戦争の有り様を変えた

国と国との戦争というのは、人類はベトナム戦争以降知らない。パレスチナやアフガンがあるではないかと言われるかもしれないが、あれは「紛争」である。

次世代の戦争はIT戦でドローンやロボットが主役だと言われるが、それは漫画の世界である。しかし、それに近いものになる予兆のようなものがウクライナで見られる。ブログ子はその代表的な礼を「ブチャの虐殺」の中でみた。

前回、「ブチャ惨劇に目をそらすな」であえて遺体の写真を紹介した。その中で 「自転車の近くで倒れていた赤いマニキュアを付けた女性」の遺体があった。ロシア軍が撤退したあと現地に入ったウクライナ軍が遺体一つ一つを検証してロシア軍の戦争犯罪として記録している。

目撃者の証言で、彼女は今月、53歳の誕生日を迎えるはずだったイリーナ・フィルキナさんだとわかった。彼女は今年からメイクアップの勉強を始めた。インスタグラムへの投稿やコンサートでどんなファッションをするかを楽しみにしていた。

そのネイルが確認の手がかりになったのはなんとも悲しいが、彼女は育て上げた2人の娘をポーランドに逃し、自分はブチャに残って住民やウクライナ軍のために料理をしていた。

さらに驚くことに、彼女が虐殺される瞬間はドローンでしっかり記録されていた。写真でイリーナさん(右側の赤丸)が自転車を漕いでゆっくり進んで来て角を曲がった途端、ロシア軍の戦車が火を吹く(左の赤丸)ところが捉えられている。戦車には直射砲と機銃が備えられているが、吹き出す噴煙の量が機銃にしては大量であるがこの動画からはわからない。

同時にロシア軍の戦車の兵士が「やったぜー!」と叫んでいるのが録音されている。戦車隊は普通は、目標物を捉えた隊長が射撃命令を出す。ロシア軍の命令系統が乱れていて、戦車の軍用無線が使えなくて兵士がケイタイでやり取りしていて、これがIT先進国のウクライナ軍に傍受されているという報告はかねてから伝えられているが、それを証明するようないい加減さである。

この発砲した戦車はT-72B3Mといい、1972(昭和47)年から旧ソ連陸軍に配備が開始されたT-72戦車の改良型。古いが105mmライフル砲よりも強力な125mm滑腔砲を装備し、鋼鉄にセラミックやガラス繊維などを挟み込んで強度を高めた複合装甲を車体前面に採用するなど、極めて優秀な戦車だが、今回ウクライナ軍にやられまくっている。開戦から1か月間で撃破されたロシア陸軍の戦車の総数が109両で、うち25%強にあたる28両がこのT-72B3Mである。

ロシア軍は侵攻から1ヶ月で4000台以上の軍用車両を失った。中でも戦車の損害は大きく、配備の15%ー20%を失ったと推定されている。西側によりウクライナ軍に供与された携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」の威力というのもあるが、軍事大国、ロシアにしてはただごとでない損害だ。なぜか、このことに就いては後日また書く機会があるだろう。

昨9日ロシア紙が報じるところでは、
アレクサンダー・ベスパロフ大佐の葬儀は金曜日にロシアの閉鎖都市オゼルスクで行われ、彼は「ウクライナでの特別軍事作戦中(これは、モスクワが「戦争」という言葉を避けるために使う用語)に殺されたという。ベスパロフは第59親衛戦車連隊の司令官だった。

ロシア軍の戦車隊の指揮官の死亡は9人目である。これまた異常な数字である。

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