブログ子が静岡支局長をしていたときに配属されてきた旧知の間柄であるが、彼によると「ファクリザデ氏は核兵器製造を目標に2003年まで続いた『アマド計画』を主導した人物。

イスラエルのネタニヤフ首相は18年、この計画の首謀者として同氏を名指しで非難。イランが15年に欧米などと結んだ核合意を隠れみのにして計画を再開したとの見方を強めていた。同氏はミサイルに搭載する核爆弾の小型化も手掛けたほか、北朝鮮の核開発にも手を出していたといわれる。

それにしても手口の「鮮やかな」ことには舌を巻く。英字紙のイラストをもとに犯行を再現するとこうなる。①前後を警護員に守られたファクリザデ氏の車列がイラン近郊のロータリーに差し掛かったとき②車列右側に止まっていた日産のピックアップが爆発した③そちらに気を取られたとき対向車線には現代自動車のサンタフェに乗っている4人とスナイパー2人がいた④殺害は遠隔操作による自動式機関銃を使って無人で行われ、3分間で完了していた。

場所は敵地も敵地、首都テヘラン近郊である。イラン側の強固な監視網を破って暗殺が行われたことにイラン指導部が衝撃を受けていることは間違いない。

(7日、加筆) イランのメヘル通信によると、イラン革命防衛隊(IRGC)の副司令官アリ・ファダビ氏が6日明らかにしたところでは、暗殺には「人工知能(AI)」を搭載し、人工衛星で操作された自動機関銃が使用されたという。

ファクリザデ氏が11人の警護隊と共に首都テヘラン郊外の幹線道路を車で移動していた際(イランは右側通行)、日産自動車製のピックアップトラックに取り付けられていた機関銃は、同氏の顔に機関銃が「ズームイン」し、13発の弾丸を発射したという。

「25センチしか離れていなかった同氏の妻は撃たず、ファクリザデ氏の顔だけに狙いを定めており、衛星経由でオンライン制御されていた上、高度なカメラとAIを使用していたと伝えた。

 また、イラン当局によると、暗殺を実行したのは、イスラエルと、国外に拠点を置くイランの反体制派組織ムジャヒディン・ハルク(イスラム人民戦士機構、MKO、別名:MEK)だという。(引用終わり)

ファクリザデ氏は60歳前後とされるが、公の情報は極めて少ない。それなのにこの時間にこの場所を通ることを正確に把握していたこと。3分間で全員現場を立ち去っていて、弾痕からイスラエル製武器とわかる以外なんの痕跡も残さなかったこと。手際の良さからモサドとしか考えられない。

今年1月3日にはイラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官が指揮をとっていたイラクの首都バグダッドの空港付近で米無人機の攻撃により殺害された。最高指導者ハメネイ師は、攻撃によって殺害されたソレイマニ司令官と5人の「殉教者」の遺体を納めたひつぎの前で祈りをささげ涙を流したが、この作戦でも米軍側には一人の犠牲者もなかった。

暗殺に使われたのは、米空軍のMQ-9リーパー無人機。ヘルファイア対戦車ミサイル(射程約10km)などの武器を最大で1・7トンも搭載して14時間は飛び続けられる性能を持ち、偵察・監視から攻撃まで幅広い任務をこなせることから、今やあらゆる軍事作戦に投入されている無人機だ。

現代では戦争にしろ暗殺にしろ「自動化」「無人化」で最大の効果を上げる時代になっている。一方、日本では北朝鮮が発射するかもしれない弾道ミサイルを迎撃する地対空迎撃システム、イージス・アショアがブースターが近くに落下するのが危険だと反対運動で秋田、山口への配備が断念せざるを得なくなった。こんなに能天気な国にはイスラエルや米軍の「覚悟」というものの爪の垢でも煎じて飲ませたい。

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