ビルマの悲劇に日本は声を上げよ

国連人権高等弁務官事務所などによると、ビルマ(ミャンマー)で国軍がクーデターを起こした2月1日以来、抗議デモ参加者など少なくとも少年15人含む247人が国軍側の鎮圧で死亡した(21日)。国軍は威嚇どころか狙い撃ちせよとの命令を出しているといわれる。

ビルマは大の親日国である。ツイッターなどでは「日本の皆さまには世論形成など支援をよろしくお願いします。どうか『近きアジアの友人』のことを忘れないでください」との悲痛な声が日本人に発せられているという。先月、在日ビルマ人は青山の国連大学前に1,000人ほど、霞が関の外務省前にも3,000人が集結して、拘束されたアウンサンスーチー氏の釈放や、国際社会と協調して軍に圧力をかけてほしいと訴えるデモをしている。

このような悲痛な叫びを前に、残虐な国軍に対し、日本はなぜ非難声明の一つも出せないのか。

1826年から115年の長きにわたりイギリスの植民地だったビルマが独立を果たしたのは1942年、日本軍がイギリス軍を駆逐し、首都ラングーン(現在のヤンゴン)が陥落したときだが、日本軍は開戦前からビルマ独立に燃えるアウン・サン将軍(日本名は面田紋次。現在、軟禁の身にあるアウン・サン・スー・チー女史の父)ら30人を秘密裏に訓練していた。30人は現在も独立の志士として国民から敬愛されている。

ブログ子は30年ほど前、伊豆高原でキーウイ栽培をしようとニュージーランドから当時最新種だった「ヘイワード」を取り寄せてはみたものの、栽培法がわからず、稲取で果樹園を経営していた方に教えを請うた事がある。その方はその30人の志士を教育した人物で、ビルマ大使が赴任するたびに表敬訪問すると聞いた。

当時から彼我ともに「ビルマ」であったが、1989年軍が政権を奪ったときから「ミャンマー」を呼称、日本政府はいち早く軍政を承認してメディアにも「ミャンマー」と呼ばせている。ビルマ語には言語使用の等級があり、文語体と口語体を厳格に区分する。

双方の名称とも、元々は国内の多数民族(6割)であるビルマ族の名称で、口語体ではBama、文語体ではMyanmaだった。「ミャンマー」のミャンは「早い」で、マーは「丈夫」などの意味を持っている。国名や地名が改名されたといっても、英語表記だけが改名されただけで、ビルマ語表記はそのままなので国民の間で混乱することはなかった。現に、アウン・サン・スー・チー女史も米国も「ビルマ」を使い、英国は「ビルマ」(ミャンマー)と両表記だし、国際的には「ビルマ」の方が多いのである。

戦後も多くの日本兵が現地に残り、建国に力を注いできた。戦時中に日本軍がタイとミャンマーを結ぶ鉄道建設工事を強行した際に、10万人以上のミャンマー人が「労働力」として駆り出され、少なくとも3万人以上の人が命を落とした「泰緬鉄道建設工事の悲劇」があるにもかかわらず、親日を貫き、戦後、東南アジア諸国で最も早く日本と平和条約締結をし、戦後食糧難に直面していた日本に、大量のビルマ米を送ってくれた国である。

それなのに、クーデター以後、丸山市郎・駐ミャンマー大使は、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏と首都ネピドーで会談して、世界のどの国も認めていないのにいち早く「外相」と発言したことから、市民からは「日本政府の弱気な態度に失望しています」、「日本はミャンマー国民の声を聞かず、軍人を認めるつもりなのか?」、「ワナ・マウン・ルウィンは、外務大臣ではありません。誰も認めてはいけませんし、このような言葉使いをやめて頂きたい」と、痛烈なコメントが怒涛のような勢いで相次いだ。また日本メディアが、デモ隊鎮圧の先頭に立つ国軍を「治安部隊」と呼ぶことにも反発が広がっているという。

あわてた日本は、加藤勝信官房長官が「〝外相〟と呼称はしているが、呼称によって国軍によるクーデターの正当性やデモ隊への暴力を認めることは一切ない」と強調したが市民の失望は深まっている。対ミャンマー外交に関し、日本は「独自色」(外務省関係者)を貫いてきた。07年の民主化運動弾圧で欧米各国が制裁を強化した後も、日本は軍政との関係を切らさず、民生部門を中心に支援を継続した。これを成功例と捉えているようだ。

ともすれば中国側に近づきかねない国軍を自由陣営につなぎとめておく策として、「独自外交」を言うのだろうが、そもそも自国民に銃口を向け、殺戮する軍隊が支持されるわけがない。また平気で国会議員の25%を最初から軍人が占めるというのも異常である。そも、クーデターが起きるということ自体が後進国の特徴である。

第2の都市マンダレーでデモ隊への銃撃によって犠牲となった19歳のチェ・シンさんは、歌と踊りが趣味で「エンゼル」(天使)という愛称で親しまれ、銃撃される前の姿を捉えた写真やイラストは抗議運動で掲げられた。それなのに、あろうことか、国軍側(警察)は遺体を掘り起こして検視と称して解剖、「頭から摘出された銃弾は警察のものではなく、警察がいた方向からは撃たれていない」などと報じた国営テレビを、日本メディアがそのまま流したことに「日本のメディアは捏造報道ばかりでフェイクを垂れ流している」と怒りの声が溢れた。

恥ずかしい限りである。日本の「独自の外交」などもういい。自国民を殺戮している国軍などとはきっぱりと縁を切り、欧米諸国と協調しておぞましいこの国の軍隊に制裁を加える行動に出てもらいたい。ビルマばかりではない。台湾、香港、ウイグル・・・そして尖閣まで。世界中で悪行を続ける中国に対する日本の発言がなにもないのはなぜか。外務省解体論がそろそろ出てくる頃である。

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