日本のメディアに一番欠けているのはしっかりした軍事記者を育てていないことだ。ブログ子は政治・社会部育ちで軍事は專門ではないが横須賀艦隊司令(昔の連合艦隊司令長官にあたる)の海将から、日本がかろうじてロシア、中国、南・北朝鮮に対峙していられるのは、潜水艦隊のすぐれた力に由ることを教えられた。
そうした知識で、最近報じられた北朝鮮が大陸横断ミサイル搭載できる3000トンの潜水艦の進水間近というニュースと、韓国が建国4千年の歴史における最大兵器事業」と呼称する、独自開発した超音速戦闘機「KF21」の試作機が完成、文在寅大統領が出席してお披露目がおこなわれたというニュースには、いささか首をかしげている。
北朝鮮のハリボテ潜水艦
韓国の聯合ニュースによると、北朝鮮が3000トン級の潜水艦の建造を終え、進水の時期を検討している段階にあると韓国政府消息筋が11日明らかにした。この潜水艦は、北朝鮮が2019年7月に金正恩総書記も視察したと伝えたもので、1800トン級の潜水艦を改造したものであり、全幅は7メートル、全長は80メートル程度の大きさで、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)3発を搭載可能で時期を見て「北極星3」などの発射の可能性もあると指摘した。
ブログ子の見るところ、韓国も日本と同じでろくな軍事記者がいないと見える。金正恩視察当時の写真を見れば分かるが、船体は稚拙な溶接技術で鉄板がツギハギである。これが潜水するとどうなるか。素人の私でも分かるが、波切り音がさぞかし騒がしいことだろう。世界一の聴音技術の日本からみればチンドン屋を乗せて潜航しているようなものである。
潜水艦で最大の秘密は船体の装甲の厚さである。一般公開などでハッチを見せることがあるが厚さがわからないようになっている。この写真からは判別できないが、溶接できる程度の厚さなのであろう。SLBM3発発射も、と報じているが、この程度で大型ミサイルを発射すれば船体がぶっ壊れるに違いない。
もうひとつ、韓国の超音速戦闘機「KF21」の試作機お披露目だが、文大統領は 「われわれの手で作った超音速戦闘機を持つことになった。KF21の名前には21世紀の空は自分で守るという意志が込められている。自主国防の新しい時代が開かれた」と胸を張ってみせた。
この戦闘機は航続距離2900キロで、飛行速度は音速の1・8倍。飛行試験などを経て、2026年の完成を目指す。量産化開始段階で国産部品の比率を65%以上にすることを目標としており、32年までに120機を実戦配備する計画だ。
韓国開発の「KF21]戦闘機
韓国独自開発と言っても、米国から核心技術の提供を拒否されて国産比率「65%」である。実態はもっと低く、50%を割っているだろう。何しろ韓国という国はブラックボックスつきで引き渡された戦闘機のブラックボックスを勝手に開けて、どうにも元に戻せなくなってやっと白状する国柄なので米国に信用がない。エンジンや兵器はまるごとアメリカ製である。
潜水艦でも米国の協力を得られなくてドイツから輸入したのはいいが、5隻のうち3隻がバッテリーが直せず稼働は2隻のみというありさま。戦闘機でも管理が悪くて現在稼働中の主力戦闘機など米国製部品の不足で飛行を断念するケースが過去5年で1000回を超えている。ステルスに欠かせないカーボン繊維は日本の東レの技術だが、自衛隊機にロックオンかけ仮想敵国扱いする国に引き渡すわけもない。
F35などの最新鋭戦闘機は「第5世代」と呼ばれる。「KF21」はレーダーで探知されにくいステルス性能などで劣るため「4・5世代」と位置づけられている
まあ、自己満足に近い韓国産「KF21」戦闘機なのだが、日本も笑ってはいられない。同じように米国から差別されているからだ。日本の「ゼロ戦」は優秀で米軍機はバッタバッタと撃墜された。「グラマンF6F」ができるまでやられ放題だったことを恨んでいたから、戦後、GHQは航空機の研究開発を厳禁した。
しかし、戦闘機であれ、旅客機であれ、航空機の生産をやめればその国の航空機製造技術は途絶えてしまう。その網をかいくぐって日本は初の国産旅客機として「YS11」を誕生させた。その後、「ゼロ戦」を生んだ三菱重工が国産旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」改め「スペースジェット」の開発を目指しているが、難航している。いろいろ理由はあるが、新しい飛行機に必要な型式証明はアメリカでしか認められていない。日本が作った日本の航空機の型式証明はアメリカでしか発行されないのだ。
話を戦闘機に戻すと、国内で唯一、戦闘機を製造する能力がある三菱重工業は防衛省からの発注を受けて、最新の戦闘機技術を盛り込んだ先進技術実証機「X2」を製造し、2016年に初飛行させた。国産エンジンの推力が小さいことから戦闘機への転用はできないが、レーダーに映りにくいステルス機の国産化は可能であることを実証した。
エンジンメーカーのIHIは「X2」にエンジンを提供した後、推力15トンという、戦闘機として十分な性能のエンジンを開発した。また三菱電機は世界でもトップレベルのレーダーを製造する技術を持っている。韓国と違って作る能力は持っているのだが、肝心な点で未経験である。
日本の先進技術実証機「X2」
実は、こうした日本の技術を単純に組み合わせるだけでは次期戦闘機としては成立しない。戦闘機の心臓部にあたるソフトウェアや武器システムは実戦経験のある国でなければ必要十分なものは開発できないとされている。
防衛省は2018年、米、英両政府に対し、次世代戦闘機として開発可能か提案を求め、ロッキード・マーチン社を選んだ。しかし日本には苦い過去がある。1980年代にF2戦闘機を日米で共同開発した際、米政府は米議会の反対を理由に提供を約束したソフトウェアの飛行制御プログラムを開示せず、日本側の開発費が高騰した。このときの主開発企業が三菱重工業であり、共同開発企業がロッキード・マーチン社である。
開発終了後も、米側は機体製造への参画を言い出して譲らず、日本政府から受け取る製造費は開発費と同じ割合の40%を主張。日本政府が折れて希望通りに支払った結果、約80億円で調達できる見込みだったF2は約120億円に高騰した。エンジン1基のF2が、エンジン2基のF15戦闘機より高い。防衛省はい2007年に三菱重工業での生産を終えた。
しかし、このとき日本の技術である機体を軽量化できる炭素複合材の製造技術が米国に流れ、ロッキード・マーチン社はF22戦闘機やF35戦闘機に転用して莫大な利益を上げている。
日米首脳会議で菅・バイデン両首脳はゆるぎない日米同盟を協調したが、日本の戦闘機開発についてはアメリカは依然として手かせ足かせを押しつけているのである。