アメリカ連邦議会で皆さんにお話しできることは大変光栄です。
あらゆる見通しや悲観的なシナリオに反して、ウクライナは陥落しませんでした。ウクライナは健在です。私たちには初めての勝利を分かちあう十分な理由があります。私たちはこの戦いで世界の心をつかみロシアを打ち負かしました。私たちに恐れはありません。また世界の誰も恐れを抱く必要はありません。
ウクライナは勝利を手にしました。このことはわれわれに勇気を与え、世界を奮い立たせます。アメリカも勝利を手にしました。それは、自由と国際法を守るため、国際社会が結束することにつながりました。ヨーロッパの国々も勝利を手にしました。それにより、ヨーロッパはより強くなり、かつてない自立を手にしました。
ロシアの圧政は、私たちに対する支配力を失いました。ロシアはもう二度と私たちの心に影響を及ぼすことはありません。ただ私たちは、「グローバル・サウス」の国々も同様に勝利を得られるように、必要なことを何でもしなければなりません。
✱グローバルサウス 「途上国」と同様の意味で用いられる。国際連合は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの新興国など、77の国と中国をグローバルサウスに分類している。
もう1つ、非常に重要なことがあります。ロシア人が自由になるチャンスを手にするのは、彼らが心の中でクレムリンを打倒したときだけです。しかし戦いは続いています。私たちは戦場でクレムリンを倒さなければなりません。
この戦いは、領土のためだけではありません。ウクライナ人の生命や自由、安全のためだけでも、またロシアが征服を企てているほかの国々を守るためだけでもありません。私たちの子どもや孫、そしてその子孫が、これからどんな世界に生きていくかを決める戦いなのです。ウクライナとアメリカ、すべての人々にとって、民主主義が達成されるかどうかを、決める戦いなのです。
この戦いは止めたり先送りにしたりすることはできません。海やほかの何かが守ってくれることを期待して、この戦いを無視することもできません。アメリカから中国まで、ヨーロッパからラテンアメリカまで、アフリカからオーストラリアまで、世界はあまりにも互いに結びつき、関係し合っています。
そのため、戦いが起きている今、ただ傍観して安心することなどできないのです。ウクライナとアメリカは、この戦いにおいて「同盟国」です。来年は転機が訪れます。私たちに共通するのは自身の価値観を守ることと人々の自由です。その未来を、ウクライナの勇気とアメリカの決意が保証する転機となるでしょう。
皆さん、私はきのう、ワシントンへ出発する前に、バフムトの前線にいました。ウクライナ東部のドンバス地域にある拠点です。ロシア軍とその傭兵部隊は、ことし5月以降、バフムトへの攻撃をやめたことはありません。昼も、夜もです。それでも、バフムトは耐えています。去年、バフムトには7万人が住んでいましたが、いまはわずかな住民しか残っていません。土地のいたるところに血がしみこみ、絶え間なく銃声が響いています。
厳しい戦闘の中、ドンバス地域の塹壕は、1日の間に何回も、持ち主が(ウクライナとロシアとの間で)かわっています。ロシアは、持てる手段のすべてを使って、バフムトや私たちの美しい町を攻撃してきます。砲撃においても、弾薬においても占領者はかなり有利です。彼らは、私たちより圧倒的に多いミサイルと、航空機を保有しています。しかし、ウクライナの防衛部隊は耐えています。それを私は誇りに思っています。
ロシアの戦術はずさんです。彼らは目に入るものすべてを焼き払い、破壊しています。ロシアは、前線に凶悪犯や受刑者を送りました。彼らは私たちにあらゆる手段で攻撃をしてきました。
1944年のクリスマスに、勇敢なアメリカ軍がヒトラーを退け、持ちこたえた時(「バルジの戦い」)のように、ことしのクリスマスに、勇敢なウクライナ軍もまた、プーチンの軍隊に対して同様に戦っています。ウクライナは決して降伏することはありません。
✱バルジの戦い 第二次世界大戦における西部戦線において1944年12月から1945年1月の間、アルデンヌ高地で行われたナチス・ドイツのドイツ国防軍とアメリカ軍を主体とする連合軍との戦闘の名称。
今私がいるここが前線です。自由な人々の命に対して圧政が残酷さを緩めることはありません。この戦いを続けるだけでなく、勝利に向けた転換点に至るために、皆さんの支援が不可欠なのです。
私たちには武器があります、提供してくれたみなさんに感謝しています。でも正直なところ、十分ではありません。ロシア軍を退けるだけでなく、完全に撤退させるための拠点としてバフムトを守るためには、より多くの大砲と砲弾が必要です。それがあれば「サラトガの戦い」のように、バフムトをめぐる戦いは、独立と自由のための戦争の流れを変えることになるでしょう。
アメリカのパトリオット(ミサイル)が私たちの都市に対するロシアのテロを阻止できれば、ウクライナの愛国者(パトリオット)が自由を守るために全力を発揮することができます。
ロシアの砲撃が私たちの都市に届かない場所では、ロシアはミサイル攻撃で破壊を試みています。それ以上に、ロシアはこの大量殺戮の仲間を見つけ出しました。それはイランです。ロシアに送られたイランの無人機は何百機もあり、重要なインフラ施設に対する脅威となりました。テロリストはこうして仲間と出会うのです。
✱「サラトガの戦い」 アメリカ独立戦争中の1777年10月、ニューヨーク州北部、ハドソン川上流のサラトガ(Saratoga)で、アメリカ植民地軍がイギリス軍を破った戦い。フランスが公然とアメリカを支援する契機となった。
彼らをいま止めなければ、アメリカのほかの同盟国を攻撃してくるのは時間の問題です。私たちは止めなければなりません。同盟関係にある私たちの間にタブーがあってはなりません。ウクライナは、アメリカの兵士に私たちの土地で代わりに戦うように頼んだことなどありません。我軍の兵士は、アメリカの戦車や航空機を自分たちで完璧に扱うことができます。
資金援助も非常に重要です。すでに私たちに提供された一連の資金援助と、今後決定されるであろうものについても、感謝します。皆さんの支援は慈善行為などではありません。世界の安全保障と民主主義への投資なのです。
皆さんは私たちの勝利を早めることができます。それこそが、潜在的な侵略者に対して、誰も国境を越えて他国を侵略できないこと、残虐行為により人々の意思に反した支配はできないことを証明するのです。テロ国家であるロシアから、平和への一歩を待つのは甘いと言えます。ロシアの人たちはいまだにクレムリンに毒されています。
国際的な法秩序の回復は、私たちの共通課題です。私たちは平和を必要としています。ウクライナはすでに和平に向けた提案をしていて、バイデン大統領とも、私たちの共同の安全保障のため、今後数十年は保証されるべき10項目、今後開催する国際会議についても話し合ったところです。
今日、これらについてバイデン大統領が支持してくれたことをうれしく思います。皆さん一人一人が、アメリカのリーダーシップが強固であることを確実にするための手助けをしてくれました。
ロシアにその侵略がいかに真に破滅的かを分からせるため、制裁を強化することができます。このいわれのない犯罪的な戦争を始めたすべての人に正義の鉄槌を下ろせるかどうかは、まさに皆さんにかかっています。テロ国家に、テロと侵略の責任をとらせ、この戦争で生じたすべての損害を補償させましょう。アメリカがここにあると、世界に知らしめるのです。
アメリカの皆さん、あと2日で、私たちはクリスマスを祝います。おそらく、キャンドルの明かりで。その方がロマンチックだからというわけではありません。電気が使えないからです。何百万もの人々が暖房も水道も使えないのです。これらはすべて、ロシアのミサイルと無人機によるエネルギーインフラへの攻撃の結果です。
しかし、私たちは不満は言いません。誰の生活がより楽かを判断したり、比べたりもしません。皆さんの幸福は、皆さんの国の安全保障のおかげであり、独立のための闘争と、多くの勝利の結果なのです。私たちウクライナ人もまた、尊厳と成功をもって、独立と自由のための戦争をやり遂げたいと思っています。
私たちはクリスマスを祝います。たとえ電気がなくても、私たちの信仰の光は、消えることはないでしょう。もしロシアからミサイル攻撃を受けたなら、私たちは自分たちを守るために最善を尽くします。もしイランの無人機で攻撃されてクリスマスイブに国民がシェルターに避難することになっても、ウクライナ人は祝祭日の食卓を囲み、お互いを励まし合うでしょう。みんなの願いが何かを知る必要はありません。何百万ものウクライナ人の願いは同じ「勝利」だということは分かっているのです。
私たちはすでに、皆さんと一緒に、強い国民と軍隊、制度を備えた、強いウクライナを築きました。私たちは皆さんとともに、ウクライナとヨーロッパ全体、そして世界のために、強力な安全保障を構築しました。私たちは共に、自由を否定する者に対処できます。プーチンに。
これは、ヨーロッパと世界の民主主義を守る基礎となるでしょう。いま、この特別なクリスマスに当たって、皆さんに感謝申し上げます。家庭のあたたかさを大切にし、他の人々のために、同じぬくもりを願ってくれるアメリカのすべての家族に感謝します。バイデン大統領をはじめ、上下両院の両党の皆さんの貴重な支援に感謝します。ことしウクライナを支援し、ウクライナ人を受け入れ、国旗を振り、私たちを助けるために行動してくれたアメリカの皆さんにも感謝申し上げます。今、戦争の最前線にいるすべての人、勝利を待っているすべてのウクライナ人から、皆さんに感謝を申し上げます。
きょう、この場に立って、私はルーズベルト元大統領の言葉を思い出しています。この言葉はいま、この瞬間にとてもふさわしいと思います。「アメリカ国民は、その正義の力によって、完全な勝利を勝ち取るだろう」。
ウクライナの人々も、絶対に勝ちます。すべてが私たち、ウクライナの軍隊にかかっていることは分かっています。、非常に多くのことが世界にもかかっています。世界の多くのことが、皆さんにもかかっているのです。
きのう、バフムトに行ったとき、ウクライナの英雄たちが私に旗を手渡しました。命をかけてウクライナとヨーロッパ、そして世界を守っている人たちの戦いの旗です。この旗を皆さんに渡すように頼まれました。何百万もの人々を救う決断ができる、アメリカ議会の上下両院の皆さんにです。この旗が、皆さんとともにありますように。
この旗は、この戦争における私たちの勝利のシンボルです。私たちは立ち上がり、戦い、そして勝利します。なぜなら、ウクライナ、アメリカ、そして自由な世界全体が団結しているからです。
最後にもうひとつだけ言わせてください。皆さん本当にありがとうございます。私たちの勇敢な軍隊と市民を神が守ってくれますように。そしてアメリカに永遠に神の祝福がありますように。メリー・クリスマス、そして幸せで勝利に満ちた新年を。ウクライナに栄光あれ。
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戦争は愛国者を生む、とはいえ、ゼレンスキー演説は世界の人々の胸に響くものだった。翻って、日本を顧みるとき、このような演説ができるリーダーがいるだろうか。残念ながらゼロである。
岸田政権で年内に5人目の閣僚交代となりそうである。前回書いたように防衛費2%を本来なら有事のときとられるべき国債と増税で賄おうという与党といい、「防衛政策の転換は東アジアにおける緊張を高め、軍拡競争を招く」と批判する立憲民主党とその一派といい、暗澹たる有様である。
ソ連時代の泣く子も黙る秘密機関KGB(カーゲーベー)の後継機関、ロシアのFSB内部告発者からのメールによると、2021年8月にロシアは、「日本を相手にした局地的な軍事紛争に向けて、かなり真剣に準備をしていた」と書かれている。このFSB内部告発者によれば、ロシアが攻撃相手をウクライナに変えたのは、それから何カ月も後のことだった。
ウクライナ戦争でなく第二次日露戦争であってもおかしくなかった。それなのに日本のこの体たらく。ゼレンスキー演説に深く感銘を受けたブログ子は永田町の住人どもに聞かせるべく、全文を再録した次第。