女市長の暴走を止めた女性市議の名演説

3か月居ただけの腰掛け外国人にも投票権を与える武蔵野市の住民投票条例が僅差で否決されたことを書いた。市長の暴走を止めたのが、これまで市長提案にほとんど賛成に回っていた中立会派の女性市議の素晴らしい演説であったことが、音喜多駿・議院議員ブログで知った。同氏は小池百合子都知事のシンパであったが反旗を翻して今は維新から参院に入った人物であるが、よく勘所をとらえているのに感じ入った。

ブログによると、武蔵野市はいわゆる「リベラル」が強い自治体で、中道保守勢力は劣勢。委員会も賛成多数で可決し、情勢を覆すのは困難とも見られていた。その見通しを覆したのが、いわゆる中立会派の動向で、今回、反対に回った本多夏帆議員(写真左)の反対討論の内容は秀逸だった。

趨勢決めた本多夏帆議員が涙ながらに訴えたことは、外国人参加の是非というより、「住民投票制度それ自体」や「成立プロセス」に重きを置いて反対理由を述べた。

第一が、住民投票制度そのものへの周知・市民理解の不足。住民投票制度は議会が機能不全になっている時にそれを補うため有効とされる手法だが、その本来の目的がどこまで議論されているのか。

市長は議会答弁で「住民投票制度がここまで知られていないとは思わなかった。成立後に周知広報を徹底したい」と述べたが、周知広報するのは成立前にやることが必要不可欠ではないか━という正論からピシャリと主張が始まった。

第二の反対理由が、リスクマネジメント不足。日本人であれ外国人であれ「特定の意図を持った集団」が制度を悪用することは残念ながらありえる。それにどう対応するか、できるだけ入念な制度設計や規則が求められる。

にもかかわらず、本条例案には公平性を担保するための具体案が未だにない。意見が真っ二つに分かれる中で、これだけ「住民」の定義を幅広くとった(外国人も含めた)のだから、それ相応のリスクヘッジ策を提示するべきだったのに、そこを無視してしまった。この対応こそが、今回の案の実現可能性を最も損ねた部分だと、本多議員は喝破した。

そして第三の理由は、そもそもの政策目的と手段、プロセスの妥当性、優先順位。住民投票制度の目的は市民自治の推進であり、武蔵野市においては市政運営やまちづくりに参加する住民が「固定化」している、いつものメンバーだけになってしまっている点が課題だとされてきた。

しかしそもそも課題になっている「参加する市民の固定化」の部分、これを打開することなく今回のような大胆な施策に打って出た結果、市が二分されるような分断が生まれてしまった。まさに多様な意見を取り入れ、立ち止まるプロセスこそが必要だったのではないか…。

そして本多議員は最後に松下市長に対して、

「中立派の会派として、これまで市長の提案であるパートナーシップ制度や子どもの医療費助成の拡大など賛成してきました。(中略)

しかし、今回の案と今の状況でこれを可決することで、武蔵野市が目指す多様性を認め合うまちづくりが推進されるとは思えません。また、自分が推進したい案なら手続き論は甘く、反対したい案なら厳しくという姿勢は一貫性がないことからも、この決断へと至りました。」

と市長のダブルスタンダードにチクリと釘を指しながらも、今後も継続的に条例案を検討していくことには肯定的なスタンスで討論を終えた。

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ハリウッド映画にジェームス・スチュアート主演の「スミス都へ行く」(1939年。原題「Mr. Smith Goes to Washington」) というのがある。上院議員の穴埋めとして政治の世界に送り込まれた男が、 腐敗に気づき、たった一人で抵抗する。議案を葬る方策が、長時間演説で切り抜けるというストーリーだ。

日本で上映されたとき私は中学生くらいだったが、大阪・千日前の映画館で これが民主主義というものかと感動した覚えがある。

本多夏帆市議がどういう御仁か知らないが、 「行政書士。4歳1歳の子どもたちと夫との4人暮らし 」とある。同氏のもとには市長派からものすごい攻撃が殺到しているという。そのことへの反論ツイッターがまたいい。

「考えが合致しないのは分かります。でも、だからって、最低だとか馬鹿だとか、そういうのはやめません?」

左巻きは60年安保のときも、70年安保のときも、反対派に対し「低能」「馬鹿」と投げかけてきた。ブーメランで今同じ言葉が彼らに投げかけられている。

松下玲子市長に取って代わって本多夏帆議員にその席についてもらいたいものだ。

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