菅内閣の支持率、朝日と産経で20%大差の不思議

産経とフジニュースネットワーク(FNN)が、23、24日に実施した菅内閣の支持率は「52.3%」。同じ23、24日に実施された朝日新聞では「33%」。それぞれ独自に調査するのだから違って当たり前り前ではあるが、20%もの大差には驚いた。

永田町で話題になっているほか、いつも対韓国で相反する両紙だけに、韓国メディアはさっそく「産経新聞の世論調査を疑問視する声も出ている」と報じ、同じ急落傾向にある文在寅支持率と並べて「他社の世論調査と比較すると、13%ポイントから19%ポイント差が出ており、産経は信用できないとする声が上がっている」(wowkorea)と喜び勇んでいる。

韓国側が朝日の肩を持つ気持ちはわかるが、ブログ子の見るところ朝日の方が恣意的に数字をいじっているのではないか、と思っている。 上は同じ日に朝日が掲載した菅内閣支持率のグラフである。このところ、コロナ無策を筆頭に内閣批判を強めている朝日新聞だけあって、昨年12月に比べてこの1ヶ月で、「不支持」が「支持」を上回ったことを今回の世論調査で見せたかったのではないか。

一方、産経は今回の調査は「背水の陣」だったという事情があった。絶対に信頼を取り戻さねばならなかった。というのも、昨年6月に下請けのリサーチ会社がデータ入力で手抜きをしたのが判明、調査を‌全面‌的に中断した。今回は半年ぶりに復活させて、初めての世論調査だったのだ。信頼を永劫に失うようなインチキをするだろうか。

こと世論調査に関して朝日新聞は大きな信頼があった。ブログ子は札幌で学生生活を送っていたが、アルバイトで朝日の北海道支社で世論調査の調査員をしたことがある。そのとき集められてまず統計学の講義を受けた。

概略こうだ。最新の統計学ではサンプリングは200でほぼ正確を期すことができるが、朝日では10倍のサンプリングを取る。それには階層化が大事で、男女、年齢、居住地などの要素を正確に反映させる必要がある、というようなことだった。そのため役所に出向いて住民台帳をまずチェックさせられた(当時は閲覧できた)。どの簿冊の、何番目の世帯主の何人目、それが未成年であれば何番目の世帯の‥というふうにアンケート先を特定する。

つぎにアンケート用紙を持参して本人に会う。サラリーマンのような帰宅がまちまちな人だといなければ何度でも出向かなければならなかった。数十人を担当するとへとへとになった。用紙を担当社員に渡すとバイト代を支払ってくれるが、当時他のバイトより破格の料金をもらったものだ。

それが個人情報の関係で勝手に簿冊に触れることができなくなり、今世紀に入ってからはRDDという方式になった。乱数番号法(Random digit dialing, RDD)という、標本抽出手法の一種で、無作為抽出した電話番号へ通話する調査方法である。電話の代わりにはがきを使う方法もあるが、今ではNHKはじめほぼすべてメディアなどの世論調査で使われている。

当初は新聞社やテレビ局ごとに実施していたが、電話を掛ける手間が大変なのでこの世論調査を下請けする専門業者が登場して、各社これに依存するようになった。それが産経FNN調査で見られたような下請け業者の手抜き作業を生むことになった。

またRDD方式は上述したような従来の方法の階層化ができていないから誤差が生じやすいという欠点がある。手っ取り早く調査日の翌日には統計が出るという利便性の前に今では主流であるが、統計学の理論を前提にしているから本来そう誤差があるものではないのだが、今回の朝日と産経・FNN調査のように「20%」もの誤差というのは珍しい。

ちなみに、1週間前の18日、読売新聞の調査では菅内閣支持率は「39%」だった。次2月1日には日経の調査が出るだろうから、判定はそれも参考に、みなさんに委ねたい。

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