米英豪加などファイブアイズ国家が北京五輪の外交的ボイコットを表明した。さて、日本はどうか。日本政府は「現時点では何も決まっていない」というが、開催まで、あと2カ月である。いつまで優柔不断を続けるのか。
9月の自民党総裁選出馬に当たり、香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害に「毅然と対応する」と主張、新設した国際人権問題担当首相補佐官に中谷元・元防衛相を起用した。これはきちんと対応するのだろうと思ったら、「人権問題」担当の当の本人は 「制裁を伴ってどういうことが起こるかしっかり検証しないといけない。日本は対話と協力で対応してきた」とトーンダウンさせる始末だ。
来年(2022年)は日中国交正常化50周年の節目に当たるので波風を立てたくないという腹なのだろうが、中共政府はそんなことで日本への圧力を弱めたりはしない。尖閣諸島には連日海警船が押し寄せているし、招請されて中国に渡った大学教授を未だに拘束したままだ。
中国外務省の趙立堅報道官は25日の記者会見で、「中国は既に、日本の東京五輪開催を全力で支持した。日本は基本的な信義を持つべきだ」とあからあまに牽制している
腰が引けた日本は見透かされている。2008年8月の北京五輪はどうだったか。当時の国連事務総長に加え、英チャールズ皇太子も開会式への不参加を表明。フランスの外相も「EUは開会式への不参加を検討すべき」と発言し、実際に英国やカナダ、スペイン等々、世界各国の首脳が開会式への参加を控えたが、日本は歴代の首相の中でも媚中派ナンバーワンであった当時の福田康夫首相が笑顔で開会式に参加した。さすがに実現しなかったが、中国は当時の天皇陛下、皇族方のご出席まで要請していた。
1989年の天安門事件後に開かれたG7サミット(先進国首脳会議)でも日本は醜態を晒した。対中関係の維持を図る日本が、人権重視の欧米に「1対6」の構図で抵抗。中国への制裁で結束していた西側諸国の足並みを、一人で乱した。当時、中国外相を務めた銭其琛元副首相は後に、「日本は西側の対中制裁の連合戦線の最も弱い輪であり、中国が西側の制裁を打破する際におのずと最もよい突破口となった」と回顧した(『銭其琛回顧録』東洋書院)。
岸田首相は「聴く力」を看板にしている。しかしこのところ挫折の連続である。公明党主張を入れて決めた18歳以下の子供への一律10万円相当の給付金は「年内に現金5万円、年度末までにクーポンで5万円」が、事務経費に960億円という馬鹿な経費がやり玉にあがり、「自治体希望で10万円一括支給もOK」ときた。
新型コロナの新たな変異、オミクロン株の感染防止策をめぐっても、岸田文雄政権は迷走した。日本着国際線の新規予約を日本人を含めて停止するよう、各航空会社に要請したが、批判を受けて、たちまち修正した。
もし実施されていれば、海外に滞在していて、これから年内に帰国しようと思っている日本人は、予約済みの人を除いて、帰国できなくなってしまう。年末年始を控えて、一時帰国を検討中の在外邦人も多い。海外出張者も、いったん出国したら、いつ帰れるか、分からなくなる。
国家最大の使命は国民の生命と暮らしを守ることだ。「日本人が日本に帰国するのを政府が認めない」などという話は、ありえないし憲法違反で訴えられて然るべき話である。北朝鮮による拉致被害者の帰国に向けた国民大集会に出席した岸田首相は、「わたしの手で、必ず解決しなければならない」と決意を述べた(11月13日)が、なにか空々しい。
中国の報道官ごときに「信義」で脅かされた日本政府の対応はというと、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の橋本聖子参院議員か日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長の出席を検討していると言われる。今夏の東京大会に中国は閣僚級の苟仲文・国家体育総局長を派遣した。政府関係者によると、苟氏は中国オリンピック委員会トップも兼ねており、苟氏と同格の山下氏を派遣すれば、外交上の「返礼」を満たすとみている。
これで米国などと歩調を合わせた「人権重視」対応との説明ができるというのだろうが、狡猾な中国はそんなこと見透かしている。そんな姑息な手段はやめて堂々と正面から「外交ボイコット」に出るべきだ。
ジャーナリストの櫻井よし子さんは12日のインターネット番組「言論テ レビ」でこう語っていた。「東京五輪で森喜朗氏を(女性蔑視、差別だ と)激しく批判していた人たちは、中国のウイグル人に対するジェ ノサイド、民族集団虐殺に対して森氏より何十万倍も激しい批判をしてく れると信じたい」
また朝日新聞の社説では、外交ボイコットは「(政府は)付随的な意味しかない政府代表の参加をやめることで、中国への強腰と人権重視の看板をアピールしたいようだ。ただ、この措置が実際に問題解決につながる見通しはない。中国国民の胸中には人権意識よりも、米国への反発心を強く残しかねない」という。
ブログ子の経験では、何事も朝日新聞の逆を行えば正解である。この意味でも、早急に外交ボイコットに踏みきるべき時である。