日本医師会の中川俊男会長は記者会見ではいつも「感染者の増加が続けば、適切な医療が受けられない『医療崩壊』が起きる恐れがある」と、国民に危機感を訴えている。東京都医師会のトップである尾崎治夫会長も連日のようにメディアに出演し深刻な表情で感染防止を訴えている。
一見、もっともらしい姿ではあるが、ブログ子の見るところ、日本で『医療崩壊』が起きるような事態を招いた責任は彼ら医師会と、武見太郎時代から唯々諾々と日本医師会の言い分を呑んできた厚労省にある。その理由を以下に述べる。
上は「人口千人当たりの各国の病床数」のグラフである。経済協力開発機構(OECD)の調査だが、日本のベッド数は13で最多。韓国12・4、ドイツ8と続く。米国の2・9、英国の2・5の4~5倍以上だ。有り余るほどベッドはあるのである。
ワイドショーは毎日「コロナ」の恐怖を煽っている。日本の感染者が急増して30万人ほどに達し、神奈川県では入院が必要なベッド数「880床」という段階で、はや「医療崩壊の危機」と叫んでいた。このとき、米国では2300万人を超え、英国320万人、フランス、イタリア、スペインは200万人を超していた。日本とはケタ違いに多い患者数なのに医療崩壊など起きていない。それなのに世界一のベッド数を誇る日本だけなぜ「医療崩壊の危機」なのか。
現在、コロナ患者が入院している医療機関は、手術や救急を行う急性期病院が多い。厚労省によると、昨年11月末時点で厚労省のシステムに登録している4255の急性期病院のうち、新型コロナ患者の受け入れ実績があるのは1444病院である。割合を見ると、公立病院は58%の405病院、日本赤十字社や済生会など医療法で位置づけられた公的病院が75%の565病院。
一方、民間病院はわずか17%の474病院にとどまる。 一方、先進諸国の公的病院と民間病院の病床数の内訳を見ると以下のようになっている。
公的病院(非営利病院含む) 民間病院
日本 約20% 約80%
アメリカ 約75% 約25%
イギリス 大半 一部のみ
フランス 約67% 約33%
ドイツ 約66% 約34%
※ 「諸外国における医療提供体制について」厚生労働省サイトより
つまり日本はベッド数こそ多いが、大半は民間病院で、そこがコロナ患者を受け入れていないのである。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツは、病床の大半が、公的病院か非営利病院にあり、新型コロナの患者を引き受けているので、日本よりも桁違いの患者が生じていても、対応できているのである。
こうなった原因は、民間病院の経営は差額ベッド代などで収益を図っているからである。またコロナ患者を受け入れるには低圧室など設備が必要だが、そちらには対応できていない面もある。「儲からない」「設備投資が必要」なベッドは公的病院任せにして、自分たちが管理する大半の民間病院にはコロナ患者を受け入れていない。これが現実である。
日本の医療は開業医が儲かるように制度設計されている。以下に紹介する厚生労働省の「医療経済実態調査」では、開業医の年収は勤務医の2倍である。
開業医(民間病院の院長を含む) 約3,000万円
国公立病院の院長 約2,000万円
勤務医 約1,500万円
加えて「薬局経営」という副業で儲けている。どんな小さな医院でもその前には薬局がある。あれは開業医が家族などの名前で作っている医療法人とプロパー(薬の卸業者)の共同経営が多い。定期的に薬価基準を引き下げられているが、まだまだ大きな利益が上がるほど薬価は高く設定されているのだ。
コロナという未曾有の危機に際し、手間暇・危険がある医療は公的機関にまかせ、民間病院は「受け入れ不可能」と知らぬ顔し、発熱症状がある患者のPCR検査などはまず「掛かりつけ医」つまり開業医の紹介から始まるというのが現在の日本のコロナ対策である。そこのトップが記者会見やテレビでいくら「医療危機」を口にしたところで訴える力などあるわけもなかろう。
新聞・テレビ、とくに毎日のように「感染者数史上最高」と脅迫で煽り立てているワイドショー、また「遅い」「後手ばかり」とバカの一つ覚えのような政権批判ばかりの立憲民主党を主とする野党に言いたい。
このコロナ禍に上で述べたような日本の医療の歪みが奈辺にあるかを理解して、立案・立法のために粉骨砕身働け!!