あまり報道されなかったが、社民党の福島瑞穂党首が1月18日に中国を訪問した。中国人民抗日戦争記念館を見学し、「社民党は憲法改正に反対であり、憲法の精神を貫徹するために全力で努力する」と述べ、中国共産党序列4位の王滬寧政治局常務委員とも会談し、「福島第一原発の処理水放出に反対することで一致」したそうだ。
王滬寧は習近平政権内で「統一戦線工作」を担当する人物である。統一戦線工作とは、「主要敵を内部分裂させ、友好勢力を増やす策略」、つまりプロパガンダ工作での責任者だ。まるまる中国の術中に嵌まったわけだ。
帰国してからも自民党の麻生太郎副総裁の発言を巡り、直接的な批判を避けた上川氏の対応に「言った男が100%悪い。自民党の他の女性議員が麻生氏に抗議するなどして上川氏を支えるべきだ」と述べるなど、口角泡を飛ばすいつものような言説を繰り返しているが、いまや政党支持率2%、「所属議員、福島瑞穂たった一人」である。
何をほざいても次の選挙で消えるであろう社民党など国民は聞く耳など持たないだろうから、いいようなものの「バカも百回言えば本当(真実)になる」のが政治の世界である。注意せねばならない。
その一つが秋田県産のコメの新品種「あきたこまちR」へのいわれなき風評被害である。従来の「あきたこまち」に比べ、土壌に含まれる重金属のカドミウムをほとんど吸収しない特徴を持つのだが、育種の過程で放射線を使っていることを理由に、「危険だ」とする誤った認識を福島瑞穂が先頭になって広めているのだ。
昨年8月から始まった東京電力・福島第一原発の処理水の海への放出をめぐり、中国は政府やメディアを挙げて「核汚染水」と言い募り、日本からの魚介類の輸入を止めたままだ。国際機関が何度もトリチウム検査して問題がないことを証明しているが知らんぷりで輸入禁止措置を続けている。これと同じ「バカ話」である。
「あきたこまちR」がなぜ生まれたかを知らない人もいるだろうから説明する。人体に有害なカドミウムは自然界に広く存在する。日本の四大公害病の一つ富山県神通川流域「イタイイタイ病」の原因物質である。稲はカドミウムを吸収しやすく、日本人が食品から摂取するカドミウムの4~5割がコメに由来するとされる。国内におけるコメに含まれるカドミウムの基準値は1キログラム当たり0.4ミリグラム(0.4ppm)以下と法律で定められている。これを超えると流通できない
秋田県は鉱山が多かったこともあって、カドミウムが多い。水田面積のおよそ2割に当たる1万8000ヘクタールが、カドミウムが農産物に含まれないよう対策を講じる必要がある「農用地土壌汚染対策地域」に指定されている。県は吸収を抑える栽培方法を生産者に指導したり、基準値を超えたコメを全量買い入れて、流通しないようにしてきた。
稲がカドミウムを吸収しないようにする対策として、別の土地から土を持ってくる「客土」や、カドミウムを吸収させる植物を植える対策を取ってきたが、いずれも費用がかさんだり、作付けの時期が限定されるなどのデメリットが多かった。
秋田県は「コシヒカリ環1号」に「あきたこまち」をかけ合わせる交配方法で、理論上は99.6%「あきたこまち」の遺伝子を持ち、品種の特徴はほぼそのままに、カドミウムをほとんど吸収しないという新たな特長を持たせた「あきたこまちR」を生み出した。2025年から全面的に切り替わる。
ただこの過程で、「コシヒカリ」に放射線の一種である重イオンビームを照射する。既存の品種に放射線を照射して、突然変異を人為的に誘う手法だ。「放射線育種」というこの方法は、50年以上前からある一般的な育種の方法で、梨の「ゴールド二十世紀」などもこの技術で生み出された。
福島瑞穂は2023年11月9日、SNSのX(旧Twitter)に「消費者の権利を守りたい!」というメッセージとともに、「あきたこまちR」への作付け転換を問題視する文章を投稿した。その中で放射能への危惧があるとして、①安全性の立証を求める、②カドミウムによる土壌の汚染をまずなくすべき、③農家が「あきたこまちR」と「あきたこまち」を選べるようにすべき、と要求している。
①は処理水を汚染水と言い張る中国同様の無理筋というもので、すでに証明されているのに屋上屋を求める「悪魔の証明」そのものである。
②について「水俣病のように、長い間因果関係が立証されていないとして無視され続けたため、甚大な被害が発生したことを考えれば、公害も食べ物の安全も、予防原則に立つべきだと考えます」と言い張る。これまで長年行われてきた育種方法で生まれた品種と、重金属のメチル水銀による中毒性疾患である水俣病を同じようにとらえる科学音痴そのものである。
③についても「『あきたこまちR』は特許料、品種許諾料を支払わない限り、栽培できないお米になります。負担は高く、収穫量が少ないのですから、農家にとっては不利な品種となります」というのだが、ウソである。秋田県は「従来と何ら変わりはありません。収量についても従来の「あきたこまち」と同等だと公表している。
瑞穂(みずほ)とは、みずみずしい稲穂のことである。稲が多く取れることから瑞穂の実る国ということで、「瑞穂国」(みずほのくに)、「豊葦原千五百秋水穂国」(とよあしはらの ちいおあきのみずほのくに)が日本国の美称である。あやかって、みずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行、さては日本の南極観測基地「みずほ基地」まで使われている美しい表現だ。
福島瑞穂は宮崎県出身である。きっと両親は、高千穂の伝説の地にゆかりの麗しい日本を思って名付けたのだろうが、その娘は、「瑞穂の国」を貶めるのに懸命である。泉下で泣いているに違いない。