日銀総裁に為替介入したか?と聞くのはタブー

円安で推移していた円レートが11日、一気に141円台となり、1時間の間に4円以上の円高になった。9月上旬以来の円高ドル安水準が反転した。10日に発表された10月のアメリカの消費者物価指数が、市場の予想を下回ったことから、FRBによる金融引き締めが鈍化するという見方が広がり円が買われたという。一気の円高に日銀の為替介入があったのではないかという見方が広がっている。

ことし1月ごろは115円台だったから、確かにひどい円安ではある。ブログ子は海外に行く予定もなく、ブランド品はもちろん好みの輸入品もないから、為替がどう動こうが一向に関心がないが少し思い出すことがある。

新人記者の時、仮配属で大阪本社の経済部に3か月ほどいた。シンガポールゴムの相場記事と住友化学の長谷川周重社長のインタビュー記事を書いた。タイヤメーカーが関心を持つゴムの価格は大阪の取引所で決まることを知ったのと長谷川社長の娘ださんだったかの趣味の馬術の話で盛り上がり知遇を得たこと以外覚えていない。以後はほとんど社会部で、経済とはほとんど無縁だった。しかし夕刊フジ報道部のとき命じられてカバーで日銀担当になった。

「日銀クラブ」ともいうが正式には「金融記者クラブ」という。日本銀行内にあり新聞・通信社やテレビ局の記者が常駐していて日銀の金融政策のほか、銀行や生損保など金融機関の取材拠点で、みな背広をきちんと着こなしてほぼ全員が「銀行員」然といった顔をしている。

森永貞一郎総裁の会見があり、当時為替介入の是非が話題になっていたのでブログ子は「いつ、いくらで介入したんですか」と聞いた。総裁はびっくりしたような顔で話をはぐらかしたが、他社の記者から「総裁に介入の質問をしたのは君が初めてだ」とバカにしたような声をかけられた。

確かにその後の報道を見ても記者の誰一人として介入の有無を聞く者はいない。暗黙の了解というのだろう、タブーの質問とされている。今回もせいぜい財務省の神田真人財務官が11日、海外市場で急速に円高に振れた為替について、「緊張感を持って注視し、必要な場合は適切な対応を取る」と述べただけ。

専門家によると、為替介入があったと見るべき痕跡が見られるという。それも下記のグラフからみて3回とみられる。

ほんのしばらくの金融記者生活だったが、ついでに知ったことが2つほどある。

一つは日銀では新聞記者は「車夫馬丁」の扱いであること。「金融記者クラブ」は日銀内にあることになっているが、実は中ではない。日銀正面玄関前に頑丈な石造りの立派な「小屋」があってその中に警備の警察官と同じく記者クラブがある。テレビで警官や衛視の敬礼を受けて総裁や日銀政策委員会メンバーがクルマから下りて来る姿が写るが、あれはその小屋の前に指定されているカメラマン席で、日銀本館内に入るには別の認証カードを提示しなければならない。

もう一つは外国為替取引というのは兜町のような大きな取引所で行われていると一般の人は思うだろうが、さにあらず。当時ブログ子が出かけたのは日銀の近くにある上田短資(現在は上田八木短資)というところだが、さほど広くもない部屋の大きなテーブルに数人が座り、クリップで止めた伝票を買い入れた先の人に滑らせるように投げあっているだけである。

今は電子化されているだろうが、やってることは当時と同じである。外為の取引は金融機関同士のマーケット(銀行間取引市場)で行われるがこれを扱うところが短資会社で日本には3つしかない(セントラル短資、上田八木短資、東京短資)。銀行間取引市場と日銀の間を取り持っているのが短資会社である。

ウクライナ戦争、北朝鮮のロケットマン、尖閣諸島への中国の日常的な威嚇・・・日本はいま国防力の増強を迫られている。GDP比「2%」など一刻もはやく実現せねばならないのに、世界情勢に無知な野党は足を引っ張るばかりだ。その一つが「直ちに増税する環境になく、当面国債を活用する」という自民党の「保守団結の会」(代表世話人・高鳥修一衆院議員ら)の提言に、「国の借金がふえるばかり」という野党の反対論である。

これに対し、乏しいブログ子の金融記者クラブ体験ではあるが、「国の借金は税金で返さなければならない」論が間違いであると反論できる。

政府の債務は「返さなければならない借金」ではなく、単なる貨幣発行にすぎないからだ。日本銀行券(紙幣)にしろ、日銀当座預金、国債にしろ、会計上は「負債」として仕分けされ、バランスシートの貸方に負債計上されるだけで返済義務はないからである。日本政府は国債を税金で返済したりなどしていない。単に、借り換えを続けているだけだ。日本政府の長期債務は1970年度から22年度までに171倍に膨らんでいるが、破綻などしない理由はこれである。「国の借金」と「家庭の借金」は違うことぐらい、野党も知ったほうがいい。

今回のように日銀が円買い介入すると原資となる外貨準備が必要だ。現在日本は1兆1945億㌦も持っている。円にして175兆円。10月はじめに日銀は為替介入したときは9・1兆円だった。十分すぎる外貨準備があるのだ。

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