政府が設置する新型コロナウイルスワクチンの「自衛隊大規模接種センター」での接種が24日、東京と大阪で始まった。いずれの会場も待ちかねて行列を作っていた高齢者が大勢訪れたが、自衛隊の医官、看護師がキビキビと動き、順調にさばいていて一日1万5000人規模で接種が進む見通し。
またワクチン接種率が50%以下で開かれる東京五輪・パラリンピックの大会期間中に必要な医療従事者は1日最大で医師約230人、看護師約310人が必要になる見通しだが、これにも自衛隊が派遣されるという。毎度の「困ったときの自衛隊頼み」である。
東京・大手町の「自衛隊大規模接種センター」を訪れて、受付に並ぶ人たち(24日)
本来、こういう非常時に真っ先に先頭に立っているはずの日本医師会の姿はどこにもない。それどころか、大規模接種に必要な注射を打つのは医師免状所有者に限るという法令に縛られている。医師会が積極姿勢を見せないから獣医師、薬剤師(注射の準備)、看護師まで特例で集めてもまだ足りないと、各地で悲鳴が上がっている。
大阪府内では新型コロナウイルスの感染が拡大した3月以降の「第4波」に、自宅で療養・待機中の患者が治療を受けられないまま亡くなるケースが、5月22日時点で計19人が確認された。全国の重症者は23日で1304人だ。各地で「医療崩壊」寸前だという。インドは別にしてイギリス、イタリア、アメリカでは人工呼吸器、人工心肺が必要な重症者は日本の10倍、30倍だったが、医療崩壊は起きていない。なのに、日本はたった1300人で医療崩壊だという。おかしくはないか。
日本医師会の中川俊男会長(69)はいつも「医療崩壊だ」と脅しては「国会議員は夜の会食 は禁止しろ」「国民は緊張感が足りない」とどやしつけてきたが、その本人が、まん延防止等重点措置中に政治資金パーティーを発起人として開いていた。そればかりか中川氏は「我慢のお盆休み」を国民に要請していた昨年8月に女性と〝すしデート〟をしていたと週刊新潮に報じられた。
まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が遅いの早いのと、ろくでもないことにうつつを抜かしているテレビのワイドショーもさすがに呆れたか、毎度午後3時頃になると小池百合子東京都知事のフリップ片手の「三密回避」の記者会見と並んで中川日本医師会長と尾﨑 治夫東京都医師会長の記者会見を同時中継していたのをきっぱりとやめた。当たり前だ。
日本医師会はコロナという非常事態になんら先頭に立つ素振りは見せずじまいに来た。ブログ子の見るところ、そもそも日本医師会は、テレビに出てきて自粛を求めるような国民のお手本になるような組織ではないのだ。
これは以前も書いたことだが、日本は世界有数のベッド数を誇るが、そのほとんどは日本医師会の圧力(民営圧迫だとする)によって民間病院所有である。だから金になる差額ベッドばかり多い。そのため、病床は世界一の130万床あるが、コロナ患者に対応できるベッド数は実は3万にも満たない。これは全体の2%にもならない。残りのほとんどが寝たままでもカネになる 老人で占められている。
公的病院(非営利病院含む) 民間病院
日本 約20% 約80%
アメリカ 約75% 約25%
イギリス 大半 一部のみ
フランス 約67% 約33%
ドイツ 約66% 約34%
それでも、コロナという災厄を前に日本医師会が戦いの先頭に立つというなら「医は仁術」の見本といえるのだが、この困難を前にしても彼らは一向に改めない。感染者の治療は公的病院に任せ、自分たち開業医は従来どおりのんびり「医は算術」暮らしを満喫している。難しい病気は基幹病院に送り込み、コロナ患者が来たらお断り、ワクチン接種は自衛隊任せ、である。
このGWにブログ子は八ケ岳の山荘で過ごした。周りを見渡せば「石を投げれば医者に当たる」そのもので、ご近所5軒のうち3軒が医者でみな医院は休診にして新緑の山で休暇を優雅に過ごしていた。新型コロナ患者を受け入れる特定の医療機関の病床が埋まり、医療従事者の手も回らない状態になっていることなど、我関せずである。これが日本の医療崩壊の現実である。
日本医師会は、日本で最強の圧力団体と言われているが、実態はといえば医者の団体ではなく、開業医の団体である。日本医師会は、「開業医の団体」と見られるのを嫌い、勤務医への参加を大々的に呼びかけ、開業医と勤務医が半々くらいになっている。が、勤務医が日本医師会に入る理由は、医療過誤などがあったときの保険「日医医賠責保険」に加入するためであることが多い。勤務医の大半は、「日本医師会が自分たちの利益を代表しているわけではない」と考えている。
もっとも、日本医師会のどこもがコロナに背を向けているわけではない。練馬医師会方式が話題になって、これを見習うところも出てきているが、これはワクチン接種の最前線に開業医が立つという方式で、かかりつけ医が接種に当たる。こういうところもあるにはある。しかし、新型コロナの患者を積極的に受け入れているのは、国公立病院や純然たる非営利の病院がほとんどであり、重症患者などの治療に懸命にあたっている医者のほとんどは勤務医である。こういう人たちには本当に頭が下がる。
橋下徹・大阪維新の会法律顧問が公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(5月18日配信)で、日本医師会などに頼らず、政治家、国会議員が、医療非常事態に立ち向かえる法律を作るしかない、と言っている。全面的に賛同するので以下に紹介する。
「医療は公共インフラです。もちろん弁護士もです。だからこそ、税金で人材を養成し、資格業、免許業として、独占的な仕事が保障されているのです。さらに医療の世界には超多額な税金が投入されています。2018年度の日本の医療費(国民医療費)は43.4兆円でしたが、そのうち11兆円が国の税金、5.6兆円が地方の税金から投入されています。もう立派な公の存在です。
他方、日本は国民皆保険制度として、民間経営の医療を主軸としています。開業医はもちろん病院も民間のものが8割です。そして民間医療には経営の自由が原則与えられています。この制度によって、日本全国に中小の病院や診療所が点在し、日本国民は自宅から徒歩圏内にあるあらゆる診療科の診療所や病院にアクセスでき、加えて保険証一枚で、低額で良質な医療を受けることができるという、世界に類を見ない医療の利便性を有します。
さらにさらに、高額医療費については、一定の上限額以上は免除されます(高額療養費制度)。数百万円の医療費がかかったとしてもひと月10万円にも満たない額で済むのです。これはほんと凄いことなんですよ。
ただこのような日本の医療制度の下で、ひとたびパンデミックなどの危機が生じたときには、それを受け容れることができないということが、今回のコロナ禍によって白日の下にさらされました。
開業医の診療所や中小の病院では対応できなくなったのです。さらに政治行政が、開業医や民間病院に対して指揮命令することができず、あくまでも「お願い」しかできないのです。病院側も色々な事情を持ち出し、コロナ対応することを拒否する事態が多発しました。
もちろんコロナ対応に頑張ってくれている医療従事者の方もたくさんいますが、その方々に著しい負担がかかっており、それが医療崩壊と言われるゆえんです。その医療崩壊を避けるために社会経済活動を抑止し、飲食店等特定の業種が営業停止に追い込まれています。
世界各国から見ると、日本の人口当たりの感染者数や重症者数は一桁も二桁も少ない。病床数も世界一です。世界各国は日本よりも一桁も二桁も多い感染者数であっても、なんとか医療はもっているのに、日本は医療崩壊だと叫ばれる。
こういうときには、設備や人材を適正配置するマネジメントが必要になります。そのための法律を作らなければなりません。」